九十九里海岸に流れ込む栗山川はクロダイやキビレの魚影が豊富なことで有名だ。クロダイたちの常食であるカニ類をエサに前打ちでねらう。ひとたび掛ければ疾走が楽しめる。
40cmオーバーが走り回る
写真と文◎時田眞吉
季節が夏に移ろいで海水温が上昇すると川から流入する冷水を求めて魚たちが河口に集まり出す。九十九里海岸に流れ込む栗山川はクロダイやキビレの魚影が豊富なことで有名だ。クロダイたちの常食であるカニ類をエサに前打ちでねらう。ひとたび掛ければ疾走が楽しめる。
この記事は月刊『つり人』2021年8月号に掲載したものを再編集しています
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目次
- 前編:水温の上昇で河口に魚が集まる
- 後編:ねらいめは流心
- 後編:時間帯は干潮前後にねらいを絞る
水温の上昇で河口に魚が集まる
川と海の交差点、それが河口だ。真水と潮水の接地点、双方に生息する魚が、互いの領域を超えて行き交う汽水域。スズキやクロダイのように幼魚時代を過ごした魚が、汽水に慣れて成魚になっても深く入り込む。年魚であるハゼが栄養豊富な潮間帯の泥底で成長する。ウナギが上り下りする。コイやフナもゴカイや貝、甲殻類を求めてやってくる。
キビレをゲット! これからの暑い季節が本番だ
暑くなれば熱くなる!? 河口のキビレ、クロダイねらい
これら多様な営みの理由は、海水・淡水が常に押し戻しあうことで、プランクトンが多く発生するから。当然そこは幼魚の楽園となり、それらをエサとするフィッシュイーターなど、たくさんの魚たちが集まるわけだ。それだけに多彩なターゲットが期待できる。
そして川の恩恵はそれだけではない。海水温の上昇にともない、低水温の川の水が入り込む河口は、冷房の効いた室内のように魚たちを集めてくれる。その代表がクロダイ、キビレだ。春先には聞かれなかった釣果が、梅雨のころから爆発的に増す。涼しくエサ場となる河口に集結してくるからだ。
そんなクロダイ、キビレの魚影が濃い河口部として知られているのが栗山川。九十九里海岸の中央部に流れ込む中規模河川だ。その情報を伝えてくれたのが宮永敏彦さん。小学生のころから栗山川河口で釣りをしていたという生粋のローカルアングラー。今回、河口のクロダイ、キビレの釣りを紹介したい! とお願いすると、さっそく"釣査"を開始してもらえた。そして6月間近になるとすぐ連絡が! 「釣れ始めましたよ! クロダイ、キビレともいけそうです」との色よい返事だった。
満潮近くの河口部。土手ぎりぎりまで潮がある状態だ
干潮近くなると、下流、上流ともに足場のよい護岸が現われる。そこが釣り場となる
栗山川河口の概要を宮永さんにうかがうとこんな答えが返ってきた。
●春の乗っ込みを終え、夏の陽射しが注ぐようになるとキビレやクロダイは産卵後の体力回復をはかるかのように食いが活発になる。
●クロダイ、キビレは水温の上昇とともに汽水域に入り込む習性がある。陽射しの照り込みや海水温の上昇で塩分濃度が高まることから汽水域に入るのではないかといわれている。
●汽水域にはカニやエビなどのエサが豊富。食べなれているエサでねらうのが釣果を得る近道。
さて、概要の説明をしてくれた宮永さんだが、懐かしむように話が続く。
「近年は護岸工事が進み、昔とは風景が変わってしまい、干潟も減少しています。よく昔は魚が多かったという話はあちこちで聞きますが、栗山川のキビレ、クロダイは昔よりも今のほうが魚は多く、沢山釣れると感じています。何を隠そう、人生で初めて釣ったクロダイは、まさにこの地。それだけに思い入れもありますよ」
地元の常連さんのサオが曲がる。浅いので魚は横走りする。引きは強烈
玉網に収まったのは44cmのクロダイ
続けて同じ地元釣り人のサオが曲がる
今度は35cm。根掛かりを恐れずにカキ殻などの障害物周りを攻めていた
後編「ねらうべき時間帯とポイント」へ続く……
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栗山川河口
交通●京葉道路から千葉東金道路に入り、松尾横芝ICより県道62、58号経由で県道30号を左折。栗山川漁港入り口を右折
問合先●河井釣具店(0479・82・2503)