荒川は源流のイワナ釣り場も有名だが、中流に続くヤマメ釣り場が見逃せない。周囲には山あいに開けた水田があり、絵に描いたような東北の山村風景が広がる。そこを流れる開豁で澄みきった流れでの釣りは日本の原風景に浸る思いだ。
日本の原風景の中で味わうヤマメ釣り
文◎高橋宗久
この記事の内容
タイムスリップしたかと思う抜群の魚影
山形県の南西部、新潟、福島と県境を接するところに小国町がある。南北に飯豊、朝日の山々を従え、東は最上川水系との分水嶺となる宇津峠、西は越後への難所である赤芝峡が控える。町はその合間、決して広いとはいえない平地にあるから、「小国」とはよく言ったものである。そしてこの小国町を流れる渓流の1つに荒川がある。
荒川は源流のイワナ釣り場も有名だが、中流に続くヤマメ釣り場が見逃せない。周囲には山あいに開けた水田があり、絵に描いたような東北の山村風景が広がる。そこを流れる開豁で澄みきった流れでの釣りは日本の原風景に浸る思いだ。近年は山形県内でも渓魚が激減している川が少なくない。開発による河川環境の悪化や、目につくようになったカワウの影響も考えられ、ウグイでさえ減少が著しい川もある。しかし、荒川ではこうした懸念は今のところ不要で、ヤマメの魚影の多さも一昔、二昔前にタイムスリップしたかのようだ。
Photo by Soichiro Ura
川に立つとしばし時間を忘れる
下流の浅い区間。くるぶしほどのこんな浅瀬にもヤマメが
荒川のヤマメ釣り場は越中里から五味沢のエリアをおすすめしたい。川に沿って車で上流に向かうと、道路は越中里橋で荒川を渡る。橋の上下は早瀬と淵、深瀬などが交互に続く渓相だ。こぶし大の石が敷き詰められた変化に乏しい深瀬がある一方、岩盤が絡んだ複雑で押しの強い淵もあり、里川ながら本流釣りの要素もある。サオも7mは欲しい。ただ8mクラスのサオになると操作性の面で不利があるのが否めない。透明度が高いのでなるべく遠くから釣りたいところだが、相手は居着きのヤマメ。繊細な流しが要求される。操作面での精度をとるのか、アプローチでの利をとるのかの判断が悩ましい。この辺りは上流に比べると魚影は少ないが、掛かれば型がいい。貴重な一尾を手にするために水況や活性を見て判断したい。
越中里から上流に進むと、道は長沢を経て中荒川橋で右岸に移る。その手前、長沢集落には長沢橋がかかり、中荒川橋にかけてもポイントは点在する。床止め工が釣趣を削ぐが、深みもあるので期待は持てる。中荒川橋付近は瀬が主体の渓相で、深みが多い川だけにこうした場所は見逃されがちだ。
中荒川橋から五味沢の下流にある橋までは道路は右岸を通る。橋付近以外には入渓路が少なく、ヤブ漕ぎが強いられる場所もある。そのためか魚影が多いのがこの区間の特徴だ。深みも何ヵ所かあり良型の実績もあるが、魚が濃いだけに浅瀬にも良型が潜む。くるぶしほどの深さでも、ポイントを見抜く眼力さえあればヤマメは釣れるし、川虫が確保できれば夕刻のライズを釣ることも可能である。徒渉点となるような場所もぞんざいに歩かず、エサを流してみたい。またポイントの刻み方が下流よりも細かくなるから長ザオは扱いづらい。6~7mがベストだろう。
全般にエサはミミズでよく、8寸級主体に尺上も期待できるので、ハリスは0.3~0.4号が適当。夏でも雪の残る朝日岳が源頭だが南西面にあたるため、雪代はたいてい5月いっぱいで落ち着く。以降はメジロアブが出る盛夏までがハイシーズンである。
Photo by Soichiro Ura
岩盤の絡んだ複雑で押しの強い流れにヤマメの魚信を待つ
Photo by Soichiro Ura
8 寸クラスの美形ヤマメが数多く顔を見せる
毛バリにこのサイズが連発することもある
●管轄漁協:小国町漁協(TEL 0238・62・3885)
●交通:米沢市内からR287、R113を経由して小国町方面へ
※この記事は月刊『つり人』2018年4月号に掲載したものを再編集しています。情報は掲載時のものです。解禁日・入漁料等は管轄漁協にご確認ください
渓流のポイントガイドブックの決定版
『「いい川」渓流ヤマメ・イワナ釣り場』
令和版が発売になりました!!
・首都圏「いい川」渓流ヤマメ・イワナ釣り場
・岐阜・愛知「いい川」渓流アマゴ・イワナ釣り場
・岩手・秋田「いい川」渓流ヤマメ・イワナ釣り場
・山形・新潟「いい川」渓流ヤマメ・イワナ釣り場
・栃木・群馬「いい川」渓流ヤマメ・イワナ釣り場
・長野「いい川」渓流ヤマメ・イワナ釣り場