テキサスリグでバイトを引き出すためには、 ラインテンションを張りすぎない操作法を覚えることが重要だと赤羽先生。 苦戦中の生徒Sは、先生の指導でこの操作を覚えるが……
赤羽修弥先生の愛のムチ。生徒Sは期待に応えられるのか?
バイトを引き出すキモはラインテンションを張りすぎない操作法
編集部=写真・文、もりなをこ=イラスト
(例)霞ヶ浦をナメるとこうなる
常陸利根川、外浪逆浦、夜越川、北利根川を巡って、赤羽先生4尾、Y1尾という釣果。このままいけばまたもSに黒星がつくわけだが……。S 何だかんだで2尾は釣れると思いますよ。
赤羽先生とYが実技講習を続けている間、ひとりノーフィッシュのSは余裕の表情で昼食タイム。おかげで赤羽先生の「ボイルしたよ! 早く投げて!」の指示に反応できず……
「もったいないから俺が投げちゃったよ」と赤羽先生。するとあっさりヒット!
Y やけに自信あり気じゃないの。
S バス釣りシーズン真っ盛りですからね。釣れないほうがどうかしてますよ。
Y まぐれ当たりがあるだろう、と?
S 恥ずかしながらそういうことです。まぁ、そのうち釣れますって。
Y この発言はどうなんですか赤羽先生?
赤羽 霞ヶ浦をナメてるね。
S うっ……、すみません。先生、動かし方を教えてください。実は朝からずっと自分のやり方でバスが食ってくれるのか疑問に思いながら釣りしてたんですぅ。
赤羽 ササキ君の場合は、ラインテンションを張りっぱなしなのがよくないな。まず、ピッチングのフィニッシュではティップを高く上げること。テキサスリグが着水してカバーに入ったら、素早くロッドを倒してテンションを完全に抜いた状態でフリーフォールさせる。ロングロッドのメリットのひとつがこのときにストロークを稼げることなんだ。
図のaのようにまっすぐ下にフリーフォールさせるには、ピッチングのフィニッシュでティップを上げること、着水後は素早くロッドを倒すことが重要だ
Y それだけではボトムまでフリーフォールさせられない場合はどうしたらいいんでしょうか。
赤羽 ロッドを倒しながらリールからラインを引き出して送り込む。着底したらまずはポーズ。あとは軽く揺するようにアクションをつけて、ピックアップのときにカバーの裏側に引っ掛かったところでも短いポーズを入れる。この繰り返しだね。それから、ズル引きするときもラインテンションを張りすぎないこと。
S 引っ張りつつテンションを緩める???
赤羽 横のロッドストロークでズル引くとラインが張りがちになるから、縦にゆっくり捌くといいよ。
S ……あ、ナルホド。ライン自体の重さで弛みができて、それにリグが引っ張られる感じですね。
赤羽 そんな感じだね。できるだけその状態で引いてくれば、高さがある障害物を乗り越えたあと、その障害物にタイトにフォールしてくれるよ。
横利根川へ移動して実践篇は続く。11時ころに辺りが暗くなったものの、午前中(土砂降り)の霞ヶ浦上空には雨雲が垂れ込めていて、皆既日食を確認することはできなかったという。まぁ、雲越しに見られたのかもしれないが、YもSも水面のラインに集中していて見逃したのだろう。
というのも、当日の横利根川は釣れ釣れだったのである。後ろの生徒ふたりにスポットを残しつつも赤羽先生は釣果を計6尾に伸ばし、最後尾を釣るYもラッシュが掛かってスバババ、ババン5尾追加して計6尾。船中12尾はなかなかの好釣果である。……ということは、Sは?
