東京近郊では近年キビレが増えている。汽水域の河口部や東京湾各所で釣果があがり、投げ釣りファンの好敵手になっている。食わせるまでの駆け引きは時に繊細。ヒット後は鋭い疾走を楽しませてくれる。
流れを探る!キビレとの駆け引き
文◎坂井勇二郎 写真◎編集部
こちらの記事は月刊『つり人』2020年6月号に掲載したものをオンライン版として公開しています。
東京近郊では近年キビレが増えている。汽水域の河口部や東京湾各所で釣果があがり、投げ釣りファンの好敵手になっている。食わせるまでの駆け引きは時に繊細。ヒット後は鋭い疾走を楽しませてくれる。
目次
- その1
- キビレは投げ釣りの好ターゲット
- 汽水域と流れが好き
- その2
- 時合を読む。釣れる潮と時間帯
- おすすめのタックルや仕掛け
- その3
- エサの使い方
- キビレの誘い方
鋭い引きを楽しもう!キビレ投げ釣り入門 その2 ◀◀◀前回の記事
エサの使い方
一年を通じてユムシ、イワイソメ、アオイソメが効果的なエサである。富津の場合は通年フグがいる。匂いの強いイワイソメはフグの餌食になりやすいが、30cm超のヒガンフグやショウサイフグはイワイソメよりもユムシが大好物。フロロカーボン5号のハリスをあっさり切っていくのは大型のフグであると考えられる。これが寄ったらユムシをやめ、イワイソメのほうがまだ釣りになる。また小型のショウサイフグが多い時はイワイソメだと取られるうえにハリスに小さな傷を付けてくるので、ユムシのほうがエサ持ちはよい。アオイソメは高水温期の昼間に効果的。激流の中を流して釣る時はアオイソメが特に効く。手持ちザオに小バリ、2.5号の細めのハリスで流し込むと反応がよく掛かりもよい。
高水温時で昼間に釣れる時は、キビレはものすごくシビアなアタリと食い込みになる。置きザオで待っていてもドラッグを滑らせるほどのアタリにはなりにくい。このような場合は、細めの長ハリスを用いた繊細な仕掛けにし、手持ちで誘ってこちらからハリ掛かりさせる能動的な釣りをすることだ。キビレはクロダイよりも巧みにエサを取るので、食わせるまでの駆け引きは実に面白い。
有効なエサ
ハリスまでこき上げたユムシ。下部はハサミでカットして内蔵を出すようにすると食い気が高まる
ユムシは海水を入れたタッパーに保存できる
イワイソメはハリスまでこき上げて刺しタラシは短く。匂いが強いエサなのでちぎって使用
アオイソメは3、4 匹房掛けにして動きでアピール度を高める。視覚に訴えるエサである
キビレの誘い方
置きザオなら、「コンッ」とか「チョンチョン」といった明らかにフグとは違う前アタリが出る。活性が高ければサオ先を曲げてドラッグを滑らせるほどのアタリもある。そこからサオを手に持ち、相手が走るタイミングに合わせてサオが直線になるぐらいサオを前に倒して送り込んで、大きく合わせる。ミチイトがPEなら大きく合わせずともハリ掛かりするが、ナイロンなら相手の引きを利用してイトフケを取って大アワセをくれないとフッキングしにくい。特に大型はフッキングしにくく、掛かりが浅いとやり取りの途中でハリが外れてしまう。このアワセまでの駆け引きはキビレの活性しだい。なお低活性時は前アタリのあとサオを手に持ってようすを見ながら、イトフケを動かす程度のテンションを入れて相手に走らせるような誘いをかける。そして相手が走ったタイミングでアワセを入れる。「走った時」はハリ先が口の脇(カンヌキの内側)の位置になり、がっちりと刺さりやすい。「チョンチョン」、「コンコン」のタイミングで合わせてもハリ掛かりすることはあるが、口内の堅い部分(特に上アゴ)にハリが乗っているだけのケースも多く途中でバレる。特にユムシを使っている時は、ハリ掛かりが悪いのと食い込みも渋くなるので誘いが効果的だ。
フグは税金みたいなエサ取りである。ショウサイフグの大型は5 号ハリスも噛み切る。ユムシやイワイソメに激しく反応する
アワセを入れてハリ掛かりすると、キビレは最初から激しく抵抗する。クロダイの場合は「グイーン」という感じで重量感のある引きをするが、キビレは「グイーン」とともに「ガンガン」と激しく首を振る。巻いてくる途中でも、カワハギのようにシャープに突っ込み左右に暴れ回る。これらをサオでいなし、足もとまで寄せて堤防ならタモ入れ。浜ならサオを倒して、寄せ波に合わせてズリ上げる。あまり無理をすると波打ち際でバレることもあるので、何度かドラッグを滑らせ送ったりして魚を弱らせてからズリ上げよう。
沖で暴れさせず静かにやり取りをすると、すんなり寄せられるが、このやり取りは魚が体力を消耗していない。足もとまで寄せてから大暴れし始めるのでバラす要因となる。大アワセをしたらその勢いで大暴れさせながら寄せるのは、キビレには効果的に思う。
アタリが出たところで駆け引きが始まる。イトを送り込み、走るまで待ち、時には掛け合わせる
私は釣った魚は美味しくいただく主義でクロダイ、キビレもよく食べる。キビレは8~9月が最も脂がのって旨い。産卵期は9~10月で10~11月は美味しくない。11月以降の冬場は大きなもの(45cm前後)ほど脂はのってくるが、越冬場所によって食べているエサが違うのか、味は個体差が激しい。冬場はノリを食しているものもある。ちなみに富津はノリダナが点在する。クロダイは12~翌3月までがとても美味しく、腹の中はノリでいっぱいになっている。
キビレの背ビレは威風堂々としていて恰好の良い魚である
ルアーでもキビレは釣れます!