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魚の視覚と釣果の関係にせまる:魚は色を見分けるのか?

ルアーとエサの「色」を科学する :第2回

解説◎長岡 寛
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 エサやルアーは、魚にハリに食いついてもらうための最も重要な釣り具といえます。
 新刊『釣りエサ(ルアー・エギ・毛バリ・生エサ)のひみつ』は、最新の情報やデータを元に釣りエサにまつわるヒントを科学的に解説した1冊。
 解説を担当してくれた長岡寛さんは、釣りエサメーカーのマルキユー㈱で製品開発に携わり、東京海洋大学の公開講座「フィッシング・カレッジ」では講師も務める第一人者です。
 今回は特別に本書の内容の一部を公開します。エサに気を遣うことの重要性を論じた第1回に続き、今回はいよいよ魚の色覚と釣果の関係を科学的に考察していきます。


◆連載 ルアーとエサの「色」を科学する
第1回:釣りが上手い人ほどエサに気を遣うのはなぜか?
第2回:魚の視覚と釣果の関係にせまる:魚は色を見分けるのか?
第3回:魚の視覚と釣果の関係にせまる:アオリイカの餌木とクロダイの練りエサからわかること
第4回:魚の視覚と釣果の関係にせまる:色の違いよりも明度が重要?

魚は色を識別する


 かつて「魚は色盲」と言われていたが、実は色を識別する能力があることが分かってきた。金魚に色を見分ける能力があることを最初に突き止めたのはイギリスのフォンフリッシュ博士で1940年のことだ。博士は金魚を使って青色の容器にエサを入れて馴らし、それとは別に明るさだけを変えた灰色の容器でも同じ実験を行なった。すると金魚は常に青色の容器に反応を示した。これにより金魚は青色を判別できることを実証したのだ。

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 金魚は屋内で容易に飼育できるので実験により比較が可能だが、カツオのように外洋を回遊する大型魚ではそうはいかない。これらの魚も色を識別できることが判明したのはつい最近になってからだ。そしてさらに魚の視細胞の詳細な研究により、その構造からだいたいの視力を測定することも可能になった。

 では魚が色を見分けることができるということと、色彩の違いは釣果にどれくらい影響しているのだろうか。生エサには本来備わっている色彩があり、多くの場合そのままの色彩で使用される。これは元々魚が食べているものに手間をかけて着色する必要がないからだろう。一方で、古くから使われてきた生エサのサシ(ハエの幼虫)は、食紅で着色した「ベニサシ」がワカサギ釣りに用いられる。アジ釣りなどでもイカを短冊状に裁断して食紅で赤くしたものが使われる。最近では橙色などに発色するように施したアオイソメも市販されている。さらに冷凍のオキアミや加工エサでも近年は着色されたものが多く流通している。

 それではルアーはどうだろうか。ルアーをはじめとする擬似餌は意図的に着色されている。したがって釣りの際には必ず何かしらのカラーを選んで使うことになる。

擬似餌のカラーとタチウオの釣果


 釣りによるタチウオ漁は、生エサだけではなく擬似餌を使う漁業者も各地にいる。その方々に擬似餌のカラーについて話を伺うと、皆口々に「赤が絶対」という答えが返ってくる。そこで私は2011年より2年間に渡り(独)水産総合研究センター、現・(独)開発調査センターの調査に同行させてもらい次のような実験を行なった。

 テストを実施した漁場は四国を挟んだ豊後水道で、漁船の所属は大分県の臼杵漁協だ。対象魚はタチウオで、長さ300mの縄に付いた80本の枝バリに擬似餌を装着し、船を低速で走らせながら釣るという漁法。テストを行なった擬似餌は、現在マルキユーから「パワーシャッドストロング」という名称で漁協向けに販売されているタチウオ専用の商材の試作段階のもの。いわゆるプロトタイプだ。使用したカラーは蓄光塗料の入った「ミッドナイトグロウ」(現・ミッドナイトグロウ)と「オキアミカラー」(現・オキアミグロウ)「グロウピンク」(現・ホットピンクグロウ)の3色。

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 テスト方法は、先の3色とは別に比較規準用にパールグロウを挟んでそれぞれ交互に装着し(パールグロウ→ミッドナイトグロウ、パールグロウ→オキアミカラー、パールグロウ→グロウピンク)、ヒットチャンスが均等になるようにして曳き縄を行なった。

 100回以上の曳き縄により、タチウオがどのカラーによって釣りあげられたのかを統計処理によって解析したものが下のグラフだ。結論として、色違いの擬似餌によるタチウオの釣果には違いがなかったことが判明した。ただし、水研センターと実施した試験は大分県漁連の取り決めにより日中行なわれた。調査は水深が150mと深かったことから、別の水域や浅い水深の場所で行なった場合、あるいは暗い時間帯では異なる結果になっていた可能性がある。

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シーバスの必殺カラーは?


