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編集部2023年2月24日

【べイトリールのブレーキとは】調節&投げ方の基本と機種別仕組み解説【ダイワ/シマノ/アブ・ガルシア】

タックル Basser バス釣り

ベイトリールのブレーキ調節の基本、サミングのやり方、そして主要リールメーカーの現行機種を中心にブレーキシステムの仕組みと原理を解説していきます。ご自身にあったブレーキ設定を見つけるのにぜひ参考にしてください。

ブレーキ調節&サミングのやり方、各機種ブレーキの仕組みと原理を1万文字超で解説【遠心・マグネット・デジタル】

まとめ◎新井健(つり人社ウェブ担当)

 この記事では、ベイトリールのブレーキ調節の基本、サミングのやり方、そしてブレーキシステムの仕組みと原理を主要リールメーカーの現行機種を中心に解説していきます。ご自身にあったブレーキ設定を見つけるのにぜひ参考にしてください。

■登場リール(メーカー/ブレーキ名称)

遠心式:Ambassadeur2500C(ABU)、09アルデバランMg(シマノ/SVS)、フルレンジ(テイルウォーク)、レボ5 STX(アブ・ガルシア/IVCB)、23メタニウム(シマノ/SVS∞)

マグネット式:ZENON LTX(アブ・ガルシア/マグトラックスⅢ)、グラビアスK.IMAEオーロラ(G-nius project/無振動マグネットブレーキシステム)、23カルカッタコンクエストBFS(シマノ/FTB)、スティーズAⅡ TW(ダイワ/MAG-Zブースト)、21ジリオンSV TW(ダイワ/SVブースト)

デジタル制御式:03カルカッタコンクエスト200DC(シマノ/DC)、23アンタレスDC MD(シマノ/4×8DC)、IM Zリミットブレイカー(ダイワ/インテリジェントマグフォース)


ベイトリールのブレーキとは?

 ベイトリールのブレーキとは、ルアーを投げる(キャスト)ときにリールの中でラインが絡まってしまう「バックラッシュ」というトラブルを防ぐために、スプールが回りすぎないようにする回転制御機構のことです。

 ベイトリールのキャストでは、スプールが逆転することでラインを送り出していきます。飛んでいくルアーが空気抵抗で失速して、ラインが引き出される速度をスプールの回転が上回ってしまうと、鳥の巣状のバックラッシュが起きてしまいます。

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 これを防ぐために、ルアーフィッシング用のベイトリールには、スプールへ適切にブレーキを掛ける機能があります。ルアーの飛びを邪魔せずに(飛距離を落とさずに)、スプール回転の過剰な部分だけをいかに抑えるか。

 この部分にリールメーカー各社は心血を注いでおり、遠心式、マグネット式、さらにはデジタル制御式など工夫を凝らしたブレーキ機構が開発されてきました。

 ベイトリールのブレーキ機構は釣り具の歴史で積み重ねられた叡智の結晶と言っても過言ではなく、その仕組みから開発者の苦悩と努力と閃きを垣間見ることができます。

 本稿では、実機の観察や公式情報、そして時おり特許庁のデータベースで公開されている文献も参照しつつ、機種ごとのブレーキシステムの仕組みと原理について解説を試みます。

 が、理屈っぽい話の前に、まずは実践で役立つブレーキ調節の基本から解説しますので、初めてベイトリールを使うという人も参考にしてみてください。

◆関連記事:ベイトフィネスリールおすすめ人気11選を比較紹介 >>

ベイトリールのブレーキ調節の基本

 ベイトリールのブレーキ調節の基本は以下のとおり。

①メカニカルブレーキを調整してスプールのガタつきをなくす

②パーミングカップ側(ハンドルと反対側)のブレーキ調節ダイヤルを強めにする

③試し投げをしながら徐々にダイヤルを弱くしていき、キャスト中にラインが浮きそうになるところまで弱める(着水と同時に親指でスプールの回転を止めればOKの状態)

④親指でスプールの回転をうまく調節(サミング)できるなら、さらにブレーキを弱めて飛距離を伸ばせる

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 メカニカルブレーキは、ベイトリールのハンドル側についているネジ式のキャップのこと。スプールシャフトを物理的に締め付けて回転を抑える原始的な機構です。キャスト中、常に一定の抵抗をかけ続けるので、締め付けすぎると顕著に飛距離が落ちるほか、ハンドルの巻き感も重くなります。

