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編集部2022年4月19日

プロ野球界のレジェンド・和田一浩が絶景の磯でメジナをねらう 静岡県西伊豆/田子 【前編】

メジナ 全国おすすめ釣り場 静岡

元中日ドラゴンズで名球界入りを果たしたスラッガーは刻々と変化する潮の流れを読み、ヒットを生む一手を練る。連打に導く再現性を見出したところで、最大級の満足を得られる。それが和田一浩さんの目指すメジナ釣りである。

生涯打率3割超えのプロ野球界のレジェンドが特打ならぬ特釣!

写真と文◎編集

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 元中日ドラゴンズで名球界入りを果たしたスラッガーは現在、バットを釣り竿に持ち替えて磯に立つことがたまらない幸せと言う。
 刻々と変化する潮の流れを読み、ヒットを生む一手を練る。荒い根をかわして大型魚を取り込んだ後も、なぜ釣れたのか明確な理由が知りたい。
 連打に導く再現性を見出したところで、最大級の満足を得られる。それが和田一浩さんの目指すメジナ釣りである。

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メジナの一本釣り漁が行なわれていた地を和田一浩さんが訪れた

「ノリクシロ」。

 昔の釣り雑誌では度々目にしたこの文字。クシロとは伊豆半島の主に西岸で用いられていたメジナの呼称。ノリとはハバノリやアオサノリなどメジナが好む海藻類の総称。つまり、ノリクシロとは冬季、海藻を飽食した旬のメジナのことであり、西伊豆には昔、メジナの一本釣り漁師がいた。最後までクシロ漁が行なわれていたのが田子地区と言われている。

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紺碧の海の向こうには白富士が鎮座している。この絶景を拝みながら竿を振れるのも田子の魅力だ

「おそらく、クシロ漁がされていたのは40~50年前までだと思います。アミエビを撒いて最初の数時間は竿をださず、メジナの警戒心がなくなって乱舞し始めてからカツオの一本釣り用の竿で、メジナをごぼう抜きにするんです。1日で数百キロのメジナが釣れたと聞いています」

 と話すのは、田子地区で渡船屋を営む岡部宗由船長。20代の頃はマカジキの突きンボ漁に従事していて、40代で地元の田子の海でダイビング船を始め、渡船業は3年前から開業。自らも釣り好きなだけに、釣り人心を理解してくれている船長だ。

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冬の男島にはノリが繁茂する。海藻を飽食したメジナはご覧のようなグラマラスな魚体になる

 3月上旬。早朝の田子漁港で岡部船長と話す大柄な釣り人。今年に入ってからすでに4回目の田子詣だと楽しそうに語るその人の名は、和田一浩。野球人であれば誰もがその名を知っているプロ野球界のレジェンドだ。ベストセラーになった「嫌われた監督」(文藝春秋/鈴木忠平著)の中でも、現役時代に和田さんが左足を骨折しながらも試合に出続けたという衝撃の事実が明らかにされている。中日ドラゴンズの最強時代を築き上げた落合監督は、勢いのある若手選手よりも実績のあるベテラン選手をよく起用した。その落合監督が全幅の信頼を置いていたのが、自分と同じ右の強打者である和田さんだった。それゆえ、和田さんは骨折の痛みに耐えながらも、全試合に出場し続けたのだ。

「今年に入ってからすでに8回寒グレ釣りに行っていますが、思うような釣果をあげられていません。迷いが生じています」

 沖縄と宮崎のプロ野球キャンプ取材を終えた和田さんは、矢も盾もたまらずに今最も注目している田子にやってきた。1月に息子さんを連れてきた際には、46.5cmを愛息に釣らせてあげることができ、自身も43cmを手にした。しかし、その次に一人で挑んだ際には手痛いしっぺ返しを食らった。釣り方を研究すればするほど、迷いが生じてしまい、自分のスタイルを見失ってしまったというのだ。スランプに陥ったスラッガーが特打をするように、和田さんは自分の釣りを取り戻すべく田子を訪れたのだった。

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勝負の世界で生きてきた和田さんが、魚との真剣勝負を楽しむ最高の舞台が磯だという

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福由丸の岡部宗由船長と一緒に。田子の沖磯は渡礁時間が長くたっぷりと釣れるのがうれしい

西伊豆・田子エリアはメジナの巣窟と呼ぶにふさわしい地形

 田子湾に男島、女島という大きな奇岩が浮かんでいる。男島の周りには三本、コブ、大平という離れ磯がある。ウェブサイトANA釣り倶楽部の空撮釣り場ガイドを見れば一目瞭然だが、これら岩礁帯の周囲はカケアガリになっていて、軽自動車ほどの大きさの岩がゴロゴロと沈んでいる。絵に描いたようなメジナの生息地だ。

 

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田子湾の沖に浮かぶ男島(左)と女島

 前日まで三日に渡り西風が吹き荒れたこの日は、沖からのウネリが残っていた。福由丸は舳先を男島に向けて、ゆっくりと慎重に高波の海を進んだ。和田さんが降りたのは男島のカド。実績は高いが根も荒い。良型をヒットさせるには沈み根が生み出すサラシを攻略せねばならず、良型をヒットさせた後は沈み根を交わすやり取りの技量が求められる。ベテラン向きの釣り場といえよう。

 紺碧の海の向こうには白富士が鎮座している。この景色を拝むだけでも来る価値があると心から思える。本命の船着き場は波を被っている。和田さんは海面から5mくらいの高さに釣り座を構えた。

 

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今回の釣り場は男島のカド。一級磯である

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男島の周辺には三本、コブ、大平という離れ磯がある

 ミチイトはPEの0.6号。その先にショックリーダーとしてナイロン2号を5m。多少の風なら気にならない仕掛けだが、この高さだと風でミチイトがふける。躊躇はしない。和田さんは仕掛けを交換。ノーシンカーから一転、2号ハリスに5Bのガン玉を打ち、仕掛けを安定させる方法を選んだ。その甲斐あって仕掛けは馴染むようになった。しかし食わない。付けエサだけ取られる。寄せエサの煙幕の中に無数のスズメダイとタカベ。これがエサ取りだろう。足もとのサラシ付近にはメジナの魚影は全く見えない。

 水温15.4℃。前回来た2週間前より1.5℃低い。小魚は沖の深場で越冬状態になってもおかしくない低水温なのになぜ、タカベが? 高水温を好むタカベがいるのに、なぜメジナの姿が見えない? 手前はエサがすぐに取られる。沖の深場を流すとエサは残る。仕掛けが重すぎるのか? 「迷い」というレベルではなく、皆目見当も付かないと言ったほうがいいくらい、海況は厳寒期のセオリーとはかけ離れていた。

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水温は15℃台。にもかかわらず高水温を好むタカベがエサ取りという訳の分からない状況に和田さんは困惑する

後編「バッティングも釣りも再現性が重要」へ続く……

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