1日フルに探っても、短時間で遊んでも水面爆発の興奮度の高いバイトが味わえるナマズ釣り。一発の正確なキャストが釣果を決めるシューティングゲームに魅せられた「アングラーズショップマニアックス」代表、駒崎佑典さんの北関東ナマズ探検を追った。
栃木県を潤す鬼怒川、渡良瀬川、那珂川の周辺は本支流から小川や水路に至るまでナマズのパラダイス
ナマズタックルは常備
「ナマズは全国各地に生息して淡水でも汽水でも都会でも田舎でも、どこでも釣れる可能性があります。だから私はどんな釣りに行く時もナマズタックルは車に常備しています。管理釣り場に行く時も、バスを釣りに行く時も、大間にマグロ釣りに行く時も、気になる川があればチェックしたくなるんです」
そう話す駒崎佑典さんと4月下旬に訪れたのは鬼怒川水系。宇都宮IC近くの田園地帯にある里川だ。管理釣り場の釣行帰りに見付けたそうでナマズが濃厚な水辺ばかり。栃木県を潤す鬼怒川、渡良瀬川、那珂川の周辺は本支流から小川や水路に至るまでナマズのパラダイス。栃木県だけでなく北関東一帯の田園地帯に釣り場はある。
「日中のナマズ釣りを一言で表現するならシューティングゲームです。食ってくるのはほとんどが1投目。精度の高いキャストが不可欠です。撃ち損じた場合は釣果が得られる確率が30%くらいに落ちるでしょう。魅力はなんといってもトップで釣れること。バコンと出る水面の捕食を一度でも味わえば癖になります。テンポよく撃ちまくるランガンの釣りなので運動量も多い。」
そんな駒崎さんの愛竿はティップがほどよくしなやかでバットは張りが強めの高反発なパックロッドだ。組み合わせるベイトリールはシマノのDC(デジタルコントロール)ブレーキ搭載のアンタレス。ルアーはリアフックだけがセットされたカップ付きのノイジー系。いずれもフロントフックは外してブレードを装着し、リアフックもカスタムしている。
左はカップ&ボディーにソフト素材を採用して着水音が甘く軟らかな波動で本気食いを誘発させるジャッカル「ナジーバグ」。特にスレたナマズの多いシチュエーションで威力を発揮。右のスミス「キャタピー」はナマズルアーの定番
デイのナマズは物陰から誘い出す。葦などにラインを引っ掛け、ルアーを吊り下げるようにしてチョンチョン動かしアピールするのも効果的である
ミスバイト&フックアウトはつきもの
この日は駒崎さんの釣友の金子修さんも同行。あらゆる釣行をともにする気心知れた仲で金子さんもナマズ愛が非常に強い。ふたりが釣り場選びで注視していたのは次の3つの要素である。
●ベイトとなる生き物の有無
ナマズの捕食対象がいるかどうかは釣り場選びの大前提といえる。ナマズは肉食魚であり小魚はもちろんカエルも大好物である。つまり多様な生き物が生息する里川に多い。
●水位の状況
水位は雨量や取水の影響で変化する。マヅメ時や夜はくるぶしくらいの浅場にもエサを求めて出てくるが警戒心の高い日中は膝上以上の水深があることが理想である。
●濁り(代掻き)の有無
「濁り」は今釣行のポイント選択で駒崎さんが最も注視していた。代掻きの濁りはナマズ釣りの難敵という。なぜなら農薬の影響で魚の活性が極度に低下するそうだ。なお同じ川でも取水によって水位や水質の良し悪しは変わる。
日中にナマズがオープンエリアに出てくることは稀だ。物陰に潜んでいることから葦周りやテトラ帯、護岸の隙間といった障害物をタイトに撃つ必要がある。1ヵ所で粘ることはほとんどない。また流れの強い場所にナマズは少ない。多くの場合、流れがトロリと緩んでくる瀬落ちのヒラキに潜んでいる。
「デイは障害物から30cmも離れると食ってくれません。草や障害物にラインを絡めてルアーを吊るし、チョンチョンと動かすのも有効です」
探っているうちに膝ほどの水位の場所で回遊する2尾のナマズを発見した。観察しているとその魚は浮き草の下に入った。駒崎さんは着水音で驚かせないようにジャッカル「ナジーバグ」に替えて浮き草の上流側に投げる。リトリーブして草に到達したところでチョンチョンと動かして誘うが反応は得られない。すると1尾が草の下から出て対岸に向かって動いた。その動きを追い、魚が対岸の草陰に隠れたところでキャストをすれば、着水と同時にバコンと水面が爆発。フックに一瞬乗ったものの外れてしまう。
ナマズは捕食が下手である。この後も駒崎さんは3尾の魚にミスバイトをくらった。相棒の金子さんも何度かミスバイトがあり「ああ~!」と落胆の声を漏らして天を仰いだ
夕マヅメの歓喜
17時を回った。車移動もしたが徒歩で5kmは動いただろう。そのうち通称「玉ねぎ袋」と言われる巾着状の蛇篭帯が現われた。一瞬でもハリが触れるとルアーが回収不可能な危険な障害物である。その側に数尾のナマズがウロウロしている。
「ここだ!」
駒崎さんは玉ねぎ袋の際をタイトに撃つ。ルアーを少し引いたところで水面を破ってナマズが食った。
しかし、足場が高いのと手前にボサがあることからランディングが難しい。オープンエリアになんとか誘導しようと試みたが、あえなくフックアウトしてしまう。駒崎さんは下唇を噛んだ。
「いったん釣り場を休めましょう」
と下流のウイード地帯に足を運んだ。ダウンにルアーを投げ、ウイードをなぞるようにしてトレースすると藻の中にいたナマズがチェイスしてきた。それも今日イチで長い距離を追ってくる。が、食いつかずにプイと反転。そこで駒崎さんはルアーを止めた。一間を置いてチョンと軽くトゥイッチ。その瞬間、ナマズは猛然とルアーを襲い水面が爆発した。
テンションが抜けないようにサオの曲がりをキープしたまま寄せ、金子さんがランディングをアシスト。苦労した1尾に駒崎さんの目尻が下がった。
「夕マヅメになって深く追ってきましたね。いやあよかった!」
金子さんも負けてられないとばかりに撃つ。玉ねぎ袋の下流に入り直すとド派手なバイトが出る。本気食いでフッキングも決まったが手前にはボサがある。タモ入れをアシストしようとする駒崎さんも苦戦。何度かトライしてようやくタモに入れ込むと、ランディングシャフトがしなる大型だ。土手に引き上げたところで2人はグータッチをして歓喜した。
「65cmあります! 自己レコードを更新しました!」
計測を終えた金子さんの腕は興奮と魚の重さでプルプルと震えていた。
※このページは『つり人 2023年7月号』を再編集したものです。
あわせて読みたい
・写真でわかる!アンバサダー1500Cのハイギヤ化方法とパーツ交換の手順