 そのためブレーキが発達した近年では、スプールがガタつかない程度の締め具合(ゼロポジション)にしておき、バックラッシュ防止は調節ダイヤルに任せるのがセオリーになっています。

 ゼロポジションの出し方は、スプールを指で左右に動かしながら、ガタつきがなくなるところまで締め込めばOKです。すでにガタつきがないなら締めすぎかもしれないので、徐々にゆるめていき、ガタつく直前の位置にすればよいでしょう。好みに応じて少しだけ締めて使っても問題ありません。

 ただし、ゆるめすぎはNG。キャスト中にスプールが左右に激しく動いてしまい、ブレーキがうまく働かない可能性があるからです。

 メカニカルブレーキをゼロポジションにセットしたら、あとはパーミングカップ側(ハンドルと反対側)のブレーキ調節ダイヤルを強めにして、試し投げをしながら徐々に弱め、糸が浮き上がらずにいちばん遠くまで飛ばせる設定を探します。

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 最適なブレーキ設定は、風向き、ルアーの重さ、ルアーの空気抵抗の大小などで変わってきますので、常にポテンシャルを最大限に発揮させたいなら、ルアー交換ごとにダイヤルを調整するのがよいでしょう。

 あくまでこの解説は基本ですので、自分の投げ方やルアーにあわせて、さらに飛距離を伸ばせる設定やトラブルの少ない設定を機種ごとに見つけることもできます。ブレーキの仕組みを理解することは、機種ごとの特性を生かした設定方法を探すうえでも役立ちます。

サミングのやり方。マニュアル操作で飛距離を伸ばそう!

 サミングとは親指(thumb)でスプール回転にブレーキを掛けてバックラッシュを防ぐテクニックです。サミングをマスターすれば、リールのブレーキを弱めてマニュアル操作でさらに飛距離を伸ばせるかもしれません。

 サミングのやり方は、スプールのエッジ部分(端)を触りながら力を加減する方法がおすすめ。糸巻き部分を触ってもいいのですが、糸が減っていくので触り方の加減が難しい場合があります。

thumbing

 ベイトリールのキャストは、リールのクラッチを切り、親指でスプールを押さえたままロッドを振り、タイミングよく指を離してルアーを投げます。

 バックラッシュが起きやすいタイミングは、スプールの回転速度が急激に速くなる指を離した直後(A)と、ルアーが失速し始めてから着水するまで(B)の2か所です。

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 適切にサミングできれば、理屈のうえではリールのブレーキ設定がゼロでもキャスト可能です。ただし、親指を離した直後のAのタイミングでサミングするのは至難の業ですから、ここはリールのブレーキに任せましょう。

 リールのブレーキは、遠心・マグネット・デジタルを問わず、スプール回転速度が最も上がるAのタイミングでいちばんよく効くように設計されています。そこから回転速度が落ちてくるにつれて、ブレーキの効きも弱まってきますが、その弱まり方にブレーキシステムごとの個性が現われます。

 なので、Aのバックラッシュを防げる程度にブレーキを設定しておき、Bでバックラッシュが起きそうになったらサミングを駆使するのが良い方法です。

 では、ここから、代表的なブレーキシステムの仕組みを見ていきたいと思います。

ベイトリールのブレーキの原理:遠心式/シマノ、アブ・ガルシアなど

 まずは、シマノやアブ・ガルシアのベイトリールに見られる遠心式を紹介します。スプールに取り付けられたブレーキブロックが遠心力で外側に広がり、これがリールの内面と擦れて摩擦抵抗で制動をかける仕組みです。

 リールとルアーの発展過程に着目してルアーフィッシングの歴史を解説した錦織則政・著『The History of Lure Fishing ルアー&リール進化の軌跡』によると、最初に遠心式ブレーキを備えたベイトリールが登場したのは1930年代だったということです。

 以来、作動するブレーキブロックの個数を変えられるものや、ブロックとリール内面の当たり方を外部ダイヤルで変えられるものなど、ブレーキ力を調節する仕組みがさまざまに考案されています。

 遠心式ブレーキのブレーキ力は、スプールの回転速度の2乗に比例します(遠心力=ブロックの重さ×ブロックの回転半径×回転速度^2)。つまり、親指を離した直後のAのタイミングで充分なブレーキをかけたあとは、急速にブレーキ力が弱まっていく特性をもっています。これが「遠心式ブレーキは最後の伸びがある」などと形容される理由です。

