暫定年間1位という位置でB.A.S.S.セントラルオープン・ミシシッピリバー戦(8月1~3日)に挑んだ伊藤巧選手。直前のコメントでは「勝ちに行くのではなく、凌ぐ試合」という言葉が出ました。伊藤選手本人はこの最終戦についてどう感じているのでしょうか? 試合直後にインタビューを行ないました。
暫定1位でのぞんだ第3戦「凌ぎのミシシッピ」
インタビュー・文字起こし=サイト・ビー
暫定年間1位という位置でB.A.S.S.セントラルオープン・ミシシッピリバー戦(8月1~3日)に挑んだ伊藤巧選手。直前のコメントでは「勝ちに行くのではなく、凌ぐ試合」という言葉が出ました。198名中66位という最終成績を客観的にみると見事に凌いだという印象があります。年間順位も大きく下がらず4位。エリート昇格圏内(年間5位以内は確定。状況次第で繰り上げもあり)で最終戦を迎えることになります。伊藤選手本人はこの試合についてどう感じているのでしょうか? 試合直後にインタビューを行ないました。以下、伊藤選手談。完全に見失ったプラクティス
第3戦の舞台はミシシッピリバー。自分が釣ったのは川幅が広く流れが強烈なミシシッピリバー本流と、会場がある支流のブラックリバーでした。ブラックリバーは流れが緩めで、日本のフィールドに近い感覚で釣りができました。トーナメントのリリースフィッシュもいるので基本的に魚が多いエリアです。3Lbまでのラージが比較的イージーに釣れました。そして、ミシシッピ本流下流は2Lbまでのスモールマウスがイージーにバイトしてきました。
プラ序盤の手ごたえはよかったです。ブラックリバーで3Lbまでのラージがよく釣れる。
本流にも魅力を感じました。プラ開始当初は水位が高くて、本流の水中堤防みたいなスポットのインサイドにラージが入っていて、流れが直接当たらない、けど巻いているようなスポットで釣れていました。ルアーはフロッグ。NF60とグランドスリザーク(ロングキャスト用)でポケットやアシの奥のスペースを撃っていいラージが釣れていました。
スモールは簡単で、本流のプール8(ロックスルーなしで行ける範囲での最下流)のクランキング(RTO1.5、ショットオーバー2、オーバー3)で2Lbまでの魚が釣れていました。ただ、ウエイトが軽く、「試合でやったら負ける」と感じていました(このチェックがのちに大きな意味をもつことになりました)。
けれど、です……。
試合5日前からが地獄でした。水位がどんどん下がっていって、本流でフロッグで出していたスポットは水がなくなっていき、手堅いと踏んでいたブラックリバー(会場周辺)も流れが止まってしまい何も釣れない……。
「年間1位」というプレッシャーもあり、視野が狭くなっている自覚もありました。どこを釣ればいいのかわからない……。試合2~3日前は1日練習してキーパー1尾とか、そういう状態でした。
この時点で決めたことは、とにかくこの試合では大ケガをしないことを目指す、ということ。勝つ試合ではなく、凌ぐ試合にしようと。泥臭くてもなんでもいいから、とにかく5尾をかき集めるってことです。年間順位を大きく落とさず踏みとどまることが目標です。
だからプラ最終日はブラックリバーの会場周辺を徹底的に釣りました。すると、流れが完全にない状態からは少し回復していて、流れが出ていました。5gダウンショットリグ(ラッテリーのワッキー刺し)でラージが2尾釣れた。
そのあと本流のプール8のクランキンでスモールが2尾釣れた。メインチャンネルに近い3mでオーバー3を引きました。少しだけ持ち直して本番を迎えました。
30尾釣ったDay1
初日は会場周辺からスタートしました。リリースフィッシュがいて魚影が多いエリアです。繰り返しますが、勝つために選んだエリアじゃないです。恥ずかしい気持ちがなかったかというとウソになります。暫定1位のTaku Itoとしてアメリカ人にもボートを認識されはじめているなか、初日の朝からいきなり会場前ですよ。ほかの選手は「オイオイ!!」って思ったでしょう。「ここ、そんなに釣れているのか?」と思う人もいるかもしれないし、「完全に守りに入った」という感想も多いはずです。
