釣りには数多くの道具や仕掛けが存在します。中でも釣りバリは魚との接点となる大変重要な要素です。この記事では、釣りになくてはならない釣りバリについて解説していきます。今回は糸を結ぶ部位である耳(タタキ)、管(アイ)について解説します。
まとめ◎つり人社書籍編集部
この記事は『釣りバリのひみつ』に掲載したものを再編集しています。釣りには数多くの道具や仕掛けが存在します。中でも釣りバリは魚との接点となる大変重要な要素です。この記事では、釣りになくてはならない釣りバリについて解説していきます。今回は糸を結ぶ部位である耳(タタキ)、管(アイ)について解説します。
こちらの記事は 書籍「釣りバリのひみつ」に掲載されています。数万年もの歴史をもち、時代とともに進化してきた釣りバリ。世界を代表する釣りバリメーカー・(株)がまかつの全面協力を得て、その「ひみつ」に迫ります。釣果アップ必至、全ジャンル釣り人必読の書。コチラからチェック↓↓↓
魚に違和感を与えにくい、耳(タタキ)
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日本のエサバリで多く採用されている耳(タタキ)は、欧米で一般的な管付きバリと比較して軽量、コンパクトで魚に与える違和感が少ないのが特徴です。しかし、リーダー(ハリス)を結ぶ際は内掛け結びや外掛け結びなどの慣れないと難しい結び方が必要で、ハリスの締め込みが甘いとすっぽ抜けてしまいます。
そのようなデメリットを解消するために、がまかつではタタキ部分内側にV字の溝を施した「Vヘッド」という結び強度アップとイトズレ防止のシステムを採用しています。
ちなみにタタキは日本の釣りバリに多く見られる形状ですが、実は中国やヨーロッパでもタタキのハリは広く使用されています。袖バリや渓流バリなどは、ヨーロッパでも盛んに使用されているスタンダードなハリです。
海外でタタキのハリが浸透した経緯として、一説には日本製のハリが輸出された際、その優れた性能から人気が出て広まったといわれています。
一般的なタタキ幅
タタキの幅は、ハリ軸の太さに対して約2倍にするのが一般的です。タタキ幅を広げるほどハリスは止まりやすくなりますが、タタキは軸の端を文字どおり叩き伸ばして作るため、広くするほど薄くなり、強度的には弱くなります。そういったことも考慮したうえで約2倍がベストとなります。
ところが、線材の種類によってはカエシやタタキのような加工が難しいものもあります。たとえばハイス鋼のように、金属に穴を空けるドリルの刃の材料となる線材は大変硬質です。
1990年代前半に世界で初めて登場した、がまかつ「G - HARD」はハイス鋼の釣りバリですが、耳が小さくカエシがありませんでした。この素材は非常に硬く、摩耗に強いため夢のハリ素材ともてはやされましたが、カエシや管 が作れないことから一部のハリにしか採用されませんでした。
G-HARD は素材の硬さから耳が小さくカエシのないハリのみが市販された
その後、がまかつでは線材の研究を重ね、別のハイス鋼にたどり着きます。通常の高炭素鋼と同様にカエシや管、標準サイズの耳の加工が可能でありながら摩耗に強く硬質な特性を維持している次世代のハリ、それが新シリーズの「G - HARD V2」です。こちらはほとんどの種類のハリに応用可能なことから、今後いろいな魚種の釣りで「G - HARDV2」のハリ製品が見られるようになりそうです。
このハイス鋼は製造に特殊な機械を必要とするため、いまのところ実用できているのは世界で唯一、がまかつだけということです。
使用するハリスの種類にもよりますが、結んでからすっぽ抜けない限りタタキ幅は小さいほど魚がハリを吸い込む際の抵抗が少なく、違和感を与えにくいといえます。またオキアミや虫エサを刺した際にタタキ部分をエサの内部に隠しやすくなります。
一般的なタタキの角度
タタキは軸に対して外側に角度がつけてある
タタキが軸に対して真っすぐだと、魚が掛かったときにハリスがタタキに擦れて切れやすい
タタキ部分がハリ軸に対して外側に角度が付いているのはハリス切れを防ぐためです。真っ直ぐだと、魚が掛かったときにハリスがタタキに擦れて切れやすくなります。
タタキ、管の例
タタキには、大きく分けて最もポピュラーで多くのハリに採用されている「通常タタキ」(単にタタキと呼ばれることもある)と、太いハリスを使用するハリに採用されることが多い「橦木(しゅもく)」と呼ばれるものがあります。がまかつでは、通常タタキでも「ワイドヘッド」というタタキ幅を約5%広げ、太いハリスに対応できる特殊なタタキも採用しています。また、グレバリは付けエサの違和感をなくすために耳が短い「短耳」仕様となっているハリもあります。これはタタキをオキアミの中に隠しやすくするためのものです。
独特な形の耳(タタキ)
G-HARD 頂(ハリス付き4本イカリ) (拡大写真)
独特なのがアユ友釣りの掛けバリです。3本イカリや4本イカリとして使用するハリには、タタキなしの「ギザ」と呼ばれる加工が施されています。これは根巻き糸のズレ、ハリスの抜け防止のためハリ軸上部に施された、その名のとおりのギザギザ加工です。
広角パワーチラシ(ハリス付き)
チラシ・ヤナギ仕掛け用のハリには「丸耳」と呼ばれるプレス加工が施されています。「丸耳」はハリの外側にハリスを沿わせるチラシ仕掛けに使用するため、通常タタキのような傾斜はなく、ハリスをハリの外側に沿わせるのに適した形状になっています。
太い糸を結ぶことができる、管(アイ)
ルアーフックやフライフックに採用されているアイ(管)はリーダー(ハリス)をその穴に通して結ぶため、タタキと比較して結束部分のすっぽ抜けが起こりにくく、太いリーダーでも結びやすいのが特徴です。またエサ釣りでも大もの用のハリに管が採用されているのは、このためです。その反面、使用する線材量がタタキのハリにくらべ長くなるので、同じ線径、形状のハリでも重く大きくなり、魚がくわえ込んだときに与える違和感は大きくなってしまいます。さらに管にリーダーを直接結んだ場合、ハリとリーダーの角度がぐらつき一定に保てないため、ハリ本来の貫通性能をフルに発揮できないことがあります。
日本のエサバリでも「管付チヌ」など管を採用したハリがあるのは、基本的に外掛け結びなどが苦手なユーザーにも使ってもらえるようにという配慮からですが、フロロカーボンやナイロンのようには結べないワイヤ等を使用するタチウオ釣りなどでは多用されます。
イシダイバリのようにプレス部分に穴を空けたハリもあります。単に「穴」と呼ばれることが多いのですが、これはワイヤやケブラーなど擦れてもなかなか切れないハリスを使用するのを前提で作られています。「クエ(モロコ)」という大もの用のハリの穴は、ケブラーのイト切れを防ぐために穴の両側に面取りを施してあります。