 釣り人の技術次第で飛距離を伸ばしやすい反面、キャスト中に失速しやすいルアー(バズベイトなど)や向かい風の中でキャストする状況では、しっかりとサミングをしてやる必要があります。

※以下、筆者が使用したことのあるブレーキシステムには★マークを付記

●ABU Ambassadeur 2500Cの遠心式ブレーキ ★

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 最も単純な遠心式ブレーキです。2個のブレーキブロックがスプールの回転にあわせて円周方向に飛び出し、リール内面と擦れます。任意の調節機構はないものの、このリールはキャスト時にもスプールとレベルワインダーが連動するので、その抵抗も適度にブレーキとして働き、サミングさえきちんとできれば驚くほどトラブルは少ないです。

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1975年に登場したAmbassadeur 2500C

◆関連記事:アンバサダー2500Cを主役に抜擢した渓流ベイトフィネスの仕掛人 >>

 

●シマノ SVS(シマノ・バリアブル・ブレーキ・システム) ★

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09アルデバランMgのSVS

 2010年ごろまでのシマノ製ベイトリールにおける主要なブレーキ機構。6個のブレーキブロックをON/OFFに切り替えて、リール内面と擦れるブロックの個数を調節できます。これを最少のパーツ構成で実現していたのが特徴です。また、重さが異なるブレーキブロックも付属していて、交換することで調節幅が広がりました。

 ただ、調節のためにはボディーを開閉する必要があったので、外部ダイヤルで調節可能な新たなブレーキシステム「SVSインフィニティ」へと発展していくことになります。

 

●テイルウォーク 「フルレンジ」の遠心式ブレーキ

 こちらもブレーキブロックをON/OFFで切り替えるシステム。あらかじめブレーキの強さが異なる3種類のブロック(赤=強、青=中間、黄=弱)が備えられています。

 スプールの立ち上がりの面で有利なシャフトレススプール(ハンドル側のスプールシャフトも短いタイプ)との組み合わせ。

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フルレンジの遠心式ブレーキ
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立ち上がりの良いシャフトレススプール
\ おすすめ /

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フルレンジ

回転の立ち上がりが早いシャフトレススプールに伸びやかな遠心式ブレーキを備えた完成度の高い設計でありながら、実勢価格1万円台で購入できるコストパフォーマンスの高さが魅力。ギア比は5.4:1、6.6:1、8.1:1があり、ハイギアだけでなく選択肢が少ないローギアもラインナップされているのがうれしい。

メーカーウェブサイト

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●アブ・ガルシア IVCB(Infinitely Variable Centrifugal Brake) ★

 レボシリーズなど、アブ・ガルシアのベイトリールに搭載されている、外部ダイヤルで調節可能な遠心式ブレーキ。

 スプールに取り付けられたL字型のブレーキブロックが遠心力によって外側に広がり、パーミングカップ側のブレーキプレートに擦れて制動します。ブレーキブロックが4つのモデル(IVCB-4)と6つのモデル(IVCB-6)があり、またブレーキブロックごとにON/OFFが可能なモデルもあります。

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レボ5 STXのIVCB。L字型のブレーキブロックが6つ
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ブレーキ力MAX時。シルバーのリング面にブレーキブロックが擦れる
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ブレーキ力MINのとき。シルバーのリング面がスプール側にせり出している

 外部ダイヤルでブレーキプレートをスプールに近づけたり遠ざけたりしてブレーキブロックの開き方を変化させています。ブレーキブロックの回転半径が大きいほうが遠心力は強くなること、L字アームが回転軸に対して平行に近いほうがアームを開かせようとする力が強くなることを利用した仕組みです。

 外部ダイヤルをMAXのポジションにするとブレーキプレートがスプールから最も遠ざかり、ブロックの開き方(回転半径)とブレーキ力は最大になります。MINのポジションではブレーキプレートとスプールの位置関係は最も近くなります。

 ややピーキーさがあるものの微調整が利き、遠心式ならではの遠投に向いたブレーキシステムです。

\ IVCB搭載おすすめモデル /

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REVO5 STX (レボ5 STX)

ハンドル側は大口径メインギアを備え巻き上げパワーに優れたリールですが、握る側をコンパクトにしたパーミングしやすいボディーが特徴。Φ35mmのスプールに16Lb115mの糸巻き量があり、重量級ルアーを扱いやすいモデルです。

