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編集部2019年11月18日

魚の視覚と釣果の関係にせまる:アオリイカの餌木とクロダイの練りエサからわかること

クロダイ-海 アオリイカ 魚種別釣りガイド 知らなきゃ困る超基本

エサやルアーは、魚にハリに食いついてもらうための最も重要な釣り具といえます。新刊『釣りエサ(ルアー・エギ・毛バリ・生エサ)のひみつ』は、最新の情報やデータを元に釣りエサにまつわるヒントを科学的に解説した1冊。

ルアーとエサの「色」を科学する :第3回

解説◎長岡 寛


 エサやルアーは、魚にハリに食いついてもらうための最も重要な釣り具といえます。
 新刊『釣りエサ(ルアー・エギ・毛バリ・生エサ)のひみつ』は、最新の情報やデータを元に釣りエサにまつわるヒントを科学的に解説した1冊。
 解説を担当してくれた長岡寛さんは、釣りエサメーカーのマルキユー㈱で製品開発に携わり、東京海洋大学の公開講座「フィッシング・カレッジ」では講師も務める第一人者です。
 今回は特別に本書の内容の一部を公開します。第2回に引き続き、魚の色覚と釣果の関係を科学的に考察していきます。


◆連載 ルアーとエサの「色」を科学する
第1回:釣りが上手い人ほどエサに気を遣うのはなぜか?
第2回:魚の視覚と釣果の関係にせまる:魚は色を見分けるのか?
第3回:魚の視覚と釣果の関係にせまる:アオリイカの餌木とクロダイの練りエサからわかること
第4回:魚の視覚と釣果の関係にせまる:色の違いよりも明度が重要?



餌木のカラーとアオリイカの関係


 イカを専門に釣るために作られた擬似餌に餌木がある。餌木はアオリイカが触腕と呼ばれる足を伸ばして接触した時、ざらつき感を与えることが重要とされるため、市販品の多くは表面が布で覆われている。さらに、これらの布にはさまざまなカラーが施されている。

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多彩なカラーがある餌木

 カラフルな餌木は見ているだけでも楽しくなってくるが、こんなに多くのカラーをどのように使い分けたらよいだろうか。

 その疑問に対する答えを得たのは、三重大学で開催されたアオリイカシンポジウムだ。当日は徳島県立水産総合技術センター・水産研究所に勤務されているアオリイカの第一人者・上田幸男氏が座長を務めた。上田氏の話によれば、アオリイカには色彩を識別する能力がないということ。その話が出た時、私の後ろの席に座っていたルアーメーカーの関係者からため息が漏れたことを鮮明に記憶している。

 しかし、餌木に着色された色彩には全く意味がないかというと実はそうではない。アオリイカは海産動物の中でもとりわけ視力が発達しており、特に明暗(コントラスト)を識別する能力は人とは比較にならないほど高い。我々人間は餌木を見ると色彩の違いに目がいってしまうが、アオリイカはそれをコントラストの違いとして鋭敏に捉えることができるため、水の色や濁りの度合いによって当たりカラーが異なってくる。この詳細については上田氏の著書『アオリイカの秘密にせまる』(成山堂書店)に記されている。

 さて、先述の奥山文弥氏は東京海洋大学で公開市民講座「フィッシング・カレッジ」を主宰している。サケ科魚類の専門家であるとともに釣り人でもある奥山氏の講義後は、必ずと言っていいほど「ルアーは何色がよく釣れますか」という質問が大変多く出る。この問いに対して奥山氏は、「一番適したカラーは、あなたが一番釣れると思っているカラーですよ」と断言する。ルアーはどんなに精巧に着色しても偽物であり、偽物である以上使う側が自信を持っているかそうでないかが重要だと言うのだ。

 奥山氏は有名なトラウト管理釣り場の顧問もしており、ルアー教室など初心者への指導も数多く行なっている。受講者の中には釣れない理由をルアーの色のせいだという人もいるようだ。そんな時は、あえてそのカラーで釣ってみせるそうだ。

