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編集部2022年4月7日

山梨県/釜無川 霊峰富士を眺めて夢は本流サツキマス 最終回(全3回)

アマゴ 全国おすすめ釣り場 山梨

全国おすすめ釣り場。「山梨県/釜無川サツキマスのエサ釣り」をご紹介します。

アマゴの降海型「サツキマス」が増えることを願って

この記事は月刊つり人2018年5月号の記事を再編集しています

全国おすすめ釣り場。「山梨県/釜無川サツキマスのエサ釣り」をご紹介します

 

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文◎井上聡

利根川をホームグラウンドに記憶に残るヤマメやイワナとの出会いを求めて全国に足を伸ばす。奔流釣り倶楽部「渓夢」会長

 

思わぬゲストと可憐なアマゴ

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この日は信玄堤が並ぶ中部横断自動車道の下流区間まで行ってみたが、上流ほど濁りが強かった

 

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釜無川のサツキマス・本流アマゴ釣りの季節の目安となるのが、河川敷を黄色く彩るオオキンケイギク。毎年4 月25 日前後に開花する

 

濁りの影響がまだ出ていないであろう下流域へ急ぐ。ここしかない!そんなポイントに立ち、今後はピンチョロを2匹掛けにして、流心に馴染ませると目印に小さな変化が現われた。

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期待どおりに掛かったと思ったものの、どうも動きが鈍い。重量感たっぷりの感触の相手は……寄せてみると予想を裏切らないゴールドの魚体。立派なコイであった。

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浅い流れが連続する川原で見つけた勢いのある流れ込み。大きくサオを曲げた期待のヌシの正体は立派なコイだった。井上さんも思わず苦笑い

 

釜無川のポイントはどこへ行ってもほぼ砂利と砂地。深い淵がないので「釜無」と呼ばれるということも訪れればすぐ理解できる。このような川なので、魚は外敵から身を守るために流心に集まる傾向がある。

その際、流れ込み付近は浅いため、その後方にある深みをねらうとよいのだが、この日は低気圧が去ったあとの驚くほどの強風に加え、川全体は渇水してなおかつ濁りと悪条件。下流部から一転、試しに上流部の信玄橋下流まで足を延ばしてみたものの、濁りがきつくアタリもなかった。このあたりに信玄堤がある。堤の由来や役割を記した看板もあり、当時のことを想像しながら川に立つと、壮大なプロジェクトに圧倒されるようだった。しかし、水況はさらに悪くなり、台風並みの暴風にノックアウト! 残念ながらこれ以上の本流釣りは難しくなった。

影響の少ない渓流ならと思った時、ふと脳裏を過ったのは近くに住む保坂一夫さん。保坂さんとは6年前に富士川支流の早川で偶然知り合い、それから何度か一緒に釣りをした。控えめでとても紳士な方なのだが、渓流釣りの確かな技術を持っている。試しに電話をしてみると、「案内してあげるよ」と快諾してくれた。保坂さんの車を追って到着したのは荒川。渓谷部は昇仙峡とも呼ばれている。

川沿いからは見事な巨石帯が見え、その隙間を蛇行しながら流れる川は釣り心を揺さぶる。ここも薄い濁りだが、釣りができないほどではない。いつもは澄んでいるとのことで、やはり前夜には雨が相当降ったようだった。

「川虫はあるの?」と聞かれ、エサ箱をのぞくと小さなピンチョロが数匹しかいない。

すると保坂さん、「ヒラタが一番だよ。採取してあげるから」と言うなり、車の荷台から洗車用のブラシと虫取り網を取り出し、バシャバシャと瀬に入った。

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「 ヒラタがいいよ」とエサ採りを買ってでてくれた保坂さん

 

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採取には洗車ブラシと網を使う

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流れに入って水通しのよい岩の側面を撫でるとあっという間に充分なエサが採れた

 

