岐阜県は山と川が織りなす渓流王国だ。葉脈のように広がる渓の各所に必ず腕達者がいるが、中でもめっぽうよく釣るのが郡上の釣り人である。かつて職漁師のいた土地柄ゆえ、アマゴ、アユを釣って一人前の男と言われる。ここでは郡上在住のエキスパート、松森渉さんの馬瀬川を舞台にしたアマゴ釣りをレポート。
かつて職漁師のいた土地柄のエキスパートが解説
文◎松森渉、写真◎編集部
岐阜県は山と川が織りなす渓流王国だ。葉脈のように広がる渓の各所に必ず腕達者がいるが、中でもめっぽうよく釣るのが郡上の釣り人である。かつて職漁師のいた土地柄ゆえ、アマゴ、アユを釣って一人前の男と言われる。ここでは郡上在住のエキスパート、松森渉さんの馬瀬川を舞台にしたアマゴ釣りをレポート。
この記事は月刊『つり人』2021年7月号に掲載したものを再編集しています
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釣果アップのモットーは「早く」「丁寧」「静か」
松森渉さんは1978年生まれ。岐阜県郡上市在住。中部銀影会所属。下ザオで掛けたアマゴをいなして引き抜きこの笑顔
きれいな川で美しい魚と出会えることが渓流釣りの一番の楽しみである。だが私は長良川郡上の釣り人で、数を釣ることに関しても強い向上心がある。その理由は土地柄だ。郡上はかつてアマゴ釣りで生計を立てる職漁師と呼ばれるプロがいた。その名残りは現在もあり、数を釣ること、型を揃えることに意識の高い釣り人が多い。私が渓流釣りを始めた頃はすでに職漁師はいなかったが、釣具店でその武勇伝を聞き、心が高ぶったのを思い出す。釣果アップのモットーとしているのが「早く」、「丁寧」、「静か」な釣りである。
◎早く
ポイント選びを早くする。釣り支度を早くする。仕掛けを早くセットする。早くパターンを掴む。早く見切る。早く取り込む。すべての動作を早くすれば自ずと探れるポイントが増え、釣果が上がる。
◎丁寧
一連の動作を早くしただけでは駄目だ。どの動作も丁寧にやらなくては意味がない。ただ早いだけでは雑な釣りになってしまう。
◎静か
早く丁寧に釣りをして、その動作が静かなら最上と考えている。渓流魚は警戒心の高い魚である。静かにポイントに近づき静かに準備し、静かに釣りをするのは渓流釣りの基本中の基本だと思う。
私は料理人という仕事柄、せっかちな人間である。料理は早く、丁寧に作るのが基本。仕事の身上が趣味の身上でもあるのだ。
状況をいち早くつかめるポイント見極め
4月下旬、長良川本流のアマゴが渋くなった。訪れたのは馬瀬川である。吉田川沿いのせせらぎ街道を行けば郡上八幡から30分ほどでアクセスできる私にとっては身近な釣り場。
初夏のアマゴは幅広く容姿端麗。入梅のころがこの釣りの最盛期となる
馬瀬川は木曽川水系のひとつ。岐阜県高山市の西ウレ峠に源を発し、下呂市を流れ金山で飛騨川に合流する。上流部は渓流釣り、下流部はアユ釣り場として名高い。水質は素晴らしく、水は青く透き通っている。平成の名水百選に選ばれ、オオサンショウウオもいる。山紫水明という言葉がよく似合う名川である。
この日は飛騨清見で雪予報が出ていた。まさか雪はないだろうと高を括っていたが、何と予報どおり西ウレ峠で雪が降った。山々は薄っすら白くなっており真冬に逆戻りの様相。午後からの釣行だったのでさすがに雪は消えていたが4月後半とは思えないほどの寒さを感じた。最初に入川したポイントは、道の駅「パスカル清見」近くの大杉橋近辺だ。このポイントを選んだ理由は、私にとって魚の活性を知りパターンをつかむバロメーターになるポイントだからだ。
馬瀬川に限らず私がよく行く釣り場はどこでもバロメーターポイントがある。そこでサオをだせば、その日の状況をいち早くつかめる。どんな流れでどんなアタリが出て、どんなサイズの魚が釣れるのか。仕掛け、エサとチェックして状況をつかみ、次のポイント選択の材料にする。
淵の落ち込みでアタリをとらえた松森さん。ローリングするようなアマゴらしい引きをじっくりと味わう
まずは大杉橋上流の大淵に流れ込む瀬からサオをだした。サオはダイワ「エキスパートテクニカルチューン70MV」、水中イトはフロロ0.2号、ハリはオーナー「カッパ極」4号、オモリは2Bでエサはキンパク。アマゴ釣りが盛んな郡上は釣具店で川虫が販売されており解禁初期はキンパク、4月半ばを過ぎたらヒラタというのが定番だ。当日は冷え込んだので急遽キンパクを用意した。水位は数日前の雨で15cmほど増水している。
ハリはオーナー「カッパ極」4号
サオはダイワ「エキスパートテクニカルチューン70MV」
ガン玉は2Bが基本。この重さのオモリが馴染む流れにアマゴは多いという
手前から丁寧に探って各トレース1投で見切るのが私の基本スタイル。こうして手前の流れをひと通り探るがアタリは出ない。立ち込んで対岸筋の深みを探ってみる。こちらの流れが本命なのでアタリは出るはず。しつこく探って3投目で目印がコソッと動いて留まるような微かなアタリが出た。が、アワセが決まらず。その後も探るがアタリはない。
大杉橋近辺の釣りやすい流れは、釣り荒れていると思い、本命の大淵を前にする。ここでは過去に尺イワナを手にした。手前から探って行くが流れが速い。大岩に立って大淵の中心部を探る。目印を天井イトの直下ギリギリまで上げる。
大岩、岩盤、淵に瀬と変化に富んだ馬瀬川の流れ。流れを読むのが重要なのはもちろん、正確な振り込みや目印のブレないトレースが釣果を分ける
仕掛け投入の際に注意して欲しいのが仕掛けを沈めるスピード。淵のように長く水中イトを入れ込む深場は、仕掛けが水中へ入ったら一旦止め、そこからゆっくりと沈めるのが肝要。そうしないとオモリにイトが絡みやすくトラブルの元になる。2投目でアタリが出た。
下ザオ気味のサオが伸び切った状態で掛かったので魚に付いて下り、手前に寄って来た所で引き抜いた。型は小ぶりだが朱点が鮮やかな馬瀬川らしいアマゴだ。しかもエサをよく食べてお腹がぽってりとして肥えていた。この後同型をもう1尾追加して大杉橋下流へ移動する。
後編「木の下を探るテクニック」へ続く……
●管轄漁協:馬瀬川上流漁協
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