加藤達士さんは8.5mのミディアムショートロッドを操り、的確なポイント攻略が得意技。オトリの付き場を実に細かく見極めて好循環を生み出す。釣技に磨きをかけたのはエキスパートが揃う長良川である。激戦区の場荒れ河川もなんのその。どうすればオトリの回転率は上がるのか? その効率的な着眼点とオトリ演出とは―――。
人の釣った後のポイントをどう釣るか
文◎加藤達士
加藤達士さんは8.5mのミディアムショートロッドを操り、的確なポイント攻略が得意技。オトリの付き場を実に細かく見極めて好循環を生み出す。釣技に磨きをかけたのはエキスパートが揃う長良川である。激戦区の場荒れ河川もなんのその。どうすればオトリの回転率は上がるのか? その効率的な着眼点とオトリ演出とは―――。サオ抜けは必ずある!
解禁日でも大会でも時間が経つにつれ周囲で移動する人が増える。動く余地ができるのだが、動くべきか留まるべきかの判断を迫られる。私は基本的には動けるなら動いたほうがよいと思う。人がやった後でも攻め方が変われば掛かるアユがいると思う。自分が攻めつくしたポイントでは、そこからさらにひねり出すのは難しい。ただ、留まる判断をする時もある。判断基準は周りの釣れぐあいとの比較である。周りをよく見て、自分を含め特定の数人しか釣れていないようなら動かないほうが得策だ。特定の人しか釣れていないなら場所ムラを意味する。こういう時は下手に動くとハズレを引く。周りの人がある程度まんべんなく掛かっているなら、どこにでもアユがいて動いても掛かるだろう。
大石底の長良川はアユの筋にきっちりとオトリを通すことが難関であり面白さ。加藤さんは操作性の高い8.5mロッドをテキパキとさばき、筋をきっちりトレースする
では、人の釣った後のポイントをどのように攻めるかだが、先ほども述べたように、追い気の強いアユは特別な操作をしなくても近くにオトリを通せば掛かる。簡単にオトリを通せるポイントはすでに釣り切られているはず。アユが残るのはオトリを入れ難いポイント、つまりサオ抜けである。釣り人が多いからといってサオ抜けがないと思ってはいけない。細かく探ればオトリが通っていないピンスポットはあるのだ。
①石のアタマ(図A)
アタマというのは頂点ではなく水の当たるオモテ面のこと。下流からオトリを引き上げていき、大きめの石に差し掛かるとオトリが石裏のポケットに入って動かなくなる。ここで下流へ差し返してしまう人が多いため、この石のアタマにサオ抜けが生まれる。ここをねらうにはオトリが立ち止まったところから、さらに上流に引き上げてやる必要がある。
②石の向こう側(図B)
オトリを送り出すとき、多くの人は手前からオトリを放して沖へ送り出すことが多いだろう。時には沖から引き寄せながらオトリを引く場合もあるが、圧倒的に前者のほうが多い。手前から沖へ出していき、大きめの石があるとオトリはそれを乗り越えられない。石の向こう側にオトリを通そうと思ったら意図的に操作をしなければならない。
③石の隙間の細流(図C)
分流というほど規模が大きくない、本流から外れた脇の流れ。規模が小さければ小さいほど人は見逃がしやすい。見逃さなくてもオトリを入れ難い。幅15㎝長さ30㎝の流れがあればアユが付いている可能性は充分ある。
取材当日の郡上解禁日も、朝のうちは1つのタナでナワバリアユも群れアユも交えて30尾ほど確保した。その後は動きながら上記のようなサオ抜けをねらっていった。このようなポイントを攻略するために、私は8.5mのサオとソリッド穂先を使用している。
1番上りと思しきヌルヌルの黄色い良型が日の出とともにヒット
8.5mも私が使い始めた7年前は異端扱いだったが、最近は多くの人が使用しすっかり市民権を得たようだ。使いやすさが広く認知され、効果が認められた結果だと思う。最大のメリットは操作性のよさである。これがサオ抜けのピンスポットねらいに威力を発揮する。ねらったポイントに空中輸送で打ち込む、オトリを沈めるためサオを寝かす、といった動作の正確さ、早さは9mザオの比ではない。他の人が入れ難くてあきらめるポイントでもオトリを入れていけるのだ。
この日使ったサオはダイワ「銀影競技スペシャルAH-85」
ソリッド穂先「センサーオートマ」が加藤さんのオトリ操作に欠かせない
もうひとつがソリッド穂先である。先ほど挙げた3つのサオ抜けポイントに共通しているのが、水流を直接受けるオトリを止めにくいポイントであること。しかしこういうポイントはできるだけオトリをゆっくり通過させたほうが野アユの反応はよい。この相反する条件をクリアできるのがソリッド穂先だと思っている。チューブラ穂先だとグイっと素早く引き上げるのは簡単だが、尾ビレを振らせながらゆっくり引き上げるには絶妙なテンションコントロールが必要なのだ。それに比べゼロの範囲の広いソリッド穂先はソリッドを効かせながら引けばゆっくりとオトリが付いてくる。
感度を重視するならSMTソリッドだが、このようなピンポイントで尾ビレを振らせる操作をするには、テンションに応じて段階的に曲がってくれるカーボンソリッドのセンサーオートマが使いやすい。この日は「銀影競技スペシャルA H85」にセンサーオートマの組み合わせで使用した。
愛用の水中イトはダイワ「メタコンポヘビー」0.05号。長良川では4mで使用することが多い
オトリを投げ込むキャスティングはサオが短いほど正確に行ないやすい
解禁日の混雑するなかで50尾近い釣果を揃えた加藤さん
加藤達士(かとう・たつし)
1975年生まれ。三重県三重市在住。ダイワ鮎マスターズ’15年、’17年と準優勝。激戦区でも釣りまくる理論派エキスパート
◆関連記事一覧はこちら!
友釣り情報充実! アユ釣りステップアップ記事11選
この記事は『つり人』2018年8月号でも読むことができます。
2019/6/21