感度重視のアジングはエステルラインが主流。しかし、PE やフロロカーボン、ナイロンが効果的な状況もある。ラインの特徴を活かした使い分けでアジングを快適に楽しもう。
ジグ単=エステルラインで思考停止していませんか?
写真と文◎編集部
房総半島をホームとする渡邉長士さん。アジングからヒラマサまで幅広くソルトルアーを楽しむエキスパート
一般的に使われているエステルにも苦手な状況がある
アジング、特にジグ単の釣りは1g前後の軽量リグを中心に使うということもあり、ラインも細く繊細な釣りだ。エステルラインの登場によってアジング特有の小さなアタリが取りやすくなり、多くの人がジグ単を楽しめるようになったと言えるだろう。しかし、元々カワハギ釣りの枝スに使われるほど張りのあるエステル。アジング用はかなり細いとはいえ他のラインと比べれば硬く、ライントラブルも起こりやすかった。今では初心者でも扱いやすい軟らかめのエステルラインも登場し、アジングファンのほとんどがエステルラインを使っているはずだ。では、アジング、特にジグ単の釣りにはエステル以外の選択肢は考えられないのだろうか。
「決してそんなことはありません。エステルをメインで使うのは間違いありませんが、エステルでは難しい状況もあります。各ラインの特徴を理解してぜひ使い分けてほしいです」
そう言うのは房総半島をホームとする渡邉長士さん。ジグ単の釣りでもエステル、フロロカーボン、ナイロン、PEを状況に応じて使い分けているエキスパートだ。
「使い分けの前に伝えておきたいのが、エステルは強度が低かったりトラブルも多くクセがあるということです。扱える中・上級者には高感度でいいラインですが、釣り未経験の方にはつらいと思うんです。初心者は扱いやすいフロロカーボンからスタートすることをおすすめします。感度は悪くないですし、リーダーを結ばなくてもいいというのも理由です」
初心者にありがちなのが扱いに自信がないから太いラインを選んでしまうこと。太いラインほど硬くなり扱いにくくなるので、太さで迷ったらより細いほうを使ったほうがいいと渡邉さんは考えている。
ジグ単でも2タックルを用意
渡邉さんがアジングをする時はタックルを3セット用意することが多いそうだ。その内訳はジグ単用が2セットで残り1セットがキャロ・フロート用。遠投の際に負荷が掛かるキャロ用には強度と感度重視のPE0・4号を使用している。ジグ単用のうち、ひとつは0・15号のPE、もう一方はナイロン、フロロカーボン、エステルといったモノフィラ系のどれかをその時の状況に応じて使い分けていると言う。
PE0.15号に合わせるロッドはシャープで高感度な月下美人EXの66LーS凛、モノフィラ系にはショートでややマイルドな月下美人EXの510ULーS麗を渡邉さんは組み合わせている。遠くをねらうPEと近くを釣るモノフィラ系といったイメージで、リールはモノフィラ系には巻きが軽いパワーギヤ、遠くを探るPEには回収が早いハイギヤを使用している。
各ラインの特性に合う状況がある
●フロロカーボン:強風時、軽いリグを深く沈めたい時初心者にも扱いやすい、直結でも使えるというのは前述の通りだが、フロロカーボンの一番の特徴は高比重であるということ。このラインの重さが活きてくるのが、風が強い時。軽いラインを使うと空中のラインが膨らんでしまってアタリがぼやけてしまうが、フロロだとふくらみを抑えることができる。さらに自重によってラインがたるんでいるように見えても張っている状態になっているため、アタリが分かりやすいそうだ。
「皆さん勘違いをしているんですが、実はフロロカーボン、エステル、ナイロンはどれでも魚が吸い込んだ時には伸びないんです。だからどのラインでもアタリは出るんですよ」
「5mよりも浅いレンジであればエステルでもいいんですが、それ以上だとフロロのほうが沈ませやすく、レンジキープもしやすいです」
フロロカーボンは直結でもOKなのがメリットではあるが、渡邉さんがフロロカーボンを使う時はリーダーを付けている。その理由は直結よりもルアーとの結束部分が長持ちするから。スナップを使わず頻繁にジグヘッドを交換するようであれば直結でも心配ないそうだ。
●エステル:パイロット的存在、オールマイティー
渡邉さんがモノフィラ系の中で一番使うのがエステル。初見の場所などで状況を把握したい時は最初に使うことが多いそうだ。他のラインと比べ、ジグヘッドがどこにあるのか、アクションがしっかり伝達しているかがとても分かりやすい(=操作性がよい)。この操作性のよさが積極的にアクションをかけたり、潮の流れを感じ取っていくジグ単の釣りを面白くしている
