実践編の舞台は5月8日の利根川。 代掻きで水の悪い状況もスモールクランクなら大丈夫!
美津男先生のお手本フィッシュは40㎝オーバー。泥っぽいボトムにコンタクトした際、フ~ッと浮かせると次の巻き始めで食ってきたという
代掻きで水の悪い状況もスモールクランクなら大丈夫!
編集部=写真・文、 もりなをこ=イラスト
実践編の舞台は5月8日の利根川。「ハイシーズンの利根川で腹を括って スモールクランクを巻けばデコは100%ない」 そう力強く断言する美津男先生。
でも、代掻きで水質最悪ですけど……。
ホントに大丈夫!?
編集部員がエキスパートに入門し、座学と実践で免許皆伝を目指す 『Basser』の人気連載をピックアップ!
※この記事はBasser2013年7月号に掲載されたものを再編集しています
講師=鈴木美津男(すずき・みつお)
鈴木美津男先生のfacebook
1959年11月29日生まれ。東京都出身、茨城県在住。TBCでクラシック優勝4回、AOY獲得1回、レギュラー戦優勝多数の戦績を残すベテランアングラーで、“利根川親父”の異名をもつ。ハードベイトオンリーのバストーナメント「H-1グランプリ」の発起人でもある。もちろん自身もハードベイト使いで、2012年の鋼派とTBCクラシックをスモールクランク・クラッチDRで制した。本職は和菓子職人。茨城県取手市で伊勢屋を営む。
生徒=ヤマガタ
山形県出身。現Basser編集長。かつては巻きモノのバラシ癖が直らず、ハリが小さいからバレやすそうという理由でスモールクランクに苦手意識をもっていた。しかし、この取材でその威力を実感したため、スモールクランクにも対応するBasser30周年記念モデルのロッドを現在鋭意制作中。
生徒=ササキ
2012年の「H-1グランプリ」で年間優勝の幸運に恵まれる。スモールクランクは、「かわいいし、小さいバスもたくさん釣れるから」という理由で大好き。この道場以来、「ヤバい、デコりそう」というときには自然とクラッチDRに手が伸びてしまう身体になってまったという。
スモールクランクベイトとは……丸みを帯びた形状が特徴のプラグ、クランクベイトのうちボディーサイズが小さいもの。口を使わせやすい反面、アピールは弱いため、バスの居場所が絞り込めている場合など狭い範囲をねらうのが効果的
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1959年11月29日生まれ。東京都出身、茨城県在住。TBCでクラシック優勝4回、AOY獲得1回、レギュラー戦優勝多数の戦績を残すベテランアングラーで、“利根川親父”の異名をもつ。ハードベイトオンリーのバストーナメント「H-1グランプリ」の発起人でもある。もちろん自身もハードベイト使いで、2012年の鋼派とTBCクラシックをスモールクランク・クラッチDRで制した。本職は和菓子職人。茨城県取手市で伊勢屋を営む。
生徒=ヤマガタ
山形県出身。現Basser編集長。かつては巻きモノのバラシ癖が直らず、ハリが小さいからバレやすそうという理由でスモールクランクに苦手意識をもっていた。しかし、この取材でその威力を実感したため、スモールクランクにも対応するBasser30周年記念モデルのロッドを現在鋭意制作中。
生徒=ササキ
2012年の「H-1グランプリ」で年間優勝の幸運に恵まれる。スモールクランクは、「かわいいし、小さいバスもたくさん釣れるから」という理由で大好き。この道場以来、「ヤバい、デコりそう」というときには自然とクラッチDRに手が伸びてしまう身体になってまったという。
スモールクランクベイトとは……丸みを帯びた形状が特徴のプラグ、クランクベイトのうちボディーサイズが小さいもの。口を使わせやすい反面、アピールは弱いため、バスの居場所が絞り込めている場合など狭い範囲をねらうのが効果的
代掻きという絶好の条件
5月8日、3人は北総マリンから利根川へ出撃。水温は18〜20℃(エリアによって異なる)。鈴木 今はプリ〜アフターのさまざまな段階のバスが混在する状況だと予想できる。とくに産卵直前、真っ只中の個体が多くて、口を使わせるのはなかなか難しいんじゃないかな。何より嬉しいのは代掻き水(ゴールデンウイーク前後に田んぼから排出される水。水路を伝って代掻き水が入ると、水が白濁し基本的には釣れなくなるとされる)だね。
S 嬉しい!? てっきり美津男先生はSだと思ってたんですが。まさかドMだとは……。
鈴木 違うよ。「スモールクランク道場」にはうってつけの状況だってこと。座学篇で、「スモールクランクは急な状況変化時に強い」って教えたでしょ? 今の状況はまさにそれに当てはまる。代掻き水が入っているからバンバン釣れます! ってことじゃなくて、代掻きシーズンだからこそスモールクランクの強みを実感してもらえるはず。
Y なるほど。でも、状況が悪すぎてデコっちゃったら元も子もないと思うんですが……。
鈴木 大丈夫。どんな状況であれ、ハイシーズンの利根川で腹を括ってスモールクランクを1日中巻き倒せばデコは100%ない。グッドコンディションなら小バスも含めて数が釣れるだろうし、厳しいときでも、広範囲を探れるからこそどこかで体力がある個体と遭遇できるはず。ただし「巻き続ける」ってことが大事だよ。ライトリグとかに浮気しちゃうと釣りが遅くなって遭遇のチャンスを失ってしまうかもしれない。
S ハイ! 信じて巻き倒します!