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●シマノ SVS∞(インフィニティ) ★

 遠心式ブレーキのベイトリールを開発し続けてきたシマノの、現行のリールの多くに搭載されている外部調節式ブレーキシステムがSVSインフィニティです。調節幅が広く、あらゆるルアーや状況に素早く対応しやすいのが特長で、伸びのある遠心式でありながら、設定次第ではキャスト後半までしっかりサポートしてくれる印象です。

 スプールが回転すると、取り付けられたブレーキブロックが遠心力で花が咲くように外側に開きます。その際、ブレーキブロックの内側の突起がパーミングカップ側のブレーキパイプ(テーパーの付いたリング状のパーツ)に擦れてブレーキ力を発揮します。

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SVSインフィニティ
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ブレーキ力MAXのとき
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ブレーキ力MINのとき

 ブレーキブロックはひとつずつON/OFF切り替え可能ですが、メインは外部ダイヤルでの調節でOK。

 ダイヤルでブレーキ力を強めていくと、ブレーキパイプはスプール側に押し込まれてくる格好に。このときブレーキブロックは、パイプの直径が太い部分により閉じた状態(パイプに対して寝ている状態)で接することになります。

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 遠心力が同じなら、ブロックが立ち気味のときよりも寝ているときのほうが、ブロックを引き起こそうとする力Aは大きくなります。それに比例してパイプのテーパー面を押そうとする力Bも大きくなります。また、力Bのうちブレーキ力となるのはテーパー面に対して直角に作用する成分(力C)ですが、ブロックが寝ている状態のほうがテーパー面を押す力がより直角に近くなり、遠心力をブレーキ力に変換する効率も上がってくるというわけです(参考:特開2013ー000086)。

 この方式が優れているのは、ブレーキパイプを前後させるだけ(接触面の直径をわずかに大小させるだけ)でブレーキ力を大きく変化させられることです。

\ SVS∞搭載おすすめモデル /

05metanium

メタニウム

軽量なマグネシウム合金をコアソリッドボディに設計することで、軽さと剛性の高さを同時に実現し、多くのバスプロから絶賛されたリールです。2023年には糸巻き量を14Lb100mとしてヘビーなルアーへの対応力をアップしたモデルが追加されました。

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ベイトリールのブレーキの原理:マグネット式/ダイワ、アブ・ガルシア、シマノ、グラビアスなど

 ダイワのベイトリールの大部分や、アブ・ガルシアの日本向けモデル、シマノのBFSモデル、G-nius projectのグラビアスなどに用いられているのがマグネット式ブレーキです。前出の『The History of Lure Fishing ルアー&リール進化の軌跡』によれば、1940年代にはマグネット式ブレーキを搭載した試作機が作られていたとのことです。

 マグネット式ブレーキは、磁石のそばでアルミニウムなどの金属板(リールではスプールに取り付けられた円形のパーツやスプール本体がこれにあたる)を動かすと、電磁誘導によって金属板のなかに渦(うず)電流という電流が生じる現象を利用したシステムです。

◆渦電流の解説はこちらの動画がわかりやすかったです

 渦電流はフレミングの左手の法則に従って磁石と金属板の位置関係を保とうとする方向の力を生み出します。これがマグネット式ブレーキのブレーキ力です。新幹線などにも使われている渦電流ディスクブレーキの一種で、磁石が鉄をくっつけるようにスプールを引き付けているわけではありません。

 また、スプールに生じる渦電流の強さは回転速度(磁石との位置関係の変化量)に比例するため、スプールに可動パーツがないシステム(アブ・ガルシアのマグトラックスⅢなど)であっても、ブレーキ力は回転速度に比例して強くなります。

 この場合、スプールリリース直後に最大のブレーキ力を発揮した後、回転速度の低下にともなって徐々にブレーキ力が弱まっていきます。急激にブレーキ力が抜けていく遠心式ブレーキと比べて、最後までしっかりとブレーキをかけ続けてくれるオートマチックな使用感です。

 一方、ダイワのベイトリールに搭載されたSVブースト、MAG-Zブースト、エアブレーキシステムなどのスプールや、K.T.F.のKAHENスプールなどには、磁力を受けるパーツが可動する仕組みがあります。回転速度が速いときにはこのパーツが磁力をより強く受ける方向にせり出し、回転が遅くなるとバネの力で引っ込んでいく構造。フルキャスト時にはしっかりブレーキを効かせる一方、低速回転時に過剰なブレーキがかかるのを防ぎ飛距離を伸ばしています。