 またある管理釣り場ではこんな実験をした。メーカーで売れ残っているカラーのルアーを、「ここではこのカラーが一番よく釣れます」と参加者に偽って手渡し、釣ってもらった。すると参加者の釣果は普段と変わりがなかったそうだ。

 結局、自信のあるカラーは無意識のうちに使用頻度が高くなる。また釣りをしていて、ここ一番という時には最も自信のあるカラーを使いたくなるのが人情だ。したがって当然の結果として釣果も伴ってくる。この循環が「ヒットカラーはこれだ」という確信になっていくのだ。



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クロダイに有効な練りエサのカラーは?


 クロダイは練りエサでも釣れることをご存じだろうか。実は海釣りでも練りエサは大変効果的なエサの一つだ。かつて練りエサはエサ取りの多い夏場に使うことがよいとされていた。それが年々改良されてきて、冬場でも生鮮エサ(冷凍オキアミ)を凌ぐ釣果を得ることが度々ある。練りエサは生鮮エサと違っていろいろな着色が可能だ。クロダイが好む練りエサはサナギやオキアミのエキスを配合したものだが、これらは強い褐色を呈するため、配合すると練りエサのカラーは地味になってしまう。ところが最近ではアミノ酸を配合することで色彩の制約が少なくなってきた。その理由は、ほとんどのアミノ酸が無色であるためだ。

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 マルキユーの研究室には日々多くの釣り人から、「あの色がよい」「この色がよい」とさまざまな意見が寄せられる。そこで、三重県のクロダイがよく釣れる漁港で、市販の紙粘土にアミノ酸を少量加えて味付けをして、ウキ釣りスタイルで釣果の確認を行なった。購入した紙粘土は鮮やかな色彩に着色されている。赤、黄、緑、紫はそのままの色彩で、黄緑、深緑、茶は色素を加えて色調整を行ない全部で7種類の練りエサを作成した。テストの結果は、色の違いよりも淡い色彩のもの(明度の高いサンプル)にアタリと釣果が多く出た。ただし明度が高いということは目立つことになるから、フグや小サバなどエサ取りの多い季節には逆効果になることも考慮する必要がある。

編集部より
 色が釣果に与える影響よりも明度や明暗による違いのほうが大きい、ということがアオリイカの視力とクロダイの実験から導かれています。これは釣り人にとってはルアーを選んだり、エサを選んだりする際の大きな指針になることでしょう。
 ワカサギ釣りで使われるエサにベニサシ、シロサシがありますが、「濁りがあるフィールドではシロサシのほうが効果的」というベテランは多くいます。一見すると色鮮やかなベニサシのほうが水中で目立ちそうですが、濁った水の中ではシロサシのほうがワカサギからはよく見えるようです。これも色ではなく明度や明暗による違いの表われではないでしょうか。


解説◎長岡 寛
1960年東京都出身。1982年、北里大学海洋生命科学部(当時の水産学部・水産食品学科)。卒業と同時にマルキユー㈱(当時の小口油肥株式会社)に入社、配合エサやエコギアの開発に携わる。現在も同社勤務の傍ら、東京海洋大学の公開講座「フィッシング・カレッジ」では講師を務め、福井県立若狭高校、京都府立海洋高校等の教育機関でも講義や実習を行なっている

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定価:本体1,600円+税
著者:長岡 寛
四六判並製カラー272P



Contents
1章 釣りエサの種類と特性
2章 魚から見た釣りエサと釣り人
3章 魚は釣りイトが見える?
4章 ルアーとエサ、何色がよく釣れる
5章 臭いエサのほうが魚は集まる?
6章 甘いエサはよく食べる?
7章 釣り場の騒音はNG か
8章 究極の釣りエサ成分とは
9章 偽物なのになぜ釣れる
10章 最適なエサ、ルアーのサイズとは
11章 魚が食い込みやすい釣りエサの硬さとは
12章 釣りエサは環境にどう影響するか
最終章 釣りエサのひみつ



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