次第に精神が崩壊していくSが見たものは アクションの違いで釣果に決定的な差がつくという残酷な現実だった。
アクションで差がつくポッパー&ペンシルベイト
編集部=写真・文、もりなをこ=イラスト
ヤマガタ先輩にリードされてしまったS。 並木先生にマンツーマンでレクチャーを受けるが、 釣れるアクションを引きだせない。 次第に精神が崩壊していくSが見たものは アクションの違いで釣果に決定的な差がつくという残酷な現実だった。編集部員がエキスパートに入門し、座学と実践で免許皆伝を目指す 『Basser』の人気連載をピックアップ
※この記事はBasser2009年8月号に掲載されたものを再編集しています
講師=並木敏成(なみき・としなり)
並木敏成先生のブログ「TOSHI’s DAYS」
並木敏成先生のfacebook
1966年10月17日生まれ。バスマスタークラシックにクオリファイした初の日本人。2005年シーズンはFLW ツアー第3戦で優勝し、年間ランキング2位と大暴れ。本誌連載「The Mission」でも、トップウォーターで数々のナイスフィッシュをキャッチしている。
1958年7月9日生まれ。1980年代に本場アメリカのバスフィッシング理論やテクニックを吸収し、日本に持ち帰ったアングラー。1986年発行の本誌創刊号に「パターンバッシング」を寄稿。その内容は今もまったく色褪せることがない。1998年からB.A.S.S. に参戦し、自身が生みの親であるクリスタルSを駆使して数々の実績を残した、理論派であり実践派。スピナーベイトをメインパターンにして初日2位にランクインした2015年のバサーオールスタークラシックが記憶に新しい。
生徒=ヤマガタ
追い詰められるとツンデレ口調になる三十路男。かつて地元のクリアなリザーバーでペンシルベイトで相当釣ったというが、編集部に入ってからは霞ヶ浦水系がホームになり、その出番は皆無に。
生徒=ササキ
かつてトッパーだったらしいが、「見えないほうが興奮する」とチラリズム(?)に目覚め最近はご無沙汰。東京に越してきてからポッパー&ペンシルベイトよりもビッグバド系ルアーの出番が増えた。
ポッパーとは……トップウォータープラグ(水面で使うプラグ)のうち、口を大きく開けた形状(カップ)をもつもの。アクションを加えるとポコッポコッというポップ音や水しぶきを発生させる。短い移動距離で首を振らせるのも得意。
ペンシルベイトとは……トップウォータープラグのうち、シンプルな細長い形状のもの。ロッドをうまく操作して頭を左右に振らせるドッグウォークやスケーティングと呼ばれるアクションが持ち味
並木敏成先生のブログ「TOSHI’s DAYS」
並木敏成先生のfacebook
1966年10月17日生まれ。バスマスタークラシックにクオリファイした初の日本人。2005年シーズンはFLW ツアー第3戦で優勝し、年間ランキング2位と大暴れ。本誌連載「The Mission」でも、トップウォーターで数々のナイスフィッシュをキャッチしている。
1958年7月9日生まれ。1980年代に本場アメリカのバスフィッシング理論やテクニックを吸収し、日本に持ち帰ったアングラー。1986年発行の本誌創刊号に「パターンバッシング」を寄稿。その内容は今もまったく色褪せることがない。1998年からB.A.S.S. に参戦し、自身が生みの親であるクリスタルSを駆使して数々の実績を残した、理論派であり実践派。スピナーベイトをメインパターンにして初日2位にランクインした2015年のバサーオールスタークラシックが記憶に新しい。
生徒=ヤマガタ
追い詰められるとツンデレ口調になる三十路男。かつて地元のクリアなリザーバーでペンシルベイトで相当釣ったというが、編集部に入ってからは霞ヶ浦水系がホームになり、その出番は皆無に。
生徒=ササキ
かつてトッパーだったらしいが、「見えないほうが興奮する」とチラリズム(?)に目覚め最近はご無沙汰。東京に越してきてからポッパー&ペンシルベイトよりもビッグバド系ルアーの出番が増えた。
ポッパーとは……トップウォータープラグ(水面で使うプラグ)のうち、口を大きく開けた形状(カップ)をもつもの。アクションを加えるとポコッポコッというポップ音や水しぶきを発生させる。短い移動距離で首を振らせるのも得意。
ペンシルベイトとは……トップウォータープラグのうち、シンプルな細長い形状のもの。ロッドをうまく操作して頭を左右に振らせるドッグウォークやスケーティングと呼ばれるアクションが持ち味
ひとり千本ノック
エリアを大池公園側に移して実践篇は続く。時間は17時30分を回り、日没まで残すところ1時間半。観光遊覧船、通称「くじら」の前でボートを止めた並木先生は、桟橋とくじらの隙間へシュパパッ! とベントミノーを放り込んだ。並木 ルアーの下に影が浮いてきたよ。うん、やっぱり午前中よりバスの寄りが早くなってる。ササキ君、チャンスだよ。投げて。
S ハイッ!