根掛かり回収器は必携。美津男先生は棒タイプを愛用。取材時のロストは3人でほぼゼロだった
●河川でのクランキング時のボートの流し方とキャストの方向
美津男先生が河川でクランクを巻くときは、まずはエレキを踏みながら上流方向へ流して(①)そのストレッチをザッとチェック。有望だと判断したら、Uターンし、エレキを踏まずボートを流れに任せる(②)。ビッグフィッシュがバイトしてくるのはほとんどが②の場合だという。その理由はふたつ。ひとつはエレキを踏まないことによるプレッシャーの軽減。もうひとつは、キャストが下流方向、つまり、クランクが泳ぐコースが下流→上流になるから。本物の小魚と同じコースを泳がせられるためビッグフィッシュを騙しやすいと考えている
上流から下流へ流すときは極力エレキを踏まない。経験上、ボートを流れに任せたほうがビッグバスが獲れる確率が高いという
本流を軽くチェックしたあと美津男号が入ったのは支流の根木名川。チョコレート護岸が延々続くプアな流入河川だが、バスやベイトフィッシュの個体数は非常に多い。美津男先生がTBCクラシックをクラッチDRで勝ったときのウイニングエリアでもある。
Y 意外です……。代掻き水が入っているから支流はパスで、水量が多くて影響を受けにくそうな本流勝負になるかと思っていました。
鈴木 代掻きが入り始めた直後ならその考え方でOKなんだけど、すでに1週間以上経っているから、本流まで悪い水が行き届いちゃってる感じがする。逆に、常にカレントがある支流は代掻き水が抜け始めてるかもしれないと思ってね。
S 下流からダダ流しする感じでしょうか?
鈴木 根木名川に入った時点で充分エリアは絞れているからそれでもいいんだけど、さらにもう一段階絞り込んだほうがスモールクランクの特性を理解してもらえると思う。考えるのは、根木名川下流にある機場前。ワンド状になっていて、根木名川の水からも、本流の水からもブロックされた地形だからバスが入ってきているはず。スポーニングエリアになるはずだし。
スモールクランクはフルサイズのクランクと比べ繊細なアイチューンが必要。美津男先生はペンチではなくアイチューナーを使用していた。こっちのほうが細かい調節が行ないやすいという
根木名川最下流にある水門をくぐって本命場へ進入すると、そこには直径50mほどのプールがあった。水深はどこも1m前後。
鈴木 ここは2012年のTBC第2戦のウイニングエリア(※優勝は沖田護さん)になってるよ。
Y それを聞くとヤル気が出ますが、こんな小場所でクランキングをする気にはなりません……。せいぜい10投で全コース通せちゃいそうな気がします。ヤマセンコーのノーシンカーリグ投げたい……。
S レッグワームリグ投げたい……。
鈴木 そう思うでしょ? けれど、スモールクランクをしつこく通せば、案外、ポン、ポン、ポン……と複数尾抜けちゃうもんだよ。
S ライトリグでもイイのでは?
鈴木 経験上だけど、ライトリグだと小バスが先に食ってきちゃう可能性がスモールクランクの場合よりも高い。あと、仮にバスがいなかった場合、探るのに時間が掛かりすぎて次の展開に移れないのが痛いかな……。もちろん、クランクで何尾か釣ったあとにローテーションするのはアリだけどね。
Y とか言ってるといきなりキましたあッ!!
朝イチ、根木名川にあるワンド状の地形でヤマガタのリストラップ4にいきなりのヒット!
疑問を垂れ流しながらも我先でリストラップ4を巻いていたYにいきなりのヒット。しかも船べりまで寄ってきたのはあわや50㎝アップというナイスサイズだ!
Y しゃ〜ッ!! ササキィ〜、アミを持て〜〜ぃ!
Y ああ〜〜〜!!