※以下、筆者が使用したことのあるブレーキシステムには★マークを付記

●アブ・ガルシア マグトラックスⅢ ★

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ZENONシリーズなどに搭載されているマグネットブレーキ(マグトラックスⅢ)
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ブレーキ力MAXのとき
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ブレーキ力MINのとき

 パーミングカップ側に円形に配置された磁石がスプール側のリングに作用してブレーキ力を生みます。磁石とスプールが近いほどブレーキ力は強く発揮されることから、外部ダイヤルで磁石配置面とスプールの距離を変化させてブレーキ力を調節することができます。シンプルな構造で信頼性が高い仕組みです。

 ピッチング等のショートディスタンスの釣りやスキッピングを多用する釣りで特に扱いやすいと感じます。

\ マグトラックスⅢおすすめモデル /

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ZENON LTX

ベイトフィネスリールとしては大きめのΦ30mmというスプールが魅力的なモデル。軽いルアーを使いたいけど太めのラインで障害物際を釣りたいというような、バス釣りのベイトフィネスシーンでとくに活躍してくれます。従来モデルよりも剛性感も大きく向上しています。

メーカーウェブサイト

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◆関連記事:ZENON LTX お嬢様風インプレ >>

 

●G-nius project グラビアス 無振動マグネットブレーキシステム(PAT.)

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G-nius projectグラビアスシリーズの「無振動マグネットブレーキシステム(PAT.)」
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ブレーキ力MAXのとき
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ブレーキ力MINのとき

 グラビアスのブレーキも、パーミングカップ側の磁石配置面を外部ダイヤルで前後させてブレーキ力を調節する仕組みです。最大の特徴は円形に並べられたマグネットが等間隔に配置されていること。これはスプールの全周にわたって均等にブレーキを作用させることで、高速回転時に発生し得る微振動を抑えるねらい(参考:実願2020ー005227)。

 ちなみにグラビアスを開発しているのは、G-nius project代表でJBトーナメントにも出場する青木哲さん。特許庁のデータベースでリール関連の文献を検索すると、出願者欄に大手メーカーの法人名が並ぶなか青木さんの名前がたびたび登場。本気で開発に取り組んでいる技術者であることがわかります。

\ グラビアスおすすめモデル /

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グラビアスK.IMAEオーロラ/MC Squared

無振動マグネットブレーキシステム(PAT.)を搭載、今江克隆さんのシグネチャーモデル。「世界最高のベアリング」を追求するMC Squared製のセラミックボールベアリングを採用しており、スプール回転の初動の軽さが大幅に向上している。

■出荷情報等はG-nius project公式サイトでチェック!!

●シマノ FTB(Finesse Tune Brake system) ★

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シマノのベイトフィネスリールに採用されているマグネットブレーキシステム「FTB」
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ブレーキ力MAXのとき
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ブレーキ力MINのとき

 シマノのベイトフィネスリール(BFSモデル)に搭載されているマグネット式ブレーキです。スプールの糸巻き面自体に磁力を作用させる構造で、磁力を受けるためのパーツがない分スプールを軽くすることに成功。回転の立ち上がりがよいので、軽量ルアーでも低弾道のキャストがしやすいです。

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カルカッタコンクエスト BFSのMGLスプールⅢ

 外部ダイヤルでマグネット部をスプール内側に出し入れしてブレーキ力を調整します。高速回転時にはマグネットが回転に引きずられるようにスプール内面に接近し、より強くブレーキを効かせられます。

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出典:シマノ・SLX BFS製品紹介ページ

 

\ FTB搭載おすすめモデル /

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カルカッタコンクエスト BFS

美しい円型ボディーのベイトフィネス専用機。低慣性マグナムライトスプールⅢとNEW FTBを搭載し、軽量ルアーがさらに扱いやすくなりました。1g程度の軽量ルアーのフリップキャストも可能。ギア比8.9:1のエキストラハイギアモデルもラインナップされているので、渓流など流れの中の釣りでもルアーを操作しやすいです。

メーカーウェブサイト

2023年04月 発売予定。

 

