吉田幸二さんはクランクベイトの名手だ。 霞ヶ浦開催のオールスタークラシックで幸二さんがこれまでに獲得した楯は優勝、入賞、ビッグフィッシュ賞を合わせて10枚を超える。 そのすべてがクランクベイトの釣果によるものだ。 「投げて巻いてェ~♪」の幸二節を、YとSは免許仮伝してもらえるのだろうか!?
釣れない理由はタックルにあった!? 使ってみてわかったタックルの重要性
編集部=写真・文、もりなをこ=イラスト
日本で最初にバスプロ宣言をしたアングラー、吉田幸二さんはクランクベイトの名手だ。霞ヶ浦開催のオールスタークラシックで幸二さんがこれまでに獲得した楯は優勝、入賞、ビッグフィッシュ賞を合わせて10枚を超える。
そのすべてがクランクベイトの釣果によるものだ。
「投げて巻いてェ~♪」の幸二節を、YとSは免許仮伝してもらえるのだろうか!?
編集部員がエキスパートに入門し、座学と実践で免許皆伝を目指す 『Basser』の人気連載をピックアップ!
※この記事はBasser2009年9月号に掲載されたものを再編集しています
講師=吉田幸二(よしだ・こうじ)
幸二先生のブログ「熱血! 幸運児」
1951年3月16日生まれ。日本で最初にバスプロ宣言をしたアングラー。大好きなクランキングとフリッピングで霞ヶ浦を釣り巡りつつ53 Pick UP! に勤しむ水辺基盤協会の代表。
生徒=ヤマガタ(Y)
この連載の取材前日は「お仕事♥(取材準備)」と称して釣具店を巡り、ラインを巻き替え、フックを研いで陽が暮れる。もともとクランクベイトは大好きだったので今回のクランクベイト道場に弟子入り志願。現在はBasser編集長としてクランクベイトに合わせやすいBasser30周年記念モデルのロッドを鋭意制作中。
生徒=ササキ(s)
「並木敏成のポッパー&ペンシルベイト道場」ではまさかのノーフィッシュにおわり、それまでトッパーを自称していた自信を打ち砕かれてしまった。今回、もうひとつの自称「クランカー」も霞ヶ浦に捨てることになるのか。捨てたところを幸二先生に拾ってもらえるのか?
クランクベイトとは……リップ付きのずんぐりしたボディーが特徴的なプラグ。リトリーブするとボディーを揺すりながら潜り、止めると浮く。水面直下を泳がせやすいものから水深5m超まで潜り込ませられるものまで潜行深度別にいろいろなタイプがあり、ねらいたい深さによって使い分けるのが基本。
幸二先生のブログ「熱血! 幸運児」
1951年3月16日生まれ。日本で最初にバスプロ宣言をしたアングラー。大好きなクランキングとフリッピングで霞ヶ浦を釣り巡りつつ53 Pick UP! に勤しむ水辺基盤協会の代表。
生徒=ヤマガタ(Y)
この連載の取材前日は「お仕事♥(取材準備)」と称して釣具店を巡り、ラインを巻き替え、フックを研いで陽が暮れる。もともとクランクベイトは大好きだったので今回のクランクベイト道場に弟子入り志願。現在はBasser編集長としてクランクベイトに合わせやすいBasser30周年記念モデルのロッドを鋭意制作中。
生徒=ササキ(s)
「並木敏成のポッパー&ペンシルベイト道場」ではまさかのノーフィッシュにおわり、それまでトッパーを自称していた自信を打ち砕かれてしまった。今回、もうひとつの自称「クランカー」も霞ヶ浦に捨てることになるのか。捨てたところを幸二先生に拾ってもらえるのか?
クランクベイトとは……リップ付きのずんぐりしたボディーが特徴的なプラグ。リトリーブするとボディーを揺すりながら潜り、止めると浮く。水面直下を泳がせやすいものから水深5m超まで潜り込ませられるものまで潜行深度別にいろいろなタイプがあり、ねらいたい深さによって使い分けるのが基本。
タックルチェンジで大逆転!?