カキーン!
並木 くじらに謝ってもう1投!
S ハイッ! すみません!
コキーン!
並木 ゴメンなさいって言ってもういっちょう!
S ハイッ! ゴメンなさい!
スコーン!
並木 ルアー、割らないでね?
S ハイッ! 割れないでね!
パカーン!
野球部の千本ノックにしか聞こえないが、ようやくキャストが決まるとササキのヤマトJr.にもバスが寄ってきた。
並木 ゆっくり。ゆっくりだよ、ササキ君。まずはじっとポーズ。にらめっこ状態からUターンされたら1回だけスッと動かして。
S ハイッ!
チョンチョーン!
並木 動かしすぎ! それじゃあバスの射程からルアーが外れちゃうよ。もう1回キャストして。
またササキのヤマトJr.にバスが寄ってきた。しかも今度は2尾だ。
並木 俺とヤマガタ君はルアーを投げないから頑張って!
Sに善意のプレッシャーを掛ける並木監督。取材的にあとはSが釣ればメデタシメデタシ。Sの釣り待ち状態である。が、当の本人は膝がカクカク、手もプルプルと震えている。極度の焦りで身体は脳の指令を実行できず、チョチョーン! とやっては「スッと動かせば充分!」、「まだポーズ!」と並木監督に叱咤され、千本ノックから繰り返す。そうこうしているうちにバスがスレてしまった。
S ダメです〜。クセが抜けなくて、つい手がチョンチョン動いちゃいます。
並木 ササキ君、大丈夫だ。ヤマガタ君の2尾は忘れよう。深呼吸して落ち着いて。スマイルだよ。次のエリアでは釣れるから。
先生から探偵と監督を経て、コワレタSの精神科医に転身した並木さんと、心にもない声援を送るY、表情がどんどん強張っていくSを乗せて、レンジャー・スティーズ号は最後のエリアへ向けてプレーンした。
Sにとどめを刺したのだ~れだ?
ヤマトJr.が火を噴き続ける。Y3尾目
「うはへはふへへへ……」「サ、ササキ君、ちょっとこっち見て、俺がやってるようにね?」。そろそろ本格的にコワレゆくS
並木 ここも午前中にバスとベイトフィッシュを確認できたエリアだったよね。「うはへはふへへへ……」「サ、ササキ君、ちょっとこっち見て、俺がやってるようにね?」。そろそろ本格的にコワレゆくS
S ……(チョチョーン、チョチョーン)。
ドバン!
Y 何か赤い魚が出ました〜ッ! あ、エラを開いて思いっきり出たバスでしたぁ(笑)。
S ……(チョチョン、チョチョン)。
Sの脳内。o O(並木先生やヤマガタ全敗と同じアクションができてる(※できてない)のにどうして釣れないの?ひとりだけバイトもないのはおかしいよね(※おかしくない)。けど、この展開は最後に僕がドカン! とデカバスを釣って大逆転の流れだな。うへ、うへへへへ……。)
並木 さ、ササキ君? 気をしっかりもつんだ。いいかい、落ち着いて。1回1回のアクションを大切に、スローに、こんな感じで……(スイ〜、スイ〜)。
ドバン!
並木 う、ソーリー、釣っちゃったよ。
S ……(チョチョチョチョチョチョ)。
釣って、思いっきり「しまった」という顔をしている並木先生。その空気を読まずにキャッキャと喜ぶY。夕暮れといっしょにどんどん暗くなっていくS。YもSも同じルアーを使い、しかもYのほうが後ろで釣っている。明らかにアクションの違いが釣果を分けていた。
「さすが先生! いろんな意味で流石です!」「ヤマガタ君、あんまり大きな声で……」。Sにルアーアクションを見せているときにドバン!
S 並木先生! 最後にもう1ヵ所だけ釣らせてください!!
並木 OK、その意気だ。次が最後と言わず日没まで頑張ろうゼ、ササキ君。追い詰められても最後には釣るのが男ってもんだろ。
S ハイィッ!
次にバスをドバン! と出したのは……、またしてもYだった。そしてこのあと本当に最後のエリアを釣り終わって陽がとっぷり暮れたとき、スティーズ号のコンソールには、すっかりしおれたSが、それは見事なボートカバーっぷりで覆い被さっていた。
S あううう……、にゃ、にゃみきしぇんしぇ〜、僕に教材のヤマトJr.をくだしゃい。このルアーで河口湖にリベンジしたいですぅ〜。
並木 お、OK。リベンジできたらO.S.Pのファンフォトギャラリーに写真を送ってよ。(笑顔でSの肩をポンと叩きつつ)大丈夫、才能は努力で補えるから。
S そ、それは僕に才能がないってことじゃ……。ヤダなぁ、並木先生。今日、釣れなかったのはたまたまですよ。た・ま・た・ま♥
すっかり暗くなった河口湖の湖畔で、「打たれ強いのも才能だね」、「ですね」と並木先生とYは頷き合ったのだった。B