●ダイワ SVブースト★、MAG-Zブースト、エアブレーキシステムほか

 約40年にわたってマグネット式ブレーキを研究し続けてきたのがダイワです。現行モデルに搭載されているブレーキシステムはその集大成と言えます。

 これらダイワのマグネット式ブレーキは、リリース直後のバックラッシュを強いブレーキで適切に防ぎつつ、キャスト後半には過剰なブレーキがかからないようにして飛距離を伸ばし、なおかつキャスト終了時までトラブルフリーに制御してくれる非常に完成度の高いシステムです。

 また、フルキャストからピッチングまで同じブレーキ設定で最大のパフォーマンスを発揮してくれるのも特長。これらの相反する要素をアナログ機構だけで実現している仕組みを見ていきましょう。

 ダイワリールのマグネット式ブレーキの特徴は、パーミングカップ側にリング状の磁石が2重に配置されていること、インダクトローターと呼ばれるスプール側のパーツが回転速度に応じて磁石の間にせり出してくることです。

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スティーズA Ⅱ TWの「MAG-Zブースト」

 外部調節ダイヤルを回すと内側の磁石が少し回るのがわかります。外リングと内リングのN極とS極の向き合い方が変わり、インダクトローターに作用する磁力(磁束密度)を変化させてブレーキ力を調節する仕組みです(図)。この構造はパーミングカップ側に必要なスペースが少なくて済むため、手に収めやすいスリムなリールにデザインできる点も優れています。

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N・S極の数と位置関係などはイメージ。インダクトローターに渦電流が発生するのは磁束線(磁力の向きを線で表現したもの)が貫通している部分。外側と内側でN極とS極が反発しあうように磁石を回していくと、ブレーキ力を生む範囲が小さくなっていく↓

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 一方、スプール側のインダクトローターは、遠心力がかかったとき(マグフォース系)や、一定以上のブレーキ力がかかったとき(SV、エアブレーキ系)など、回転が速いときにせり出してきて、より強い制動力を受けるように設計されています。

 スティーズA Ⅱ TWのMAG-Zブーストは、スプールに組み込まれたパーツに強い遠心力がかかると、インダクトローターが磁界の中に押し出されてくる仕組みです。遠心力が弱まるとバネの力で元に位置に戻ります。中~重量級のルアーの遠投を得意としていたMAGFORCE-Zを発展させたシステムです。

 ジリオンSV TWのSVブーストやスティーズ AIR TWなどのエアブレーキシステムは、回転速度が上がってインダクトローターにかかる制動力が一定を超えると、ブレーキ力に引きずられて(スプールとローターが捻られて)押し出されます。回転速度が落ちてくるとバネの力で徐々に戻っていきます。

◆ジリオンSV TVに採用されている「SVブースト」の仕組みが紹介されています

 「ブースト」と名の付く最新のシステムでは、強さの異なる2つのバネでインダクトローターを制御しています。キャスト中にインダクトローターのポジションが2段階に切り替わることで、バックラッシュの起きにくさと遠投性がアップしました。

\ MAG-Zブーストおすすめモデル /

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スティーズA Ⅱ TW

スティーズシリーズのタフネスモデル、スティーズA TWのタフさと回転性能に磨きがかかった! 大きな巻き上げ負荷がかかっても滑らか且つハイパワーにリーリングできるHYPERDRIVE DIGIGEARを導入。高いレスポンスを発揮するG1ジュラルミン製Φ34mm MAG-Z BOOSTスプールにとってキャスト後半の伸びのある遠投性能も向上している。

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ベイトリールのブレーキの原理:デジタル制御式/シマノDC、ダイワIM Z

 シマノのDCシリーズや、2023年のダイワ「IM Z リミットブレイカーTW HD-C」に搭載されているのがデジタル制御式。スプールから指を離した瞬間からルアーが着水するまで完全オートマチックに制御してくれるチート的ブレーキシステムです。

 センサーで感知したスプール回転速度とその変化量を制御ユニットにフィードバックし、プログラムに応じてキャスト開始から着水までの各段階で最適なブレーキ力をかけてくれます。

●シマノ DC(デジタルコントロール)システム 

 世界で初めて実用製品にデジタル制御式ブレーキが組み込まれたのは、シマノから2003年に発売されたカルカッタコンクエスト200/201DC。当時の誌面広告には制御基板と電磁コイルがむき出しになったセンセーショナルなイメージ画像(実際はシールドで防護)でPRされていました。