幸二 ササキ、なんで釣れないんだと思う?S 今年は厄年……、じゃないけど、不運続きなんですよ、僕。
幸二 ……。キミのロッドは6ft6inのミディアムヘビーだよな? ちょっと俺のタックルを使ってみなよ。
Sが持参したロッドは6ft6in、ミディアムヘビー。このあと、幸二先生のタックルをまるまる借りると……
Y ず、ずるい! それは幸二先生のタックルそのまんまじゃないっスか!?
S タックルを替えただけで釣れるとは思えないんですけど……。うっ!なんじゃこりゃ? 軽い!
幸二 投げてごらん。
S シュッ!(※編注…おかしなフォームでも)ルアーが簡単に遠くへ飛んでいきます!
幸二 なっ? ササキのロッドは硬すぎるんだよ。キャストの基本はロッドの反発力を利用すること。ササキの場合は腕力で無理やり飛ばしてたから、飛距離がでないし、精度は落ちるし、おまけに疲れる。イコール、釣れないってことになっちゃうんだよ。
Y グラスロッドという選択肢はどうなんでしょうか。
幸二 近距離なら楽に投げられるけど、ねらうスポットからディスタンスをとる俺のスタイルには辛いものがあるな。それに、このTF─GP62CML─Jなら、スピニングで扱うような小型クランクから、3mくらい潜るモデルまで、コレ1本でいけちゃうからね。
S ナイロンラインを愛用されているのはなぜですか?
幸二 フロロカーボンラインはクセがつきやすくて飛距離が安定しないし、沈んじゃうからゆっくり巻いたときにラインが水中の障害物に掛かっちゃう。逆に軽いPEは水面のゴミを拾いやすい。
「根掛かり回収器は絶対に持っておくべき。水深を計るときや、シャローで座礁したときの脱出ツールとしても活躍するからな」
Y ナイロンは初期伸度(※編注…瞬間的に力を掛けたときの伸び率)が高くて、アワセが決まりにくいということはありませんか?
幸二 いや、それがバイトを弾きにくいっていうメリットになるんだよ。さらにティップを軽く曲げた状態でリトリーブすると、ロッドの弾性とラインの伸びの相乗効果で、フックをバスの口にまとわりつかせることができる。それから腰をグイッと横に回して、回転半径の大きい(ストロークの長い)アワセをすれば、ラインの伸び率が高くても確実に掛かる。そんなこんなで、これが今のマイ・ベストセッティングなんだ。
Y そのベストセッティングをササキも使う、と。もう道具のせいにはできないな?
S ……。
夕マヅメは河口部へ戻り、朝に釣らなかった東岸へ。
幸二 このエリアは岸際の水深は30~50㎝。岸から10mくらい沖まではシャローフラットになっていて、その先にストンと落ちるブレイクがある。岸際は浅いから、ブレイクをメインに探ってみようか。
S でも幸二先生、朝イチに対岸を釣ったときは岸際がよかったですよね。
幸二 うん。対岸は岸際から深いからね。今日の釣れ方から考えて、中層に浮いているバスが多そうだ。でもこっちの岸際は浅すぎる……。とすると、バスがつくのは、沖の沈み物の上やブレイクのショルダーだな、と、こう推理するわけだよ。
S 目からウロコです……って、きた! いや、ゴミか!?
Y ゴミだろ……って、バスだっ!
S つ、釣れたどーん! 幸二先生、バスでしたぁ!
S、ついに釣った! ノーネイム・クランク♯1でブレイク上のフラットを引くと、まるでゴミを釣ったかのような生命感のない重みが乗った。バスがクランクをエサだと捉えている場合、このようなバイトが出やすいという
幸二 おめでとう! それにしても、危なっかしいファイトだったな。フッキングができてなかったぞ。
S ロッドを立ててリトリーブしてたから、アワせる余地がなかったんです。ゴミだと思ったし。
幸二 疑わしきはすべてアワせる姿勢でいい。ルアーの振動が消えるだけの、わかりにくいバイトもあるからね。
Y ということは、リトリーブ中のロッドの位置にも気をつけなきゃいけないんですね。
幸二 そうだな。ティップはできるだけ水面に近付けておいて、バイトがあったら腰を横に回してアワセるんだ。
Y ティップと水面を近付けるのはなぜですか?
