この秋、沖縄周辺海域に漂着し、漁業等に影響を与えている軽石。今月末には伊豆~関東周辺にも流れ着くのではないかという予測を出しているメディアもあり、釣りへの影響を心配している人も多いことだろう。そこでこの記事では軽石について報道されている情報を整理し、釣りの対象魚への影響について専門家にうかがった見解を紹介する。
懸念は沿岸部を回遊する稚魚への影響
まとめ◎編集部
この秋、沖縄周辺海域に漂着し、漁業等に影響を与えている軽石。今月末には伊豆~関東周辺にも流れ着くのではないかという予測を出しているメディアもあり、釣りへの影響を心配している人も多いことだろう。
そこでこの記事では軽石について報道されている情報を整理し、釣りの対象魚への影響について専門家による見解を紹介する。
軽石とは
軽石は火山活動で噴出した溶岩が急速に固まった際に、内部に多数の気泡が生じ水に浮くほどに軽くなった岩石。今年、沖縄の周辺海域に流れついて問題になっている軽石は、小笠原諸島・南硫黄島の北約5kmの地点に位置する福徳岡ノ場という海底火山が、8月13日から15日にかけて噴火した際に生じたものと考えられている。気象庁によれば、このときの噴火で吹き上がった噴煙の高さは約16,000m。15日に火山周辺海域に漂っている軽石が確認され、22日には福徳岡ノ場から西北西へ約300km離れた海域で漂流していた軽石が採取されている。その後、10月4日に沖縄県大東諸島に漂着している大量の軽石が確認されたという経緯だ。
軽石の影響と今後の予測は?
沖縄に流れ着き、漁港などを覆いつくしているショッキングな映像が報道されている。エンジンの冷却管等に入り込んでしまうことから周辺海域では船舶の航行に支障をきたしている。漁業や海運への影響がなるべく小さく収まってくれることを祈りたいが、軽石が黒潮に乗って本州方向へ移動しつつあるというシミュレーションもある。ウェザーニュースによって行われた海流や風をもとにしたシミュレーションによると、11月下旬には軽石の一部が本州に接近する予測となっている。
ただ、流されていく過程で拡散されることで、沖縄への漂着時と比べると量は少なくなる見通しとのことだ。
◆ウェザーニュースによるシミュレーション
出典:種子島の100km以内に「軽石いかだ」漂流か シミュレーションと一致
魚類への影響を専門家に聞いた
小笠原諸島の海底火山の噴火による軽石が沖縄に大量に漂着している問題。ニュースではサバの仲間「グルクマ」と呼ばれる養殖魚150尾以上が死んだ。その胃袋には軽石がいっぱい詰まっていたと報じられている。つまりエサと誤認して軽石を食べたのが死因といわれるのだが、天然魚が軽石をエサと誤認することがあるのか? たとえばコマセを撒いて釣るクロダイやメジナは自然漂着した軽石をエサだと思って食べるのか?広島大学大学院統合生命科学研究科の教授であり、『クロダイの生物学とチヌの釣魚学』や『メジナ釣る?科学する?』などの著者として知られる海野徹也先生に話を聞いた。
「自然界の魚が軽石をエサと誤認して食べるのは考えにくいです。日頃から養殖魚はペレットを与えています。だから表層を漂う軽石をエサと勘違いするケースはあるでしょう。ただそれもイケスの中の限定的な環境下で生じたこと。クロダイは浮いているサナギやスイカも食べる悪食として知られますが、これらのエサは捕食しやすい成分があります。無機質な石をエサと見ることはまずないです」
心配なのは沿岸部に回遊する稚魚だという。
「軽石が溜まりやすいのは湾奥部の浅瀬や波打ち際の浅場です。そこは多彩な稚魚が生息する命のゆりかご。我々研究者にとって浅瀬はその周辺海域の豊かさを知るバロメーターにもなっています。ここに軽石が漂着してしまえば稚魚たちの住処がなくなる。たとえば孵化した稚アユが回遊するのもこうした浅場で影響が心配です」
軽石は今後どうなっていくのか?
「私の専門ではないので分かりませんが、波に洗われ石が砕け沈下する可能性もあります。そうなると底生魚に影響を与える恐れもある。だから浮いているうちに除去したほうが被害は少ないと思います。ただ軽石の漂着は人災ではありません。自然の営みで発生したどうにもならない現象です。長い目で見守るほかない現象だと私は思っています」
気象庁はポータルサイトを立ち上げて、観測情報や海流予想図などを随時更新している。我々にできることは少ないが、今後の軽石の動向は注視していきたい。
◆気象庁ポータルサイト
福徳岡ノ場の軽石漂流の関連情報