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Basser2003年8月号掲載の広告

 1/1000秒単位でスプール回転をモニタリングし、スプールシャフトの永久磁石と、制御回路に接続された本体側のコイルによって回転を制御しています。

 現行のDCモデルに搭載されているものはさらに制御能力が向上。アンタレスDCやエクスセンスDCの「4×8DC」は、4つの基本モード(フロロ、PE、ナイロン、エクストリームロングキャスト)ごとに外部ダイヤルで8段階の調整ができるシステム。

 カルカッタコンクエスト DCやSLX DC XTの「I-DC5」は3つの基本モード(ナイロン、フロロ、PE)をそれぞれ5段階に調節できるシステムです。

◆DCシステムの仕組みはこちらの動画でどうぞ

 

\ DC搭載おすすめモデル /

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アンタレス DC MD

DC搭載リールの最高峰、遠投性能を突き詰めたシマノリールの代名詞となっているアンタレスDC。「MD」は20Lb100mの糸巻き量で、ビッグベイトなども扱いやすいヘビーディーティーなモデルです。

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●ダイワ IM Z リミットブレイカーTW HD-C 「インテリジェント マグフォース」

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 2023年発売の「IM Z リミットブレイカー」で、ダイワが追求し続けてきたマグフォースブレーキのデジタル制御化が実現! さらにワイヤレス接続でスマートフォンのアプリと連携できる時代に!

 制御方法はブラックボックスですが、スプールには固定式インダクトローターがあることから、同社のマグネットブレーキと同様に渦電流を生じさせてブレーキをかけ、そのための磁力を制御ユニットでコントロールしているものと考えられます。

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 制御ユニットのプログラムには約40年にわたるマグネットブレーキ開発の歴史で培った膨大なデータが反映され、より無駄のないブレーキ制御が可能になっているはず。

 従来のブレーキにも、遠投を得意とするマグフォースZ、トラブルフリーが身上のSVなどユーザーの好みで選べる特色がありました。

 デジタル化によって特性の異なるブレーキを1台で状況にあわせて使い分けられるうえ、遠投性能とトラブルレスさの両方が向上しているとみて間違いないでしょう。

 また、アプリと接続してキャストごとのデータを可視化&記録できるほか、今後はダイワから配信される新たなブレーキモードをインストールできるようになるといいます。

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出典:ダイワ コネクティングシステム紹介ページ

 たとえばバズベイト向けやスキッピング向けなど、半ばオーダーメイド的な、各個人の釣り方ごとに究極の使いやすさを求める方向にも行けますし、逆に、サミング必須のギリギリのブレーキモードで飛距離を競って楽しむ企画なども可能になるでしょう。

 これはすなわち、ニーズの最大公約数をねらうしかないマスプロダクトの宿命から解放されるということ。IM Zをきっかけに、これまでになかったコンセプトや設計思想でより自由な製品開発が進んでいくのかもしれません。

 あらゆる意味で限界を突破していくダイワとIM Zの挑戦に今後も注目していきたいですね。

\ おすすめ /

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IM Z リミットブレイカーTW HD-C

ハンドルの巻き上げをパワフル且つ滑らかにスプールへ伝えるHYPERDRIVE DESIGN、レベルワインドのライン抵抗を減らして飛距離を伸ばすTWSなどダイワリールのテクノロジーに加え、DAIWA CONNECTING-SYSTEM、INTELLIGENT MAGFORCEを搭載した次世代ベイトリール。

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まとめ

 ベイトリールにはさまざまに考案されたブレーキシステムが搭載されており、バックラッシュを防いでいる。

 遠心式ブレーキのブレーキ力はスプール回転速度の2乗に比例。キャスト後半の伸びがある反面、サミングが必要になることも。

 マグネット式ブレーキは、可変パーツのないシステムでもスプール回転速度に比例してブレーキをかけてくれる。キャスト後半もしっかりブレーキをかけてくれる。

 ダイワのベイトリールのように、マグネット式ブレーキでもスプール回転と連動する可変パーツによってトラブルなく飛距離も伸ばせる仕組みを備えたものがある。

 デジタル制御式は、センサーでスプール回転を感知し、キャスト開始から着水までの各段階でプログラムに応じて最適なブレーキ力をオートマチックにかけてくれる。

 

 最後になりますが、リールの使いやすさはブレーキシステムだけで決まるわけではありません。自重、スプール重量、スプール径、レベルワインドのデザイン、ギヤと本体の設計などなど、さまざまな要因が絡み合っています。

 ブレーキシステムの特性も理解したところで、自分に合うリールを探してみてください。

 

 

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