冬の大阪湾で人気ナンバーワンを誇るのが「テンヤタチウオ」。テンヤと呼ばれるオモリとハリが一体となったフックに、エサをセットするだけの誰にでも扱いやすい仕掛けでねらえる反面、誘い方によって釣果に差が出る奥の深さが人気の理由。関西船釣り界の名物男「沖猿」こと菊池雄一さんにテンヤタチウオを1から100まで徹底解説してもらいました。
7~3月までロングランで楽しめる大阪湾の人気No.1ターゲット!
写真と文◎高崎冬樹、解説◎菊池雄一
冬の大阪湾で人気ナンバーワンを誇るのが「テンヤタチウオ」。テンヤと呼ばれるオモリとハリが一体となったフックにエサをセットするだけの誰にでも扱いやすい仕掛けでねらえる反面、誘い方によって釣果に差が出る奥の深さが人気の理由。関西船釣り界の名物男「沖猿」こと菊池雄一さんにテンヤタチウオを1から100まで徹底解説してもらいました。
この記事は書籍『これ一冊で丸わかり!関西の船釣り最新テクニック』に掲載したものを再編集しています。
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テンヤタチウオのシーズンは7月から3月まで
近年、年が明けても3月いっぱいまでねらい続ける遊漁船が多くなっている大阪湾のテンヤタチウオ。7月にシーズンがスタートし、9ヵ月間というロングランの釣りになったのには、それまで冬のメインターゲットであったメバルが釣れにくくなったという理由もあるが、それ以上にこの釣り自体が面白いという要素が大きい。
菊池さんが元々好きな船釣りは、泳がせ釣りや落とし込み釣り。生きたアジやイワシをエサに、マグロ、青もの、ヒラメなどのフィッシュイーターをねらう釣りだ。根っこにはデカイ魚を釣りたいという気持ちがある。

近年、大阪湾のタチウオは、数は減少傾向にあるがサイズはでかくなっている。メータークラスは珍しくなく、1m30㎝、1m40㎝という特大、いわゆる真ドラゴン級がロッドを絞り込んでくれるからたまらない。

また、テンヤタチウオの魅力は、誰にでも釣れるチャンスがあり、オデコになる確率が低いことと菊池さんは言う。むしろ初めての人や力が弱い女性や子どものほうが大型を釣りあげることが多くある。警戒心が強い大型ほど、スローでナチュラルな誘いが有効になるからだ。
ちなみに、「タチウオは陸から釣るもので、何で船で釣らなあかんねん」というイメージもあったという菊池さん。だが、食わず嫌いはやめてこの釣りに力を注いでみると、その面白さに一気にハマった。敷居は低い一方、やればやるほど奧は深い。そして、食べて美味しく料理が簡単なことも、関西でのテンヤタチウオ人気を後押ししている。
これ一冊で丸わかり!関西の船釣り最新テクニック

大阪湾、播磨灘、和歌山沖、若狭湾など、関西の主な海域を舞台に、大人気の「船テンヤタチウオ」「タイラバ」「落とし込み」など12の釣りの基本と実践を詳しく紹介。『つり人』連載時の情報に加え、よりハイテクニックな視点からのアドバイスや分かりやすい釣り方のイラストも大幅加筆。ほかに「メバル」「イサギ」「キス」「鬼アジ」「マダコ(船タコエギング)」「カワハギ」「マダラ」「深海釣り」「イカメタル」も紹介しています。

大阪湾、播磨灘、和歌山沖、若狭湾など、関西の主な海域を舞台に、大人気の「船テンヤタチウオ」「タイラバ」「落とし込み」など12の釣りの基本と実践を詳しく紹介。『つり人』連載時の情報に加え、よりハイテクニックな視点からのアドバイスや分かりやすい釣り方のイラストも大幅加筆。ほかに「メバル」「イサギ」「キス」「鬼アジ」「マダコ(船タコエギング)」「カワハギ」「マダラ」「深海釣り」「イカメタル」も紹介しています。
テンヤタチウオの竿・リール・仕掛け