水流の強い大石の脇に虫取り網を構え、右手に洗車ブラシを持って、上流から下流へ石の表面を数回撫でる。

それから虫取り網を3回ほど軽く振り、遠心力を使ってまとめたヒラタを1ヵ所に集めると、網の外側からブラシを添え、私のエサ箱にボソッと入れてくれた。

「ヒラタは上流に立つと逃げてしまうから、下流側から採取するのがコツだよ」。

さらりと添えられるそんな一言にも、高い技術を持っていることがうかがえる。その手際のよさに思わず感じ入ってしまった。「エサ取り名人は釣り名人」というのは、昔からよく言われることである。

そのヒラタの刺し方を尋ねると、「ハリの曲がりに沿って2匹付けると回転してしまうのでアマゴが警戒する。ハリ軸から直線に付けると回転ぜず流れを捉えやすい」とまた一言。こうしたアドバイスをあくまで控えめに伝えてくれる。

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午後はしばらく支流の荒川上流部へ。筋をきっちり流すと小ぶりながらきれいなアマゴがテンポよく掛かった

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サイズだけではない可憐な魚との出会いも渓流釣りの楽しみだ

 

飽きない程度に釣れるアマゴは、小型ながら艶のある朱点を持つものばかり。

ヤマメを見慣れている私にとってはとても新鮮だ。

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本流の魚とはまた違った気品

 

景色もよく、まだまだ釣りたい気持ちだったが、夕マヅメは風がやむ期待もあったことから、保坂さんに感謝を伝え、途中で切り上げてまた本流へ向かった。

しかし朝釣った広い川に到着すると、まだ強い風が残っており、とても釣りが楽しめる気配はなかった。午後は無理に本流を釣らず、渓流に入っていて正解だったと再確認する結果になった。

釜無川で本流アマゴ・サツキマスの釣りがよい季節は5月がピーク。ソ上魚だけに行けば必ず釣れるという相手ではないが、この日のように周囲の渓流に足を伸ばせばそれもまた楽しい。今シーズンもぜひまた、素敵な川と釣友たちを訪ねたい。

サツキマスとの出会い

今から25 年ほど前、釜無川に架かる橋を原付バイクで走行していると、小さな堰堤の上から何かを釣っているおじさんを見た。

気になって近くで見ていると、いきなりサオが満月になった。

「コイかナマズでも掛かったか?」と思っていると、おじさんがタモをこちらへ投げ、「すくってくりょ〜」とのこと。

水中の魚は銀色にギラギラしている。取り込んでビックリ。45㎝は超えている。

「こりゃなんで?」と聞くと、「これがホントのマスっちゅ〜だ。

ヤマメ( 山梨ではアマゴのことをヤマメと呼ぶ) が海行って、この時期んなるとけーってくるだ」。

この魚に一発で惚れてしまった私は、車の免許がまだなかったため、10 歳年上の赤池茂さんにお願いして、富士川河口部の波打ち際から始め、毎週のように富士川本流へ通い始めた。

マスが本当に海から来るのか知りたかったのだ。

最初の3 ~ 4 年は全く釣れなかった。

それでも少しずつだが魚の動きが分かり始め、「今年はいつフキノトウが顔を出した?」「庭の雑草が生え始めた日は?」などを記録しておくと、自然界のカレンダーがあることに気付き始めた。

サクラが咲いたらここまで、タケノコが出たらここまで上って来ているということが分かるようになると、釣果も飛躍的に伸び始めた。

やがて気付いたのは、「富士川は心筋梗塞を起こしている」ということだった。

本流には大きな堰が2つあり、山と海、生きものの循環のサイクルを寸断していた。

大きな鉄板に向かってジャンプするサツキマスやアユを見た時には、本当に涙が出た。それをきっかけとして、山梨県本流釣り同好会に加入している釣りクラブの方々に寄付を募り、まずは本流にサツキマスの稚魚を放流し始めた。

地元の新聞、テレビにも取り上げられるようになると(10 年ほど前) 、ユネスコのエコパークに選ばれた南アルプス市が私たちに注目をしてくれ、現在は南アルプス市が予算を付け、放流、ソ上調査、魚の鑑定をしているところである。

ただし、本当の目的は川の心筋梗塞を治し、たくさんのサツキマスやアユを最上流部まで上らせてあげること。

幸い富士川の中流域には巨大なダムはない。叶えることはできる目標だと思っている。

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解説◎丹澤昌幸

 

 

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