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編集部2022年5月2日

世界一のクランクベイトができるまで。ラッキークラフトU.S.A. Behind Story 第4回

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そのとき気付いたんです。「加藤誠司さんは世界で唯一無二の『振動』を作るプロなんだ」と。加藤さんは新しい「振動」で新しい魚を釣ることができるルアーを作る天才なんだと私は理解しました。

「新しい振動」を探す旅のはじまり

瀬川 稔(ラッキークラフトUSA社長)=語り

この記事は『Basser』2022年6月号に掲載したものを再編集しています。Basserのバックナンバーは定期購読をお申し込みいただくとデジタル版バックナンバーが4年分以上読み放題! 詳しくはこちらをどうぞ

  目指すは「世界一のクランクベイト」。この連載では、ラッキークラフトUSAのルアーデザイナーと、大森貴洋、リック・クラン、スキート・リースら歴代プロスタッフが勝てるルアーを作るために繰り広げた知られざる切磋琢磨の歴史を紹介する。

以下、瀬川さん談。

◆第1回:すべては衝撃のひと言から始まった。「このルアー、泳いでないね」

◆第2回:勝つためのFAT CB B.D.S.2、アングラーに寄り添うB.D.S.3

◆第3回:プロに使われるルアーの絶対条件

「加藤誠司」を学ぶ

「KATOのルアーはいるけど、お前のルアーはいらない」

 今回は2001年からの数年の話です。私は大森貴洋さんたちとの交流を経て、勝てるルアーを作る絶対条件は「プロとともに生きること」であることを確信しました。ここまでが前回の話です。

 それから私はバスマスターツアーを中心に全米のありとあらゆる試合に出向き、マイク・オートンやスキート・リースらプロスタッフのプラに毎日同船し続ける日々を送りました。プロたちがどういうルアーでどんな釣りをするのかをひたすら観察しました。

 当時の私は1年に600個のルアーを削るような生活をしていたので、前回の釣りや状況を踏まえて作ったプロトのルアーを持って行くこともよくありました。ある日スキート・リースに試作品を渡すとそのまま地面に落とされ衝撃的なひと言が返ってきました。

「KATOのルアーはいるけど、お前のルアーはいらない。お前は何もしなくていいから、加藤のルアーを売り続けろ」

 バチーンと言われました。

「KATO」とは加藤誠司さんのことです。加藤さんはかつてラッキークラフトのルアーデザインを行なっていましたが、当時はすでにジャッカルを立ち上げていて私は一緒には働いたことはありません。

 私はそのひと言を受け、「ルアーデザイナー・加藤誠司」を研究することにしました。加藤さんはロッド&リール誌にルアー作りにまつわる連載を持っていたのですが、そこに私にとって衝撃的なことが書いてありました。それは「振動係数」という言葉。

 そのとき気付いたんです。「加藤誠司さんは世界で唯一無二の『振動』を作るプロなんだ」と。加藤さんは新しい「振動」で新しい魚を釣ることができるルアーを作る天才なんだと私は理解しました。

 それがキッカケで私にとってのルアー作りのイメージが変わりました。「勝てるルアー」ではなく、「勝てる振動」を作るという意識に切り替わったのです。

 では「勝てる振動」とは何か? 私はそれを模索することになります。

重心移動による優勝

「振動」を勉強するにあたり、私がまず学び始めたのが当時流行り始めていたフラットサイドクランクです。フラットサイド特有のハイピッチな振動を掘り下げていきました。当時、「これだ!」というフラットサイドの名品はまだなかったので、私は無名のハンドメイド品を含めて釣具店で片っ端からフラットサイドを買い漁って引いたりしていました。また、ケビン・バンダムがフラットシャッド社のウッド製フラットサイドを300個買って、1個1個泳ぎをチェックして勝てる泳ぎのものだけをボートに載せているという話を聞いたのもそのころです。

 勉強を重ねスキート・リースに再チャレンジする意気で作ったのが「フラットCB」(SRとMR、DR)です。当時、固定重心のウッド製クランクはたくさんあったのですが、風が吹いたときのキャスタビリティーに難があった。そこで重心移動を採用しました。

フラットCB MR

1b
3/8oz
2003年3月のバスマスターツアー・ハリスチェーン戦でスキート・リースが優勝した際のメインルアーとなった。リップをかなり薄くして泳ぎ出しを向上させている

 正直、この重心移動には否定的な意見が多かったです。着水からの0.1秒で勝負しているプロたちには、重心移動のデメリットである泳ぎ出しの悪さが受け入れられなかったのです。大森さんも「重心移動はいらないでしょ」という意見でした。

 しかし、2003年3月のバスマスターツアー・ハリスチェーン戦でこのフラットCB MRがウイニングルアーになります。アングラーはスキート・リース。

 アーリープリスポーンのタイミングでコールドフロントが入り、多くのバスが4ftのリリーパットとグラスに依存する状況でした。スキートはここでフラットCBを引き、時おり浮かせるというパターンで勝ったのですが、浮くときに姿勢が変わるという重心移動の副産物が食わせのキッカケになったのでした。フラつきながら浮上するようすでフロリダのベイトフィッシュであるゴールデンシャイナーをイミテートできたそうです。

 ただし、この優勝をキッカケにフラットCBが一気に受け入れられ……とはいきませんでした。2004年、アメリカに日本のハンドメイドフラットサイドであるエドモン(江戸物)が上陸し大流行したのです。

 2004年にはブレント・エーラーがまるでスピナーベイトのように高速でエドモンを引いてエバースタート・チャンピオンシップを優勝。ちなみにこの試合前、ブレントは当時の彼女に「勝ったら結婚してほしい」と言い、その通り勝って結婚しました。

 2005年はゲイブ・ボリバーが同じく「勝ったら結婚してほしい」といい出場しましたがこちらは2位。使っていたルアーはやはりエドモンでした。

 エドモンの快進撃には「かなわない……」と感じました。そこで私はフラットサイド探求をいったん保留し、新しい振動を探す旅に出ることになります(続く)。

 

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