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編集部2022年5月27日

東京湾のクロダイ・キビレの今。生態面から研究者が解説 第1回(全3回)

クロダイ-川 クロダイ-海 東京 環境レポート 魚種別釣りガイド

10年前と比べ現在の東京湾にはクロダイが急増している。クロダイによく似たキビレもまた、明らかに勢力を拡大中だ。大都会の海で何が起きているのか? その不思議に迫る。

東京湾の不思議  クロスオーバーするクロダイとキビレ 

文◎工藤孝浩(神奈川県水産技術センター内水面試験場) 写真◎工藤孝浩・編集部

 10年前と比べ現在の東京湾にはクロダイが急増している。クロダイによく似たキビレもまた、明らかに勢力を拡大中だ。大都会の海で何が起きているのか? その不思議に迫る。

この記事は月刊『つり人』2021年8月号に掲載したものを再編集しています

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クロダイとキビレが並び立つ東京湾

 1970年代後半、自然に恵まれない横浜中心部で生まれ育った中高生時代、自転車で横浜港の岸壁に通い込んでフッコやクロダイを追っていた。当時クロダイは年に1枚釣れるかどうかの、まさに憧れの魚だった。

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近年は一年中クロダイが釣れる多摩川河口部

 同時に図鑑をめくっては、魚屋に並ぶことも水族館で見ることもないキチヌ(以後キビレと称する)なる魚に思いを馳せていた。私が東京湾でこの魚を採集したのは1999年、20年も後のことだった。

 さらに20年以上の歳月が流れた今、東京湾ではクロダイが驚くほど増えるとともに、キビレが急速に勢力を拡大し、ともにポピュラーな釣りものになりつつある。両種はともに浅海域生態系の高次に君臨する大型魚である。その両雄は今まさに、東京湾を舞台にクロスオーバーしようとしているのである。

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江東区を流れる荒川河口部のキビレ。東京湾では1990年代以降キビレの勢力が拡大している

クロダイとキビレはここが違う

 両種が属するタイ科クロダイ属は、インド―西太平洋の熱帯から温帯域に22種、国内に5種が分布する。その中で最も低温に適応して北海道から九州に分布するのがクロダイ、次いで低温に適応し本州中部から九州に分布するのがキビレである。他の3種は亜熱帯性で、琉球列島に分布する。

 生活史をみると、クロダイは春から初夏に産卵するが、キビレは秋に産卵する。ふ化したキビレはほどなく冬を迎えて成長が停滞するが、クロダイは高水温期に速やかな成長を遂げる。晩秋には、満1歳のキビレに0歳のクロダイが追いつき、以後の未成魚・成魚は似たような成長経過をたどる。

 

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クロダイの稚魚は体側に8本前後の横帯をもつ(横浜市平潟湾産)

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キビレの稚魚はクロダイに似るが、体側の横帯が少なく背ビレ前部に黒斑がある(横浜市鶴見区沿岸産)

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秋に産まれたキビレの稚魚は早春の汽水域にボラの稚魚とともに現れる (横浜市鶴見区産)

 釣り人憧れの50cmに到達する年齢は15歳前後と考えられるが、成長速度の個体差が大きく、10歳で50cmを超えるものがいれば、20歳を超えても40cm台前半どまりのものがいる。

 両種が好む環境は微妙に異なり、キビレは低塩分の汽水域や内湾を好み、クロダイはそれに加えて高塩分の海域にも現われる。両種が共存する水域では、キビレが低塩分側、クロダイが高塩分側に棲み分ける傾向がある。東京湾では、多摩川以北で両種が共存するが湾奥ほどキビレが多く、横浜―木更津以南と沖堤はほぼクロダイのみとなる。

 

第2回「キビレが勢力拡大した理由」へ続く……

 



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