鈴木 今のヤマガタ君のアワセは典型的なバラシパターンだね。バイトを察知した瞬間に、カバー撃ちのアワセみたいにバシッ! とロッドを煽っちゃってるでしょ? それがバラシに繋がってる。
Y ナゼでしょうか?
鈴木 バスがクランクをパクッとしたときにロッドをバシッ!と鋭く煽ると、その瞬間にクランクの水中姿勢が崩れてしまう。横倒しになったり、宙返り状態になったり。で、最悪の場合、バスの口からフックが抜ける方向へクランクを引っ張っちゃう結果になってしまう。
鈴木 それを防ぐには、バイトがあったらそのまま巻き続けて、ロッドにバスの重みが乗ったらそのまま巻きつつロッドでもフッキングを入れればOK。バスが反転する(ロッドに重みが乗る)のを待つことでフッキングが成功しやすくなる。
S って先輩、田辺先生のスピナーベイト道場でも同じことを教えてもらってましたよね?
Y 俺だってずっと努力してきたさ……。でも、カバーバカの性なんだ……。ほっといてくれ(涙)。
鈴木 その気持ちはわかるよ。そういうときは道具に頼ればいい。たとえばグラスロッドにしてあえて感度を落としてみるとか。バイトに気付くのが遅れるから、必然的にバスが反転する間を作ることができる。
……と、ここで傷心のYに追い打ちをかけるように鈴木先生とSに連続ヒット&ランディング成功! どちらも40㎝クラスのいいバスだ。 Yのバラシから15分後、SがクラッチDRで40㎝クラスをキャッチ! 「クラッチDR、スモールクランクなのに手もとにくるブルブル感が強くて巻いてて楽しいです! ゴミ拾わないし、根掛かり少ないし。スモールクランクのイメージが変わりました。ペラペラ」とご満悦
Y たまらなく悔しいですが、スモールクランクのスゴさがよくわかりました。鈴木先生の言うとおり、アングラーがバスの動きさえ追えていれば、こうしてナイスサイズが連発するんですね!
鈴木 そうなんです。闇雲に巻いても釣れるルアーではあるんだけど、エリアを絞って、正解ならこうなる。
S 「小場所にクランクを何投もしても仕方ない」っていう先入観がありましたが、この1尾でそれも捨てられました。この2尾をキャッチするまでに、3人で40投はしてますもんね。僕の1尾も、同じコースへの5投目で食ってきました。
美津男先生も40㎝クラスをゲット! 根木名川ではただ巻き+コンタクト時のポーズがメインの使い方となった
このあとは根木名川本流に戻って上流に向かって流し続ける。ボートポジションは岸から15〜20mで、ボート直下の水深は1〜2m、岸際は数10㎝。岸際ギリギリにクランクを投げ引いてくる釣りだ。Sがショットで1尾追加し、そして教えの甲斐あってYがクラッチDRでキャッチに成功。どちらも40㎝クラスで、岸とボートの中間地点で食ってきた。
根木名川本流でSが巻くショットにヒット
岸とボートの中間で食ってきたことから、バスはちょい沖の沈み物の上で浮いていたと考えられる
鈴木 いいね! 岸際でエビがピチピチしているわりにはバスのボイルがそんなにないから、おそらくナイスサイズのバスはちょい沖のオダや沈み物の上でヤル気なくサスペンドしていると推測される。水は決してよくないし、フルサイズのクランクだとバスが引いちゃう状況だよ。逆にここでソフトベイトを投げてたら……。
S バスがつきそうな沈み物を見つけるだけでひと苦労で、キーッ! となるでしょうね。
根木名川のショアライン。この光景が延々と続く。そこそこ長く、しかも変化が乏しいストレッチなので、ソフトベイトの釣りではやり切れない
鈴木 うん。結果的にバスに辿り着く確率は落ちるんじゃないかな。ただ、2012年のオールスタークラシックでの小森(嗣彦)君みたいに、綿密なプラであらかじめ複数の沈み物を見つけられていれば話は別。ライトリグでラン&ガンするスタイルがハマる可能性があるよね。
Y でも僕らみたいなサンデーアングラーはそうもいかないことが多いっス。
鈴木 僕も和菓子屋の仕事があるから、なかなかTBCの前日プラに行けないんだよね〜(涙)。そういう面でもスモールクランクは嬉しい存在だよね。
根木名川本流にて。クラッチDRでYが長いトンネルから抜けた! これも40㎝クラス。つまりは美津男先生のエリア選択がハマっている証拠。「クラッチDRってたまに千鳥るし、なんか小さいウイグルワートみたいで巻いてて飽きません。ペラペラ」とご満悦