幸二 空中と水中だとラインにかかる圧力が違うから、ロッドポジションが高いままアワせると水面を境にラインが折れちゃうんだ。すると、そこがクッションになってフッキングパワーをロスする。
S じゃあ、今の僕みたいに、浅いところをロッドを立てて引いてる場合はどうすればいいんでしょうか。
幸二 ラインスラックを回収しながらロッドを倒して、それから同じようにアワせればいいよ。
S わかりました……ん? おおッ!? また釣れました! いや、やっと運が巡ってきたって感じですかねぇ。
勢いに乗るSは35㎝のナイスフィッシュをゲット。「下から突き上げてきました。ブレイクのショルダーに浮いていたんでしょう」と饒舌
Y ……チッ(タックルのおかげだろ)。
S あれっ、先輩、何か言いましたか? 幸二先生、よーくわかりました。クランキングにおいてタックルがいかに重要かが。そして(チラッとYを見ながら)腕も……、あ~ひゃっひゃっひゃ。
幸二先生の指導が実を結んだのか、このあともYとSは1尾ずつバスをキャッチ。Y2尾、S3尾と立場逆転。Sはタックルを貸してもらってから怒涛の3連続キャッチである。
ちなみに2004年のオールスタークラシック初日、幸二先生はクランクベイトで2080gと2040gのバスをウエイインしている
Yを勝ち越すSの3尾目。スリーピースではない
幸二先生にならって、YもSもビッグフィッシュをキャッチ!?
S 幸二先生、やっと気持ちが晴れました。あとは……、ビッグフィッシュですね。
Y ビッグフィッシュといえば、幸二先生は毎年のようにオールスターでビッグバスを釣ってますけど、何か秘密があるんですよね。
幸二 秘密なんてないよ。クランクっていうのは、そもそもアグレッシブなバスをターゲットにした釣りなんだ。オールスターが開催される晩秋は水温が低くて小型の活性が低い。だから、ヤル気があるビッグバスを選んで釣ることができる。あえて言うなら、1番の秘訣は、それを信じて投げ倒すことかな。
生徒ふたりが好調なのを見て安心した幸二先生も釣る
S&Y ハイ! 僕らもがんばります。
キャストを繰り返すふたり。するとYに──。
Y 食いましたぁっ! 見ろ、ササキ! このロッドの曲がりを!
S で、でっかい!
ふんぞり返るSを横目にYが決めた。見事な40㎝アップは、この日の最大魚である
Y ササキ~! こ、これがビッグバスの釣り方じゃい! 幸二先生、見事な40㎝アップでササキを粉砕でがんす! ギャッハッハ~!
幸二 おめでとうヤマガタ!ササキよ、やはり先輩の壁は高いみたいだなぁ。
Sの脳内 や、やられた……。尾数は並んでいるけど、このままじゃ明らかに先輩の勝ち。ビッグバス、カモン!
そして、なんとササキにもビッグバイトが!
S !! ボートべりでガツン!! と引ったくられました! うぉ~、引く。このトルク、この重量感、モンスターに間違いないです!
Y ササキッ!絶対にバラすなよ!
S 先輩っ! 応援してくれるなんて……(涙)。申し訳ないですけど、僕は今日、先輩という壁を越えさせていただきます!
Y あぁ、がんばれ。何たって、その魚はお前が憧れている魚だからな。
偏光グラスをかけているYは、裸眼のSより早くその魚の正体に気付いていた。そう、キャットフィッシュである。
S ひでぶ! 憧れの魚とこんな形で会うことになるなんて。なんでこのタイミングなのさ……。
幸二 ササキ、どうでもいいけどデッキに上げずにリリースしてくれよ。
S 幸二先生、お願いです。せっかくなんで、ちょっとだけ話(?)をさせてください。ラインを掴んでっと……、
幸二 ぅうおぉいッ!ササキぃ!! ボートの上でフックを外すな!デッキがヌルヌルだぁ~。だぁ~。ぁ~……(涙)。
「憧れの魚でしたけど、時と場所を選んでほしかった」とSは振り返った
夕暮れの桜川に幸二先生の絶叫が響き渡るなか、実践篇はY3尾(最大42㎝)、S3尾(最大35㎝)で終了。マリーナへ帰着後、キャットフィッシュの体液にまみれたリアデッキを必死に雑巾掛けをするSの目には、うっすらと涙が浮かんでいた。微妙にスッキリしないオチなのは、これが実話だからである。幸二先生、YとSが大変ご迷惑をお掛けしました。
2016/09/26