長良川上流はまさに歴史と伝統に培われたアマゴの川といっても過言ではない。郡上地区で釣られたアマゴは住民生活にも密着し、昭和の時代までは結婚式などの祝い膳や法事のお斎ときに必ずといってよいほどアマゴの尾頭付きが載った時代もあったほど。
伝統の谷、アマゴのいる風土
文◎白滝治郎
この記事の内容
サオ1本で生計をたてた職漁師がいた
郡上にはこんな金言がある。
「谷のアマゴ10匹より、大川のアマゴ1匹」
谷とは支流のことを、大川とは本流のことを言い、支流のアマゴを10尾釣るより、本流のアマゴを1尾釣るほうが難しく、価値があるという意味だ。そんな不文律が存在する長良川上流はまさに歴史と伝統に培われたアマゴの川といっても過言ではない。郡上地区で釣られたアマゴは住民生活にも密着し、昭和の時代までは結婚式などの祝い膳や法事のお斎ときに必ずといってよいほどアマゴの尾頭付きが載った時代もあったほど。そんな長良川は、全国から腕達者の釣り人が訪れる川でもあり、激戦区なのは間違いない。一方で豊富な水量と変化に富んだ渓相に支えられた魚影の濃さにも定評がある。
吉田川の透明度は高い。立ち込むだけでも気持ちがよい
美形アマゴが多い吉田川上流部
長良川のベストシーズンはやはり3月の声を聞いてから。解禁後の長良川水系では、南に開けた支流から徐々に釣れはじめ、お彼岸のころには長良川本流を含め全川が釣り場となる。
長良川本流に限れば、郡上八幡地区あたりから上流、白鳥地区の下流部あたりまでが本流らしい渓流釣り場といえる。4月以降、俗にアマゴがノボリに向かう時期になると幅広の身がしまった「郡上アマゴ」と呼ぶにふさわしいボリューム感あふれる魚体が揃う。5月も半ばになると下流の美並地区にサツキマスが姿を見せ、増水のたびに徐々に上流にその生息域を広め、全国から訪れる本流ファンでにぎわう。
アユの川としても有名な長良川では6月のアユ解禁とともに友釣りファンが溢れ、アマゴの時期を終えることになる。が、増水後の一時はサツキマスをねらう人の長ザオが大淵や堰堤下に並ぶ。一方で最上流の高鷲地区や周辺の支流は禁漁が訪れるまで折々の釣りを楽しむことができる。
支流の吉田川や亀尾島川は、釣れるアマゴの魚体の美しさに定評がある。パーマークがくっきりとして、控えめな朱点をちりばめた魚は釣り人を魅了してやまない。これらの支流は釣期も長く、2月の解禁当初から9月の禁漁までそれなりの釣りができる。条件さえそろえば6~7寸の手ごろなサイズを釣ることができる。
本流アマゴとの豪快なやり取りが長良川の真骨頂であり、魅力であることに間違いはないが、時には日常の喧騒から隔離された渓流域に身を委ね、美しい魚を愛でたい。そんなとき私は迷わず吉田川や亀尾島川の上流部に足を運ぶ。
伝統の郡上竿と受けダモ
郡上ビク。職漁のための機能美が光る
長良川の名釣り場である七ツ岩。アマゴはもちろんサツキマスも足を止める
●管轄漁協:郡上漁協(TEL 05756・5・2562)
●交通:東海北陸自動車道・郡上ICをおりて本流は川沿いに支流は八幡町方面へ
※この記事は月刊『つり人』2018年4月号に掲載したものを再編集しています。情報は掲載時のものです。解禁日・入漁料等は管轄漁協にご確認ください
渓流のポイントガイドブックの決定版
『「いい川」渓流ヤマメ・イワナ釣り場』
令和版が発売になりました!!
・首都圏「いい川」渓流ヤマメ・イワナ釣り場
・岐阜・愛知「いい川」渓流アマゴ・イワナ釣り場
・岩手・秋田「いい川」渓流ヤマメ・イワナ釣り場
・山形・新潟「いい川」渓流ヤマメ・イワナ釣り場
・栃木・群馬「いい川」渓流ヤマメ・イワナ釣り場
・長野「いい川」渓流ヤマメ・イワナ釣り場