今から7年前に田古里が確立したアルカリ60メソッド。デイゲーム特化型で、しかもリアクション要素ゼロという特殊性。マニアックなメソッドだからこそ狭きスイートバイトを量産できる!
デイゲーム特化型で、しかもリアクション要素ゼロという特殊性。
マニアックなメソッドだからこそ狭きスイートバイトを量産できる!
解説◎田古里昭彦
パラダイスを目前に絞り出した究極の食わせメソッド
ある低水温期のデイゲーム。目前に見える無数のシーバス水中ボイル。こんなものを見てしまったら、シーバスアングラーでなくても興奮するだろう、という光景。で、シーバスアングラーならソワソワどころでは治らない。もちろん、田古里は高活性であろうシーバスにいろいろ手出しをする……が、何を投入しようがシーバスはバイトしてくれない。これまで、あらゆるベイトパターンをこなしてきているが、もう奥の手がないところまできた。その諦めたルアー回収でまさかのバイト。そう、これは偶然のバイトだった。難攻不落のマイクロベイトパターン……のデイゲームバージョン。ベイトはボラ稚魚のハクなど。
「マイクロパターンってナイトゲームをイメージする方が多いと思うんですけど、僕はデイゲームでやっています。もちろん、釣れるからです。最のまぐれの1尾から何回も通って検証し続けた結果、やっとねらって釣れるようになったパターン。水中ボイルっていってるんですけど……水面下60cmぐらいのところですごい数のシーバスが反転してマイクロベイトを食ってるんです。すごい光景です。それも一気に100尾くらいは広範囲でギラギラと水中で捕食してる。時期的にまだ潮も澄んでいるんで丸見え。ヤバイでしょ」
その光景は水面下40〜60cmという浅いレンジまでシーバスがフラ〜ッと浮上してきて、パクッとマイクロベイトを捕食して反転していくというもの。つまり、ベイトは水面下数10cmに群れているということ。そして、間違いなくシーバスのフィーディングゾーンでありフィーディングタイムが目の前にある、というもの。
ここで田古里は、その環境を観察した。そこは沖堤防で潮通しのいいところの脇にあるヨレだった。シーバスでは一般的なスイートスポットだ。そして、ベイトの動きを見ているとヨレの中で流れに揉まれている様子が伺えた。それをシーバスが捕食しているというシーン。まだ遊泳力の弱いマイクロベイトは、速い流れから逃れ弱い流れやヨレへ溜まる習性がある。そこで田古里は、その流れに揉まれるマイクロベイトをイミテートするべく軽量ジグヘッドリグを流し込んだ。
「言葉にすると……マイクロベイトが流されてきてヨレで流れに揉まれて体勢を立て直しているアクションを演出する。これを『アルカリ60』でやるんです。流れの弱さに合ったウエイトを選んで、張らず緩めずのラインコントロールでレンジキープしながらリグを流し込んでやるんです。それで、やっと食わせました」
このようなシュチュエーションでこのようなメソッドをしかもデイゲームでやるケースはおそらく今までなかっただろう。メバルのナイトゲームでの渋い状況でボトムを攻めるようなテクニカルメソッド。田古里はメバリングもやることから柔軟に対応できたわけだが、この特殊性はただ状況にシンクロさせて流し込むだけではない。
「このメソッドはの最大のキモはダートを入れることです」
デイゲームと聞けばリアクションバイト、ダートというキーワードが思い浮かぶ方も多いだろう。ただ、このケースでのダートというものはリアクションバイトを誘発するという意味よりもベイトの動きをイミテートするほうに重きを置く。
「ダートはヨレに揉まれて体勢を崩したベイトがその体勢を立て直す姿を意味しています。だから、流れに合ったジグヘッドのウエイトを合わせる際も流れに揉まれるウエイトが理想であり鉄則です。ジグヘッドリグがヨレに揉まれて体勢を崩した後に体勢を立て直してからダートを入れます。3、4回はダートを必ず入れてやる。そして、ダートの後はデッドスローで巻く。このメソッドはレンジキープさせることが大事です。だから、ダートも上に跳ね上げるダートではなく、サイドに飛ばすダートでね。そして、レンジキープさせてのリトリーブ。これ大事です!」
高さのある岸壁の釣りでもあるため、常にロッドティップは下げて行っている。サイドにダートする際もリグの移動距離は15〜20cm程度のショートダートに抑えたい。というのも、大きすぎるダートは違和感を与えてしまうためだ。大量のシーバスがマイクロベイトを勢いよく捕食しているケースにも関わらず、ルアーへ対しては口を使わないセンシティブな状況でもある。田古里がメソッドとして確立させるまでにそれなりに時間が掛かるほどのパターン。有効な食わせスポットはかなり狭そうだ。