 東京湾は全国屈指のシーバスのフィッシングスポットだ。なかには年間2000尾もヒットさせるアングラーもいる。ところで、シーバス用のルアーには実に鮮やかなカラーが施されているが、比較的濁りの強い東京湾奥のエリアをトップウオーター・プラグで釣った場合、カラーの違いによる釣果の差はほとんどないようだ。

 東京海洋大学客員教授の奥山文弥氏はシーバス釣りにも秀でたアングラーだ。以前昼夜ともいろいろなカラーのルアーを試したところ、色が明るくても暗くても釣果には違いがなかったとのことだ。次のイラストのように多くのルアーは黒いシルエットでしか見えないことがその理由。奥山氏の話で特に強い印象を受けたのは、真っ黒に塗装したルアーを真夜中に使用したが他のカラーと遜色ない釣果を得たというもの。私も真っ暗に近い夜中は白色のルアーに分があるのではないかと思っていたので、この結果は意外だった。

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カワハギには黄色が有効?


 アサリのムキ身はカワハギ釣りに使用する代表的な生エサで、黄色が鮮やかなものがよいとされている。カワハギの雄は繁殖期になるとヒレが鮮やかな黄色になる。婚姻色が鮮やかなほうが繁殖の相手を見つける上で有利になるから、カワハギは黄色を識別していることになる。ではそのことと、エサのアサリの剥き身も黄色がよいという説に関係はあるだろうか。実際にはアサリのムキ身は黄色くても白っぽくても、カワハギの釣果に差はほとんどない。

 また、「パワーイソメ」という加工エサがある。ピンク、赤、茶、青緑の4色が市販されているが、これをカワハギ釣りに用いると、どの色を使用しても同じように釣れる。ただし、カワハギのアタリが遠くなった時にカラーを変えると、ふたたびアタリが出るようになる。これはカラーを変更することで、今まで投入されていたエサを学習した魚が、別のエサが目の前に来たと感じてだまされてしまうためだと考えている。

カラーローテーションは効果的?


 次にルアーの色彩を考える上でもう1つ大切なことをご理解いただく必要がある。

 特定のカラーでよく釣れる、あるいはカラーチェンジした直後に釣れた、これらは釣り場でよく耳にする会話だ。確かにルアーのカラーを変更した途端にヒットすることはよくある。これは(特定のカラーにのみ効果があるかないかということを別にして)、繰り返し同じカラーのルアーを投入されることで魚も学習して偽物だと見切っているからだ。そんな時、異なるカラーのルアーが目の前を通過すれば今度は食べられるエサ、あるいは新しいエサを見つけたと思ってうっかり口にしてしまうのだ。

編集部より
  魚が色を識別し、それが釣果に影響していると思える状況に、釣り人なら何度も出会っているはずです。しかし、タチウオの実験からは、色の違いによって釣果に差は生じないという結論が導かれています。釣り人なら「本当?」と、にわかには信じられない事実ではないでしょうか。トップウォーターという条件付きではありますが、東京湾のシーバス釣りも同様です。
 しかし、誤解しないでほしいのが、色による釣果に違いがないというだけで、色を変えることが無駄と言っているわけではないことです。何度も実験を繰り返し、統計的な手法を用いて、分析すると最終的にはどの色にも同じような確率で魚が掛かってくるということなのです。「カワハギには黄色が有効?」の文章内で示しているとおり、多彩なカラーをそろえるのは意味があることです。アタリが遠くなった時に、カラーを変更することで、再びアタリが出るようになります。釣り人がよく「魚の目先を変える」といってカラーを変えることがありますが、これは有効な作戦と言えるでしょう。

◆次回
第3回:魚の視覚と釣果の関係にせまる:アオリイカの餌木とクロダイの練りエサからわかること

解説◎長岡 寛
1960年東京都出身。1982年、北里大学海洋生命科学部(当時の水産学部・水産食品学科)。卒業と同時にマルキユー㈱(当時の小口油肥株式会社)に入社、配合エサやエコギアの開発に携わる。現在も同社勤務の傍ら、東京海洋大学の公開講座「フィッシング・カレッジ」では講師を務め、福井県立若狭高校、京都府立海洋高校等の教育機関でも講義や実習を行なっている

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定価:本体1,600円+税
著者:長岡 寛
四六判並製カラー272P



Contents
1章 釣りエサの種類と特性
2章 魚から見た釣りエサと釣り人
3章 魚は釣りイトが見える?
4章 ルアーとエサ、何色がよく釣れる
5章 臭いエサのほうが魚は集まる?
6章 甘いエサはよく食べる?
7章 釣り場の騒音はNG か
8章 究極の釣りエサ成分とは
9章 偽物なのになぜ釣れる
10章 最適なエサ、ルアーのサイズとは
11章 魚が食い込みやすい釣りエサの硬さとは
12章 釣りエサは環境にどう影響するか
最終章 釣りエサのひみつ






2019/7/25

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