ウルトラバイブスピードクローの7gテキサスリグでYが2尾目をゲット! さらにパワーホッグ3inの1.8gテキサスリグで3尾目、4尾目、5尾目を釣る。赤羽先生があえて見逃したスポットをSが華麗にスルーし、Yがいただきま~すといという展開が続く
赤羽先生がフッキング! 7尾目をゲットか!? ……と思われたが、そのバス(30弱)は強烈なアワセで一直線に飛んできて、赤羽先生の脇腹をえぐり、横利根川へ帰っていった
スイングインパクトファット3.8inのテキサスリグを巻いてYが6尾目をキャッチ。赤羽先生が教えてくれたこのリグの万能性を実感
ゼロのササキ。あるいはサンドイッチマン
赤羽 どうしたサンドイッチマン?(※前後のふたりに挟まれてボコられている状況から赤羽先生が命名。誤解がないように記しておくと、普段の赤羽先生は、Sを可愛がってくれています。なのでこれはジョークですよ。愛あるジョーク)。
S 違和感も何もないから、「アタリはどう出るのか」という疑問は解けませんでしたね。アハハ……。
Y 過去形で話すな、まだ時間はあるぞ! 赤羽先生!! どうして……、どうしてササキだけが釣れないんですかぁ!?
赤羽 はっきり言っていい?
S (ゴクリ)聞く覚悟はできてます。ラインスラックの処理がイマイチなんでしょうか。それともソフトベイトとシンカーのウエイトがマッチしてないとか?
赤羽 いや、そういう細かいことじゃなくてさ……。キャストがね、ぜんぜん決まってないのよ。
S え?
Sのネックはキャスト。こればかりは即興ではどうにもならない。「アシの根もとにタイトに投げる。着水したらリールからラインを引き出してボトムまできちんとフリーフォールさせる」と赤羽先生が指導
赤羽 カバーの最奥を撃て、とまで要求される状況じゃないけど、今日は凸凹に生えてるアシ際のヘコみ・プラス・その上に何かが覆い被さってるスポットにバイトが集中してる。ササキ君のルアーはそこに入ってないんだよ。
S ずっ〜と撃ち続けてるんですから、何かこう交通事故的に釣れてもいいんじゃ……。
Y 「霞ヶ浦をナメてるね」と、ちょっと真顔で言われたことを忘れたのか?
赤羽 とくに昼過ぎからは晴れてきたから(バスがカバーのより奥へ潜り込んでしまい、Sには)厳しいものがあったね。
「今日はちゃんと投げられば釣れる日だよ」と、業を煮やして赤羽先生が釣る。その愛のムチ的7尾目を恨みがましい目でにらむS
S そ、そんな、思い切って撃ち込んでたのに。赤羽先生! もう1ヵ所だけ釣らせてください。
赤羽 じゃあ、もう一度、北利根川に出ようか。夕マヅメになってバスがカバーの外へ出てきてくれることを期待してさ。
「最後に北利根川でもうひと頑張りしてみようか?」と赤羽先生
最終的に船中14尾ということは……
つまり、横利根川をあとにした時点からさらに2尾が追加されたわけである。赤羽先生の読みどおり、夕マヅメのバイトはアシ原の外側でコツンときた。まずは先生が1尾、次にYが1尾釣って、はい、サンドイッチマンのできあがり。
Y ひょっとして真ん中って釣りがしにくい? 場所、変わろうか?
赤羽先生からもらったチガークロー3inでYも7尾目。編集部内で夜な夜なピッチング練習している成果か
S そんなことないけぇ、ほっといてくれんさい。
が、そんなツンな態度の広島焼き風サンドイッチにも、ついにそのときが訪れたのである!
S (コツン)ん?
赤羽 あわて……。
S キィトリャーッ! (※「キタ、オリャー」)
スッポーン!
赤羽 ないで、って……。ぐわぁぁぁ〜、もったいないねぇ〜ッ!!
Y 先生も僕も自分の手を汚さずに済みましたね。今回はササキの自爆オチです。
S あぅあぁ〜、こんな釣れ釣れの日にデコるなんて……。僕は釣り雑誌の編集をやってていいんでしょうかぁ?
「中途半端に釣れなくてよかったと思うよ。その方が練習して釣ったときに喜べるからさ」と赤羽修弥先生
赤羽 (笑顔でSの肩をポンと叩きつつ)大丈夫、釣れない人のほうが取材で細かいネタにも気づけるはずだよ。ササキ君は将来、いい編集部員になるんじゃないかな。まずキャスティングの練習をしないとね。今日の悔しさをバネに頑張ってよ。
この日を境にSはピッチングの猛練習を開始したという。そして、その努力は3年後に報われることになるのであった。