「ティップをチョンチョンやるだけでいいです。エギングみたいに跳ね上げると食わない。僕も正確にサイドに飛ばせているかどうかはわからないんですけど、常にサイドダートをイメージしてやってはいます。イメージすることはとても大事ですから。できるだけ、ティップとライン角度をつけないようにする。そうすると、サイドに飛びやすいと思います。ひょっとすると、ベイトフィネスでも面白そうって思うかもしれないんですけど、手首でアワせられないんでスピニングのほうをオススメしますね」
ダートの重要性はお伝えできたと思う。だが、このダート時はバイトしてこない。あくまでもダートは誘いだ。「バイトしてくるタイミングは大抵は巻きはじめなんですよ。ダートを入れて、その後、巻きはじめるでしょ。そのタイミングです。デッドスローでレンジキープを意識してリトリーブする。しばらくデッドスローさせたら、もう一回ダートさせてやる。食ってくるとしたら、着水させてダートして最初の巻きはじめ。シーバスも見とるんでしょうね」
このことからもスローで狭い釣りであることがわかる。シーバスが見ているとしたら(バイトしているスポットへ入れるわけだから見られているはず)、シーバスの視野の範囲内ともいえる。先述したが、このメソッドはリアクションバイトを誘発するためのダートではないということ。スロースピードでの攻めで見せてバイトさせる、デイゲームでは類稀なるメソッドといえる。
「このアルカリ60メソッドは、通常のデイゲームのリアクションの釣りとは真逆です。このメソッドを確立するまでは『PB(パワーブレード)』や『IP(アイアンプレート)』とかでフラッシングも利用したリアクションの釣りで釣っていました。でも、それがこの状況では通用しなかった。釣れても1、2尾なんですよ。100尾くらい水中ボイルしまくっているのにですよ。もっと釣れるメソッドがあるはずやって思って、いろいろやって正解が真逆やったわけです。だから、余計に時間がかかりました。まさかですよ……」
見せて食わせる、というこのメソッド。今やデイのビッグベイトではよくあるチェイスからの食わせメソッドのひとつとしても認識されているが、このミニカリメソッドでは、チェイスは禁物だ。
「チェイスさせると見切られるんですよ。バイトに至らない。だから回収してやり直しです」
この特殊でフィネスなメソッドには、やはりそれに合ったタックルがあるほど濃厚に楽しめる
「この釣りはタックルバランスが取れていないと思い通りのことができないと思います。繊細なアルカリ60メソッドには、ソリッドティップのロッドがオススメです。僕もいろいろなロッドでやってみたんです。でも、ロッドが機能しないとアタリすらわからない。この釣りにはソリッドティップが一番向いてますね。そして、軽くてシルキーに巻ける高感度なリール。ラインはPEは使わない。フロロの通しです。そのほうがレンジをキープさせやすいんですよね。そして、ワームは『アルカリ60』。ワームもいろいろなタイプを試しました。シャッドテールはアタらない。ピンテールじゃないとアタリがこない。面白いですよね。かなり偏っています。一般的にハクに合わせるなら、ボラの稚魚なんでバルキーなワームが合いそうじゃないですか。でも、ハクに関しては波動は弱いほうがいいようです」
最初にお伝えしたように基本レンジは浅いが、やはり状況によりベイトのレンジも変化するためレンジを探る必要がある。そう、いつもその浅いレンジでパラダイスというシーンを見られるわけではない。高活性時は別として一般的にデイでのシーバスのレンジは下がっているケースが多いもの。最後にこのパターンのレンジを考察する。
「基本的にデイのシーバスって下がり気味なんで、レンジを探る時はボトムから上へ探っていくじゃないですか。でも、このアルカリ60メソッドは逆です。上のレンジから下げていく。高活性時は食っているレンジが見えるんですけど、その状況が続くわけでもないし、常にそういう状況でもない。レンジが深いこともある。そういう時は例えば、カウント5でチェイスがあったらその上のカウント3を攻めるんです。理由はシーバスって常に自分より上を意識しているんで、シーバスと同じレンジだとチェイスはあってもバイトはもらえないんです。だから、少し上をねらうわけです」
ダートアクションを殺さないためにも田古里はフリーノットにしている。このちょっとしたことが釣果に響いてくる
※このページは『鱒の森 2023年4月号』を再編集したものです。
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