ヘビダンを使うときにまず考えるべきなのは「食わせどころ」の決定
編集部=写真・文、もりなをこ=イラスト
利根川で開催されるTBCトーナメントで活躍する沖田護先生は、近年では2010、2011、2012、2014、2015年にAOYを獲得するなど驚異の強さを見せる超実力派アングラー。その沖田先生が得意とするのがヘビーダウンショットリグ、通称ヘビダンだ。
「ヘビダンは攻めの釣り。”食べてください”ではなく”寄ってこい!”の精神で」という沖田先生からこの釣りのA to Zを教えてもらおう。
編集部員がエキスパートに入門し、座学と実践で免許皆伝を目指す 『Basser』の人気連載をピックアップ!
※この記事はBasser2012年7月号に掲載されたものを再編集しています
講師=沖田護(おきた・まもる)
1971年生まれ。TBCトーナメントで2010年から2015年までの6年間に5回AOYを獲得するなどの実績をもつ超実力派アングラー。一方、Basserにて連載されていた「オギタ式。」のように日ごろからバスに限らず海の魚もバンバンねらいに行くという顔ももつ。
生徒=ヤマガタ(Y)
太軸マスバリを用いたワッキー・ヘビダンではたま~に釣っている。撃つ釣り、ロッドワークでルアーを操作する釣りが好きなので、今回の道場は興味津々。「なぜヘビダンなのかを教わりたいです(キリッ!)」
生徒=ササキ(S)
スピニングタックルでダウンショットリグを使うのは好きだが、ちょっとシンカーが重くなってタックルがベイトになると強い拒絶反応を示す。「”ヘビー”と聞いただけで釣れる気がしません(涙)」
ヘビダンとは……ヘビーダウンショットリグの略。スピニングタックルと比較してベイトタックルで扱うダウンショットリグをヘビダンと呼ぶことが多い。ソフトベイトをボトムから浮かせた状態で操作しやすいというダウンショットリグのメリットはそのままに、太めのラインを合わせて障害物周りをねらいやすい。
1971年生まれ。TBCトーナメントで2010年から2015年までの6年間に5回AOYを獲得するなどの実績をもつ超実力派アングラー。一方、Basserにて連載されていた「オギタ式。」のように日ごろからバスに限らず海の魚もバンバンねらいに行くという顔ももつ。
生徒=ヤマガタ(Y)
太軸マスバリを用いたワッキー・ヘビダンではたま~に釣っている。撃つ釣り、ロッドワークでルアーを操作する釣りが好きなので、今回の道場は興味津々。「なぜヘビダンなのかを教わりたいです(キリッ!)」
生徒=ササキ(S)
スピニングタックルでダウンショットリグを使うのは好きだが、ちょっとシンカーが重くなってタックルがベイトになると強い拒絶反応を示す。「”ヘビー”と聞いただけで釣れる気がしません(涙)」
ヘビダンとは……ヘビーダウンショットリグの略。スピニングタックルと比較してベイトタックルで扱うダウンショットリグをヘビダンと呼ぶことが多い。ソフトベイトをボトムから浮かせた状態で操作しやすいというダウンショットリグのメリットはそのままに、太めのラインを合わせて障害物周りをねらいやすい。
避難系バスを探せ!
「ワームを水平姿勢でボトムから浮かせられる」「カバーに絡めても使いやすい」というメリットが活きる状況ならどの季節でも出番があるのがヘビダンだ。今回は取材を行なった5月10日の利根川を例に詳しい使い方を実践で学ぶ。ゴールデンウイーク中の豪雨の影響が残る大河で、YとSのヘビダンに寄ってきてくれるバスはいるのだろうか……。実践篇当日は午後から荒天の予報が出ていたため、3人は朝5時と早めに北総マリンに集合。ササッと準備を済まして川へ出撃した。
S いやぁ~、ちょっと濁っているけど、水位も普通だし、何より利根川は沖田先生の庭だし、今日でヘビーシンカー恐怖症を克服できそうです。
沖 そうしてあげたいけど、今の利根川は相当しょっぱいよ。1週間前は場所によっては河川敷が浸るくらい水位が高かったし、赤茶色の濁流だった。だいぶ回復している(当日の水位は平水+50cm)とはいえ、本流で普通に釣れるとは思えない。
Y でも沖田先生は台風のあととか、キツい状況のトーナメントで勝ちまくっている印象があるんですが……。
沖 もちろん今日もがんばるよ! 本命は避難系のバスを探す釣り。本流の影響を受けにくいワンドや支流をチェックしてみよう。
北総マリンから一気に下り横利根川との合流部のワンドに入る。ここは入り口が下流を向いているワンド(いわゆる逆ワンド)で、本流の水がダイレクトには入りにくい典型的なバスの避難場所だ。表水温は16.5℃前後。
Y 奥に入るにつれて水が澄んできたような……。
沖 いい感じだね。さぁ、今日は午後から雷雨強風! 午前中に勝負をかけるよ!
