8月下旬から9月。大型アユがねらえるこの時期を心待ちにするアユ釣りファンは多い。しかし、シーズン中期までと同じ道具立てや取り込み、循環の作法ではトラブルが大幅に増えてしまうのも事実。25㎝超のアユと向き合うべく尺アユと急瀬が似合う男・ドラゴン坂本さんを訪ねた。前編では大アユが掛かりやすいポイントなどをご紹介。
尺アユと急瀬が似合う坂本 禎さんに聞いた
写真と文◎編集部
8月下旬から9月。大型アユがねらえるこの時期を心待ちにするアユ釣りファンは多い。しかし、シーズン中期までと同じ道具立てや取り込み、循環の作法ではトラブルが大幅に増えてしまうのも事実。25㎝超のアユと向き合うべく尺アユと急瀬が似合う男・ドラゴン坂本さんを訪ねた。前編では大アユが掛かりやすいポイントなどをご紹介。
この記事は月刊『つり人』2021年10月号に掲載したものを再編集しています
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前編
後編
解説◎坂本 禎
坂本 禎(さかもと・ただし)リバーネームは“ ドラゴン坂本”。1970 年生まれ。栃木県宇都宮市在住。瀬での大アユねらいが身上で、球磨川での尺アユ釣りをこよなく愛する
Q1.坂本さんにとって「理想の大アユ」とは?
A1.友釣り人生の目標は36cm、600gのキレイなアユを瀬で釣ることです
25cmを超えるアユを大型として認識しています。アユ釣りにはさまざまな魅力がありますが、流れのなかで良型の力強い引きを受け止めるのは最高の瞬間だと思います。
私が理想とするのは長さだけでなく、重さもあるアユ。サビが出ていないキレイな個体だと言うことはありません。私が今まで釣ったアユのなかで最も理想に近かったのは平成29年9月の球磨川で掛けた33cm、446gのアユ。ガンガン瀬の肩で釣ったその魚は生涯忘れることがない1尾だと思います。私が聞いた範囲だと、35.5cm・500 g台までのアユは釣られています。だから私の友釣り人生の目標は36cm、600 gのキレイなアユ。できることなら大河川の強い流れのなかで釣りたいですね。
坂本さんの「ベストアユ」は球磨川で獲った33.0㎝、446 g。これよりひと回り大きいアユが人生の目標だ
Q2.大アユが掛かりやすいポイントやオトリの引き方はありますか?
A2.場所や釣り方についての考え方は普通のアユ釣りと変わりません
大アユねらいだからといって特殊な誘い方や場所選びが必要なわけではありません。その日の状況を読みながら普通に釣っていってください。大型ねらいで気をつけるべきことはおもに道具と取り込みです。
ただし、渇水のいわゆる土用隠れの時期は流れが緩いところに大きなアユが取り、流れがあるところで掛けるとサイズが下がる傾向はあります。お盆過ぎでアユの身体が仕上がってくるとこの傾向はなくなっていきます。あと、強いていえばサオ抜けが大型が掛かりやすいですね。
8月末から9月の米代川では20㎝後半がねらえると坂本さん。尺アユも川全体で見ると何尾かは釣れるはずだ。型ねらいは扇田堰堤よりも上がオススメだ。数釣りならば堰堤の下流側が有利
Q3.アユの平均サイズが大きいときの循環の作法はありますか?
A3.オトリの付け方から引き舟に入れる尾数まで、重要ポイントがたくさんあります!
掛かるアユのサイズが25㎝を超えてくる場合、シーズン初~中期と同じようにアユを扱ってはいけません。釣ったアユに逃げられたり、弱ったりするトラブルが多発してしまいます。ひとつずつ見ていましょう。
①オトリ交換は太ももを使う
まずオトリ交換について。25cmのアユは20cmの何倍も暴れます。いつもどおりにハナカンを刺そうとすると時間がかかったり、逃げられたりするケースが多発します。基本的には作業は必ずタモのなかで行なうこと。そして、右利きの人の場合、左手でオトリを持ち、右の太ももの側面にアユを軽く押さえつけるようにしてハナカンを通してみてください。アユが適度に固定されて一連の動作がスムーズに行なえるはずです。また、このときタモの1/2~2/3が水に浸かっているくらいが適度です。タモの枠をある程度水面から離すことで飛び跳ねによる脱走の確率を減らせます。
②引き舟に入れるのは6尾まで!
シーズン初~中期で20cm前後のアユならば引き舟の中に50尾近く入れても大丈夫ですが、25cm超えのアユだと話は一気に変わります。ずばり7尾以上は引き舟に入れないほうがいいです。経験上、25cm級を10尾入れると死ぬアユが出てきます。大きいアユほど酸欠になりやすいのが理由です。こまめにオトリカンに移しましょう。また、ポイント小移動の際も、可能な限り引き舟を持ち上げないことが重要です。舟の中の水量が減るとアユが一気に弱ります。チャラ瀬を渡るときなどやむをえないときはダッシュしましょう。
③オトリカンで運搬するときは水を冷やす
車でポイント移動するときなど、オトリカンにアユを入れるときも要注意。オトリカンに入れるのは20尾までにして、残りのアユはクーラーボックス内に氷と水を入れて締めるようにしています。この場合、私は生かしておくアユのサイズはできるだけバラけさせるようにします。たとえば20~27cmが釣れた場合、大きいアユばかりを生かしておくのではなく、小~大サイズをバランスよく残しておくようにします。流れが緩いポイントでは小さいアユが扱いやすいですし、水深があり押しが強い場所では大きいアユでないと底まで入ってくれないからです。また、オトリカンの中に氷を入れ、水を冷やすこともアユを弱りにくくするコツです。
④9月に入るとメスのオトリが有利
私の実感だと、9月に入るとメスのオトリのほうが掛かりがよいです。オスは泳がせているうちに婚姻色が出やすく追われにくくなります。また、メスのオトリには産卵を意識したオスが寄ってきやすく、それもメスが有利な理由のひとつです。オスとメスは尻ビレの形状で見分けられます。また、メスのほうがボテッとしていて太いのも特徴です。ちなみにオトリ店で購入した養殖アユは婚姻色が出にくく、メスのオトリが手に入らないときに養殖アユを使うことも多いです。
尻ビレが正三角形に近いのがメス、後方まで伸びて細長いのがオス。(上の写真がメスで下の写真がオスだ)
後編では「道具立てと仕掛けの要点・引き抜き」についてご紹介。
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