会場周辺のボートドックをスピニングで釣る伊藤選手
でも、そんなことを言っている場合じゃない。とにかく、絶対に5尾釣って帰ってくる。それだけです。
初日は状況が激変していました。流れが出ていて、とにかくバイトが出る。モーニングバイトの力もあって、2時間かからずにリミットが揃いました。使ったのは5gダウンショットリグ(ラッテリーのワッキー刺し)と2.3gネコリグ(5-3/4inカットテールワーム)、2.3gジグヘッドワッキー(スレンダーグラブテールカット)。シートパイルなどの縦ストラクチャーはジグヘッドワッキーのフォールで釣り、ボートドック周りのオダなどはネコリグとダウンショットで釣りました。途中、本流の上流へキッカーを獲りにもいきましたが不発。
結局初日は30尾釣ってキーパーは10尾。10Lb強持って帰ることができました。結果は62位。なんとかつなげることができた……。
木村建太選手もブラックリバーを釣っていた
年間4位で最終戦へ
2日目もやるべきことは変わりません。会場前です。でも、この日はスタートが遅くてモーニングバイトを活かせなかったのと、流れがまた止まっていて初日に釣れていた場所でバイトが出ない。ネコリグでなんとか2尾(2Lbと1Lb3oz)キャッチしましたが、魚が入ってくる感じはないし、食べたいというバスの気持ちも感じ取れない。
本流の上流でキッカーをねらいに行きましたが、ダメ。気づけば2尾のまま帰着まで4時間を切っていました。
どうしよう……。そんなことしてる場合じゃないのに、天を仰ぎました。同時にいろんな人の表情が浮かんできて……。田辺さんや家族、ファンの方に申し訳ない気持ちが沸いてきて、本当にキツかった。吐き気がしたし、根掛かりも多発しました。
このあと選んだのは本流下流域。比較的釣れていたスモールをねらうために30分走りました。流れが強く当たる水中堤防でオーバー3を引いたら2Lbくらいのスモールが釣れた。
そのあと、この水中堤防を10往復しました。流されながらオーバー3を巻いて、Uターンして上流に向かいながらエスケープツインのチェリーで探る。最後までやり切ってなんとか4発。1回の入れ替えもできて急いで帰着です。「これでは勝てない」と思いつつ、プラで本流下流のスモールをチェックしていたことに救われました。
2日目は10Lb弱ウエイインすることができて、最終順位は66位。年間は4位で踏みとどまりました。
勝つということだわりを捨てて、守り切った結果です。「見えていない」ということを象徴する会場前での試合。辛かった……。
よかった、という気持ちはもちろんあります。日本で長年やってきたからこそできた試合だと思います。けれど、ちゃんと魚を追えなかった自分に対する苛立ちも強い。なんとか耐えれたという思いと、アングラーとしての自分への不満が同時に胸にあります。
最終戦はちゃんと仕掛けにいかないとダメ。抑えとか言っていられない位置まで落ちましたから(エリート昇格確定は年間5位まで)。今回は自分の未熟さでパターンを見失いました。日本で培ってきた技術と根性で5尾釣ってきた、だけ。
最終戦はエサのいる場所、魚のいる場所をしっかり探して、きっちりパターンを見つけて釣ってきます!
(以上、伊藤選手談)
客観的に見て、198名中66位という成績は決して悪くない数字です。最終戦がどんな展開になるのかは誰にもわかりませんが、ミシシッピでの凌ぎがターニングポイントになる予感もします。最終戦は9月12~14日。グランドレイクで開催されます。(おわり)
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2019/08/05