最優先事項は「食わせどころ」の決定
最初に入ったのは、アシが生えたストレッチ。アシ原の奥行きは50cmくらいで、そのちょい沖にはゴロタが散在している。S さっそく撃ちまーす! あのアシの凹み、溜まったゴミでシェードができてて釣れそう!
沖 ちょっと待ったぁ! 座学の問3を思い出してよササキ君!
S はっ! ツンツンしてデレデレさせなきゃ!
沖 そう。ヘビダンの釣りでは何よりも先に「食わせどころ」を決める。やみくもにカバーの奥に入れるんじゃなくて、バスのフィーディングスポットをイメージして、そこをヘビダンで撃って「寄ってきなさい」と止めたりシェイクしたりする。たとえバスがカバーの中でも、外で誘っておびき出せばいいという考え方。今日の利根川では、水温から察するに、1番釣りやすいのはちょい沖でフラフラしているメスのプリスポーナー。産卵前ということでまだエサを食う気があるだろうしコンディションもいい。ゴロタにいるエビを食べてるんじゃないかなぁ~と想像してみる。
横利根川接続部の逆ワンドでド派手なブッシュを発見。ボートポジションに注目。かなり遠いことがわかる。「ブッシュのど真ん中を撃つのはテキサスリグの担当。ヘビダンは外側に落とし、中にいるバスを引っ張って食わせる。中で掛けるよりランディング成功率が高いよ」と沖田先生
Y なるほど。外で食わせたほうがランディング成功率も高いですもんね。つまりはアシ沖のゴロタを撃つべし! ですね。
沖 イエス。今日はアシ沖50cmを基準にすればいいと思う。そうすればフラフラ系も拾えるし、アシ際についているバスも出てきてくれる距離だから。ちなみにこれが夏だと、フラフラしているバスは少ないと想像して、もう少しアシ際寄りに「食わせどころ」を設定したりする。いずれにせよ、カバーの奥はテキサスリグの担当エリアだよね。
S 深い……。ちなみに沖田先生、杭を撃つときはどうすれば?
沖 イラストAの(a)をみて。バスは杭のシェードについているとイマジンすると、頭上にドスンとヘビダンを落とすとツンツンさせちゃうかもしれない。ということで杭の50cm先にリグを着底させて、ズル引いてシェードの中で止めたり誘ったりする。今説明した撃ち方は、ほかのカバーにも応用できるヘビダンの基本だから覚えておこう。
Y でも利根川みたいに流れがある場所だとうまくいかなさそう。
沖 そのときはこんな方法もある(イラストA-b)。リグをドリフトさせる過程で杭にラインを引っ掛け、杭の根もとで「点」で誘うとか、さらに流れを利用して、リーダーの長さ分、ソフトベイトを杭に寄せたり離したりを繰り返すとか。
沖田先生のお手本フィッシュ! アシ沖50cmのゴロタで、シンカー着底後にソフトベイトをフォールさせると食ってきた。ラインが走ったという
沖田先生が「オッス」と手を掲げているのはラインを掴むため。抜き上げたバスがデッキに着かないための動作。ジャイアンはバスに優しい
ファーストフィッシュは40cmクラス。5gシンカー+ボウワーム6inで掛けた。「ヒレがあまりキズついていないってことはプリだね。あと身体が丸っぽいからメスだと思う」と沖田先生。Sは「ねらいどおりの魚ですね!」と期待を膨らませた
「線」ではなく「点」を意識
Y 沖田先生、「食わせどころ」を決めるってことは完全に「点」の釣りを展開するということですか?
