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編集部2021年11月28日

アンバサダー2500Cを主役に抜擢した渓流ベイトフィネスの仕掛人 第2回(全3回)

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Ambassadeur 2500Cによる渓流ベイトフィネスゲームが空前のブームを巻き起こして数年。その仕掛け人であるCASKETの手島浩志さんが、当時の変遷をたどる。

軽量ミノーが流れるように飛ぶ衝撃と感動、そして確信。

写真と文=手島浩志

 Ambassadeur 2500Cによる渓流ベイトフィネスゲームが空前のブームを巻き起こして数年。その仕掛け人であるCASKETの手島浩志さんが、当時の変遷をたどる。

こちらの記事は『ABU for LIFE』に掲載されているものをオンライン版として特別公開しています。この記事のほかにも、アブとともに楽しむ極上のフィッシングライフを楽しむための記事を多数収録。ぜひチェックを!↓↓↓↓

手島浩志(てしま・ひろし)
福岡県在住。土曜日しか開いていない福岡県春日市の知る人ぞ知る釣具店CASKETオーナー。Ambassadeur 2500Cの渓流スタイルをいち早く提唱。 ●CASKET info
店頭営業:土曜祝日 営業時間:10~18時
住所:福岡県春日市春日原北町1-3-10
HP:http://www.club-casket.com/

 

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手島さんが営む福岡県春日市にあるCASKETの店内は釣具店というよりおしゃれなアウトドアショップ

 

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土曜と祝日しか開いていないCASKET。九州アングラーの超隠れ家的ショップ

高性能パーツが登場して2500Cが激変する

 2005年を境に僕らはバスフィッシングから遠ざかった。僕は渓流トラウトのミノーイングに没頭し、彼は博多のヒラマサ釣りで一目置かれる存在になっていった。小型プラグ偏愛の彼は、同時にリールのチューニングマニアでもあった。機械いじりが昔から好きで、釣り具はもちろん車やオーディオもノーマルのまま使うことはしないタチだった。彼は船長仕事をしながら、海が荒れた日は改造した2500Cを持ち出して、バスや渓流で息抜きを楽しんでいた。

 そんな当時の2500Cライフを決定づける出来事が、チューニングパーツを販売するアベイルの登場だ。ジュラルミンをこれでもかと薄く切削したスプール、軽量化されたレベルワインダー、ヘッジホッグのオープンタイプのセラミックボールベアリング、さらにはマグネットブレーキと、これまでのパーツとは明らかに一線を画すチューニングパーツが続々と世に送り出された。

 いつだったか、赤間船長が興奮した面持ちで僕に「ふふ、すごいリールができたぜ」と、見た目は変わらない2500Cを持ってきた。「これで渓流ミノーも飛ばせるよ」という彼の言葉を僕は真に受けなかった。なぜなら、これまで散々ボールベアリングを追加したフィネスチューニングを試していたからだ。

 当時はバスプロの本山博之氏が渓流ベイトフィネスを提唱して話題になっていたが、僕は最新式のベイトキャスティングリールを使っても、やはり3g に満たない軽量ミノーを満足に飛ばせなかった。結局飛びのよい3.5~5g のスプーンやスピナーを使った。渓流ベイトは少々重いルアーを選択しながら楽しむものだと思っていた。

 笑いながら「早く投げてみろ」と彼に急かされて試しにキャストした時、僕は声を上げて驚いた。 軽いミノーが流れるように飛んでいくではないか。シャーというかスルスルーというかサラサラ~と表現すべきか。2500Cの重いスプールに引きずられて左に曲がっていくような感覚がまるでない。ラインが真っ直ぐに出ていくのだ。もはや完全に別物だった。

 これなら重量のあるスプーンやスピナーに縛られることのない、ウッドやバルサミノーで渓流釣りができる。この時の衝撃は今でも鮮明に覚えている。僕はすぐさまアベイルに各チューニングパーツを発注し、所有する2台の2500Cを彼に預けたのであった。

