アジングの主流はエステルである。ここでは伸度の違うエステルを出す理由をバリバスの岸田凌さんに聞いた。
カラーによっても伸度に違いがある
解説◎バリバス企画宣伝部 岸田凌
老舗のラインメーカーとして多彩な製品がラインナップされている中で、アジング専用の「アジングマスター」の販売を始めたのはいつ頃からでしょう? また一年の中でどの季節に売れ行きがよいと感じますか?
岸田 エステルを採用した「アジングマスター」は2012年ごろ、クリアカラーのリリースが最初です。アジングはその頃から人気が高まって現在も市場が大きなジャンルです。よく売れる季節は地域によっても異なりますが全国的に見れば12月下旬からよく動くようになります。日本海側は7~9月の夏もよく売れます。3月に入ると特によく売れるのが新潟で、アジング熱のとても高い地域と感じています
もともとアジ釣りといえばサビキ仕掛けなどで釣るファミリーフィッシングのイメージが強かったですが2010年台に入り全国的に人気が出たジャンルと実感しています。流行以前のライトソルトといえば、メバルがメインターゲットでエステルラインを使う人は少なかったように思います。なぜアジングではエステルが主流になりえたのでしょう?
岸田 ナイロン、フロロに比べ伸びなくて圧倒的に感度が優れているからです。バリバス製品の数字でいえばナイロンの伸度は平均25~ 35 %、フロロカーボンは23~30%。対してポリエステル(エステル)は17~20%です。フロロもエステルも伸度はある程度調整できるのですが、伸びない側のエステルであれば10%後半台。対してフロロカーボンは伸びない側でも20%前半台となります。アジングマスターには3種類ありますが、クリアは10%後半台の伸びにくい側のエステルを採用しています。伸度が低くて感度を重視したモデルです。色の付いたレッドアイとレモニーは伸度20%台のエステルです。赤と黄色に関しては少しクッション性をもたせようという方向で作られ引き抜き時などの強度を高めています。
伸度という面で、アングラーは3種のエステルを使い分けているのですか?
岸田 使い分けていますね。魚のサイズ、もしくは抜き上げの必要な場所などフィールドの特性に応じて安心感のあるほうを選ばれているようです。あとは高反発なキンキンのロッドに合わせるならクッション効果のあるレモニーやレッドアイを選び、ソリッドティップなどの軟らかめのロッドを使う人は伸度の低いラインという発想でこだわってらっしゃいます。
伸びないという点と強度の高さでいえばPEのほうが優れているように思います。たとえば0.15号の極細PEであれば水切りもよくて強い。PE0.15号と同等の強度のエステルは何号になりますか?
岸田 PE0.15号で4.5ポンドの強度があります。同等の強度のエステルとなれば0.6号です。確かにPEのほうが細いラインで強い。しかし1gのような極小ジグヘッドを使うアジングではPEの浮力がフォールを妨げてしまう。海面に漂うラインが長く出るほど浮力は強くなります。またPEは風に弱く、フワッとしている分だけ感度も悪い。率直に言ってジグ単には不向きでフロートをセットするようなリグでなければPEは使いにくい。ちなみにアジング専用のPEは弊社のラインナップにありません。極細8本縒りの「アバニソルトウォーターフィネスPE X8」か4本縒りの「アバニライトゲームスーパープレミアムPE X4」が使われます。やっぱりアジングはエステルがメインストリームなので、その中でユーザーさんの選択肢を増やすようにしています。
※このページは『つり人 2024年5月号』を再編集したものです。