沖 そう。たとえば杭を撃つときはこんな感じ。
①キャスト
(ラインを緩める)
②シンカーが着底
(引き続きラインを緩める)
③ソフトベイトが着底
④誘い※ステイやシェイク、ボトムバンプなど
⑤回収
⑥次の杭を撃つ
という流れでOK。広い範囲にゴロタがまんべんなく入っているような場所では、イラストBのように「食わせどころを移動させる」イメージ。ズル引きもするけど、それは食わせるためというより、次の食わせどころを探す意味合いが強い。
Y なるほど……。ダウンショットリグってスローな釣りのイメージですが、沖田先生流だと展開が早いですね。
沖 ヘビダンは「攻めの釣り」って言ったのはそういうこと。
S 動作をイチから教えてもらっていいですか?
沖 まずキャスト。んで、着水したらラインスラックを作ることを心がける。ラインが張ってるとカーブフォールになっちゃうからね。ピッチングやキャスティングのフィニッシュで、ティップのポジションを高く保つといいよ。そうすれば、リグの着水後にロッドを倒すことでラインスラックを作ることができるからね。深いスポットを撃つ場合はその動作だけじゃラインが張っちゃうから、そんなときは手でラインを送ってあげる。
S シンカーが着底したらラインを張ってOKですか?
沖 まだまだ! シンカーが着底したらラインを緩めたまま、ソフトベイトが着底するまで待つ。その秒数はリーダーの長さとソフトベイトの種類で変わってくる。投げる前に足もとでフォールスピードをチェックしておけばわかりやすい。ここでラインが張っているとソフトベイトは水平にフォールするんじゃなくて、ダランと垂れ下がるだけ(下のカコミ参照)。経験上、バスは圧倒的に水平姿勢に反応がいいから気をつけて。
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ラインを緩めるとワームは水平姿勢でフォールする。こっちの方がバイトは圧倒的に多いと沖田先生
ラインを緩めるとワームは水平姿勢でフォールする。こっちの方がバイトは圧倒的に多いと沖田先生
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シンカー着底後、ラインを張るとワームは垂れ下がるのみ
シンカー着底後、ラインを張るとワームは垂れ下がるのみ
S 沖田先生の釣りを見る限り、ラインは「張らず緩めず」とかいうレベルじゃなくて完全に緩んでますね。水上のラインが半円になっています。アタリとれるんですか?
沖 ラインは緩んでいても、意外とアタリは手もとまで伝わってくるよ。それに、ラインをきちんと見ていればラインにもほぼ必ずバイトが出るよ。
Y なるほど。マーカー入りラインのBMSのメリットが活きるわけですね。
沖 うん。ここまで説明した「シンカー着底→ソフトベイトがフォール、着底」のタイミングはヘビダンの最大のバイトチャンス。このあとの誘いはバリエーションがある。
S ちなみに誘いはシェイクでOKですか? ダウンショットといえばシェイクですし。
沖 試してみる価値はあるけど、今日はダメな気がするな。スポーニング絡みのシーズンだし、何より急激な変化のあとの避難系の魚をねらうわけだし、バスの活性が高いとは思えない。こんなときは放置気味の釣りが効くんじゃないかな。ソフトベイトが着底したらそのまま待ってみる。
S う、出た……。苦手な放置プレイ。ほかにはどんな誘いのバリエーションがあるんですか?
沖 ソフトベイトが着底したあと軽くラインを張ると、ボトムに着いたソフトベイトが浮上するよね? そこから1点シェイク、ショートなズル引きやボトムバンプ、ハングオフなどのバリエーションがある。あと流れがあるときによくやるのは、一点でラインを張ったり緩めたりする誘い(イラストC)。春は放置が効くことが多いけど、ほかの時期はいろいろ試したうえで反応を探ったほうがいい。まぁ、どの場合も「点で誘う」っていうところは揺るがないんだけどね。
沖田護先生のスモラバ克服歴も掲載。「正直、今でも、試合とその練習以外では、ボートに積むこともしない」という沖田先生が「このルアーじゃなきゃ」とスモラバを投入するシチュエーションとは?
荻野貴生さん&沖田護さんコンビが映像でも活躍
ダウンショットリグを得意とする
ふたりのアングラーが使用法を徹底解説!
2016/10/06