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チューニングをしっかり施したアブなら使用するラインはナイロンが僕は好きだ

世界中に埋もれていた2500Cをかき集める

 チューニングを待つあいだ、僕はアメリカのサイモン氏にもこの興奮をメールで伝えた。アンバサダーの収集家だったサイモン氏は、聞けばトラウトは2500Cで楽しんでいるとのこと。アブにはトラウトの名作スプーンも数多い。黒金の2500Cデラックスを駆ってレインボートラウトやブラウントラウトを釣りあげる写真が届いた。そこで2500Cのリバイバル・パーツを企画する話が持ち上がった。古い2500Cのサイドプレートの在庫を持っていたサイモン氏がレストアパーツを販売することを持ちかけてくれたのだ。そこで記念すべき2500Cのブルーグレー『アンバサダー2500CDL』の企画が生まれる。アンバサダー2500Cを使った渓流ベイトフィネスブームを直感した瞬間だった。

 サイモン氏がサイドプレートのレストアを手がけている間に僕は世界中の2500Cを集めた。小さなアンバサダーは人気がないことも手伝って、当時は安い金額で買えた。最終的に100台ほど集めることができた。

 

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渓流と2500Cをつないだ僕とサイモン氏が手がけたブルーグレーの2500CDL。高貴なブルーとゴールドのクレストマークが鮮烈だ

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僕のサイドプレートコレクション。この写真の2500Cサイドプレートはオリジナルを含めサイモン氏とのレストア企画でいくつもの色を作った。貴重なプレートも数多く含まれる

 実は75~76年にかけて作られた2500Cの最初期モデルは、レベルワインダーを駆動させるウォームシャフトの樹脂パーツが劣化し、爪が折れている個体が数多く存在した。そのままでは使えない2500Cが大量にアメリカに埋もれていたのだ。そこでまずはウォームシャフトを日本の代理店から取り寄せ、さらに追加で2500Cを集めまくった。

 問題はまだあった。右サイドプレートと内部のブレーキプレートを止めるネジの在庫がなかったのだ。すぐにネジを特注で作ってくれる業者を探した。もちろんオリジナルと同じくストレートヘッドで作るようにお願いした。サイドプレートのクレストエンブレムが大きな2500Cが作られていたのが75年。すでに40年も経過している。パーツが準備できるだけでもよしとしなければならない。

 こうして苦労した甲斐もあって、2500Cによる渓流フィネスはブームになった。サイモン氏と企画した珍しいカラーの2500Cも話題になった。それだけアンバサダーは時代を超えても変わらない不朽の魅力があったのだ。

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秋迫る九州山間部の源流で本流育ちの大ヤマメに黒いアンバサダーで出会った。ぞくっとさせる眼光がたまらなく好きだ

 

 懐古的なデザインをまといながらも、今や2500Cは渓流ミノーイングで最強とうたわれる。それはレベルワインダー駆動機構がもたらした性能向上の恩恵である。以前はキャスト時にレベルワインダーが駆動することでブレーキがかかり、軽量ミノーを快適に飛ばせなかった。

 しかし、ベアリングのレスポンス向上やスプール、コグホイールの軽量化によって利点に変わった。レベルワインダーがスプール回転に連動して駆動することで、スプールからラインがいいあんばいで放出されるようになったのだ。このいいあんばいというのがキモである。軽いミノーの飛距離を伸ばし、より軽い力でキャスト可能になった。この点が2500Cが今の渓流ミノーイングで最適なベイトキャスティングリールとされる理由であろう。

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最後にプレートを止めるネジのしめ込みは緊張する。手がうっかり滑ると大事な顔(プレート)に傷を付けてしまうからだ 

 

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車に積む2500C救急ボックス。2500Cは水ぬれ厳禁。渓流の水に浸かってしまったら、すぐにこれで対処する 



 

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