4パターンの誘い方を使い分けるべし
テンヤタチウオは大阪湾では古くから盛んな釣り。ただし、昔は長く胴に乗るサオを船縁に置き、底から5m切ったタナに止めて穂先が舞い込むまで待つ釣りだった。あるいは、同様にサオが絞り込まれるまで、リールをスローに巻き続けるだけの釣りだった。現在もこうした釣り方を実践している人は多い。
近年は釣り人の増加とともに単純な方法では釣れにくくなり、ショートロッドに電動リールを駆使しての誘い釣りがメインになっている。
気になるのは「タックルは新しいのに、釣り方は以前と変わらないという人が意外に多いこと」と菊池さん。たとえば近年のテンヤタチウオ釣りでは、前アタリの後、仕掛けを何十秒も止めて本アタリを待ち続けるのは「逆効果です」という。
「とにかくタチウオの食い気スイッチを入れることが大切です。テンヤを動かさず止めていたり、単純に巻き上げているだけでは、なかなかタチウオがエサのイワシをくわえるまでに至りません」
ここからは多彩な誘い方を駆使してアタリを誘発する方法を具体的に解説したい。
菊池さんはタチウオの活性を二段階に分けている。一次スイッチと二次スイッチだ。
一次スイッチとはタチウオがテンヤを見つけ接近し、じゃれ付くようになった状態。ただし、ここでアワセを入れてもハリには掛からない。そこから次の誘いを入れることで、テンヤを押さえ込み、エサのイワシを口にする二次スイッチが入る状態に持っていく。
タチウオの活性が高い場合は、一次スイッチをとばしてそのまま二次スイッチが入る。いきなりサオが舞い込むとか、逆に食い上げるアタリが出る時がそうだ。こういう場合は即アワセ。非常に簡単で誰にでも釣れる。ただ、実際にはもう一段階の誘いを駆使しないと二次スイッチが入らない状態が多い。
菊池さんが実践している具体的な誘い方は「ジャーク&ステイ」「ストップ&ゴー」「電動微速巻き」「リフト&フォール」の4つ。そこから得られる反応でさらに対応を変える。詳しくは別表をご覧いただきたい。
基本の誘い4パターン(使用頻度の高い順)
■ジャーク&ステイ
ハンドル2回転のジャーク2回&ステイ3~8秒を繰り返す(徐々に上へ)
■ストップ&ゴー
ハンドル2回転&ステイ3~8秒を繰り返す(徐々に上へ)
■電動微速巻き
シマノ・フォースマスター400のスピード2~8で一定速で巻き上げる(徐々に上へ)
■リフト&フォール
3~10秒でゆっくりロッドを持ち上げ、同じペースで下ろすを繰り返す(この時は決まったタナで釣るがアタリがなければタナを下げていく)
■ジャーク&ステイ

■ストップ&ゴー

■電動微速巻き

■リフト&フォール

アタリに応じてアワセを変えれば釣果倍増!
パターン1:サオが舞い込む即アワセ。掛からなければ1回ジャークしてステイ
パターン2:食い上げる
即アワセまたは素早くイトフケを取ってアワセ。掛からなければ1回ジャークしてステイ
その他の大小のコツンというアタリ(上げ下げどちらでも)
● 当たったらすぐに(1秒以内を意識)ハンドルを半回転し5~10秒ステイさせる
● 大きく間隔が短いコツンの時は素早くしっかり半回転させ、小さく間隔が長いコツンの時はやさしく半回転させる
テンヤタチウオは待ちの釣りではなく積極的に仕掛ける攻撃的な釣り。可能な限りタチウオがテンヤをくわえる状態を作り出せれば、この釣りの魅力にどっぷりハマることができる。


解説:菊池雄一(きくち・ゆういち)
年間60 ~ 80日は船の上という関西船釣り界の名物男。少年時代に父親の影響でエビ撒き釣り、磯のメジナ釣りにハマり、大学生から本格的に船釣りを始める。大阪市出身。1983年生まれ
2018/2/6