ただし、エステルというのは硬い素材ゆえに本来は釣りイトに不向きなライン。その理由のひとつに結束強度の低さがある。ベテランが結べば安定して直線強度の80%台の結束強度を出せるが、慣れていないと強度にムラが多く、低いときには60%台まで落ちてしまうこともあるようだ。また、ラインが硬いことでキャスト時にガイドに当たりながらラインが出ていくため、しなやかなナイロンと比べて飛距離も落ちるとのこと。しかし、こういった難点がありながら余りある操作性のよさがエステルの魅力。使いこなせることができれば感度重視のアジングにピッタリのラインと言えるだろう。とはいえ、水深10mもあるようなディープゾーンを探る際は沈みのよいフロロカーボンを選ぶこともあるそうだ。ちなみに房総エリアは水深が5mくらいの場所ばかりなのでエステルでも充分探りやすいとのこと。
エステルを使用する場合はフロロカーボンのリーダーを付けることで結束強度を補うのが基本だ。
●ナイロン:表層&近距離に特化
「アジングで使っている人はほとんどいないんじゃないですか? でもナイロンの特性が活きるシーンがあるんです」
そのシーンとはズバリ、近距離かつ表層ねらい。常夜灯周りでアジがライズしているような状況でナイロンが効果的になると渡邉さんは言う。
ライズがあるということは水面直下に近い表層にアジがいると考えられる。水面直下を探るならジグヘッドを軽くすることで沈み過ぎないようにするのが基本だろう。しかし、軽くすればするほど飛距離は落ちる。そこで、飛距離の出しやすいナイロンを使うことで、エステルでは届かない場所も射程圏内になる。さらに比重の軽いナイロンであれば表層のレンジキープもしやすく、バイトも弾きにくいと一石三鳥なのだ。ナイロンはアタリが出にくいと思うかもしれないが、1g未満の軽量リグを使った近距離戦であれば明確なアタリが伝わってくるので心配無用だ。比重はナイロンよりも軽いPEならどうかと思うかもしれないが、軽量リグにPEは不向き。1gを下回るような軽さでは途端に飛ばなくなってしまい、伸びないのでバイトを弾きやすい。
「水面直下は5㎝違うだけで反応が変わります。ラインを変えると途端に釣れることを経験してきました。特にプランクトンパターンではリグが水に馴染んでいる感覚が大切です。エステルやPEよりもナイロンだとそういった誘いも簡単にできます」
ただし、ナイロンは吸水による劣化が著しい。渡邉さんは3時間釣行を3〜5回したら交換するようにしているそうだ。特に前回の釣行から間が空いた時は劣化している可能性が高いので要注意。また、根掛かりしてしまうとラインが伸びてロッド操作で簡単に外せないことも多いのでストラクチャーや海藻周りは不向きだ。
●PE:強度と細さで遠距離ねらい
圧倒的な細さと充分な強度を兼ね備えるPEは伸びもほとんどなく感度も高いのが特徴。風に弱いPEはアジングに不向きなイメージを持つ人は多いが、決してそんなことはなく感度重視のアジングにも見合うラインだと渡邉さんは言う
渡邉さんがPEを使う場合は遠距離を探りたい時。遠距離というのは水平方向(=飛距離)だけでなく、垂直方向(=水深)の両方のことで、リールから出るラインの量が20mくらいを境目に、近ければモノフィラ、遠くならPEを使うそうだ。PEは比重が低くリグが沈んでいかないと思うかもしれない。確かに極端に軽いリグやテンションフォールではなかなか沈んでいかないが、渡邉さんが使っている0.15号であれば1.5g以上のリグでラインをフリーにすれば充分スムーズに沈んでいくとのこと。
「現在のアジングは1g前後の軽量リグが主流になっています。確かに、この軽さではPEが張らずにアタリも伝わらないので使いにくいと思います。ただ、2g以上のジグヘッドでもアジは釣れます。そしてその重さであればPEはモノフィラよりも断然使いやすくなるんです。人より重いリグを使えばより遠く、より早く探れますよ」
ラインの特性を理解して状況やリグの重さに応じて使い分けることでより一層アジングの幅が広がるはず。思い当たるシーンがあるならぜひ試してほしい。
※このページは『つり人 2023年6月号』を再編集したものです。
あわせて読みたい
・写真でわかる!アンバサダー1500Cのハイギヤ化方法とパーツ交換の手順
・渓流ミノーの使い分け!水深・流れ・対象魚に合わせた選び方と釣り方のコツ