車止から2時間ほど、ガレ場の難所を越えて入渓点にたどり着くと、エメラルドグリーンの淵が見える。関東屈指の美渓と名高い大蛇尾川だ。関東や東北の渓を中心に釣り巡る源流釣り同好会、「渓道楽」の高野さんと斉田さんの日帰り源流釣りに同行した。
ガレ場の先の別世界
写真と文◎編集
車止から2時間ほど、ガレ場の難所を越えて入渓点にたどり着くと、エメラルドグリーンの淵が見える。関東屈指の美渓と名高い大蛇尾川だ。関東や東北の渓を中心に釣り巡る源流釣り同好会、「渓道楽」の高野さんと斉田さんの日帰り源流釣りに同行した。
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三点支持は遡行に必須のテクニック
この日の天気予報は曇りのち雨。サオをだせるか心配だったが2人とも「晴れ男」と胸を張る。その言葉どおり、いざ釣り場に向かおうとしたところで日が差し始めた。準備も完了し、作業道を歩き始める。時おり遠くに見える山の稜線はまだ白く、源流シーズンにしてはまだ早いと再認識しながら進む。道は平坦で歩きやすいが、落ち葉が足首を隠すほどに積もっている場所が多く、地面の起伏や岩の有無が見えないので注意が必要だった。3分の1ほど進むと小さいながらガレ場に差し掛かった。道中、何ヵ所かガレているところがあったが、事前に聞いていたとおりで岩もグラつくことなく渡ることができた。しかし、歩いていくと激しく土砂が流れた場所に直面。ここはロープを張ったほうがいいと判断、用意したザイルを渡して伝っていく。「この川も数年したら道が無くなって入れなくなりそうだなぁ」と言う斉田さんの残念そうな声が妙に印象に残った。
作業道は所々崩落していた。三点支持を心がけ慎重に渡っていく
源流域に限らず、渓流釣りでは斜面をへつったり登ったりする機会が出てくる。どういうことに注意して動けばいいのか、身の安全を確保するためにも知っておきたいところだ。
「やっぱり基本は三点支持です。あと、ロープや枝などに掴まって移動することがありますが、それらに体重をかけてはいけません。あくまでバランスを取るために軽く持つ程度にして体重はしっかりと足に乗せて移動してください」
三点支持とは両手両足を合わせた計4点のうち3点で常に体を支えることをいう。自由にしておいた残りの1点で、次の足場や手がかりを探していく方法だ。斜面に限らず岩場を登っていく際も三点支持は基本になる。また、斜面から生えている枝やロープ、岩などは手で引っ張る程度なら大丈夫でも全体重には耐えられない可能性が充分にある。体重をかけている時に抜けてしまったらどうすることもできずに滑り落ちてしまうのでとても危険だ。また、無理だと思ったら諦める勇気も必要だ。安全第一で行動しよう。
ふたりの愛用エサはブドウムシ
時おり現われる難所を乗り越え、2時間ほど歩くと吊り橋が見えた。吊り橋から川を見下ろすとエメラルドグリーンの淵が美しい。4月上旬ということもあり、木々はまだ芽吹いていなかったが季節が進めば美しい緑の世界が広がることだろう。
入渓地点の淵。エメラルドグリーンが美しい
早々と仕掛けを準備し、釣りを始める。盛期ではテンカラ釣りもよくやるそうだが、この日はまだ水面に出てこないと判断し、エサ釣りを選択。2人ともエサはブドウムシで、理由は携行性、保存性に優れているから。ひと頃はミミズを使っていたこともあったが、冷蔵庫で保管できる期間が長いブドウムシにシフトチェンジしたそうだ。
エサはブドウムシ。携行性と保管期間の長さが大きなメリットになる
渓道楽会員の斉田昌男さんが釣り開始からコンスタントに掛ける
水深のある落ち込みや岩の影をねらってエサを流していくと開始早々に先行していた斉田さんにヒット。釣りあげたのは7寸ほどのイワナで腹部のオレンジ色が鮮やかだ。本格的なシーズンはまだまだ先でこの日は苦戦を強いられるかと思っていたが、想定よりも早く魚の姿が見られたことに一安心。肩の荷が降りたのかまたしても斉田さんが釣りあげる。高野さんいわく、斉田さんは渓道楽一の腕前だそうで、今シーズンはもう既に尺イワナを釣っているとのこと。交代して高野さんが先行すると程なくして高野さんにも待望のヒット! シーズンの解禁を飾る1尾は白斑が特徴的な良型イワナだった。
巻き返し+岩影という絶好のポイントをねらう。可能性が高い場所は繰り返しエサを流してアピールする
大蛇尾川のイワナはまだ春浅い4 月上旬もよく引いた。そして何より高活性なことに驚く
この日は流れが岩に当たる場所や巻き返しで反応がよく、何度か流して丁寧に探るのが効果的だった。その後もヒットが続き、3時間という短い間に2人で10尾を釣ったところで雨がポツポツと降ってきた。山の天気は変わりやすいので大事になる前に納竿とし、持参した昼食を食べた。日帰り釣行ではコンビニのパンなどで済ませてしまうそうだが、それでも川で食べれば普段よりも一層美味しく感じられるのが渓流釣りの魅力のひとつ。大蛇尾川は川沿いに道は通っていないので入渓地点まで川を降りていき、朝に通った道を戻ることになる。それでも充分な釣果によるものなのか不思議と足取りは軽く、行きとほとんど変わらない時間で車まで戻ることができた。
この日は車から入渓までの往復で4時間強、雨の影響もあり実釣3時間半というスケジュールだったが、好釣果ということもあり大満足で帰路に着いた。この号が発売される頃には木々も芽吹いてますます緑の美しい川となり、魚の活性も高くなっていくことだろう。
カワゲラの類が飛んでいたが数は少なく、魚が水面を意識するのはまだ先だろう
一段下から上流の岩陰をねらう。大きな岩を隠れ蓑にすれば近づいて正確に投入できる。いわゆる石化けだ
残雪もごくわずかに残っていたが、着々と季節は進んでいる
大蛇尾川
●問合先:那珂川北部漁協(tel.0287・54・0002) ●交通:東北自動車道・西那須野塩原ICを降り、R400を塩原方面へ進む。関谷北交差点を右折し、県道30号を進み蛇尾川を横断、湯宮方面へ向かう。未舗装の林道は荒れているので要注意
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