カワムツは動物食性が強くスプーンやスピナーを使ったルアーフィッシングでも釣れる。西日本では「川ムツング」と称され、コンパクトながら熱くなれる要素がてんこ盛り。タナゴ釣りのような癒しの世界観にアジングのゲーム性を盛り込んだハイブリッドゲームだ
カワムツは動物食性が強くスプーンやスピナーを使ったルアーフィッシングでも釣れる。西日本では「川ムツング」と称され、コンパクトながら熱くなれる要素がてんこ盛り。タナゴ釣りのような癒しの世界観にアジングのゲーム性を盛り込んだハイブリッドゲームだ
その魅力に気づかれず注目度の低いカワムツ
カワムツは清流から都市河川まで幅広い水脈で姿を見る。20cmもあれば大物の部類に入る小魚だが、太い紺色の縦帯をはじめ手に取るとしばし見入ってしまうほど細部が美しい。オスは春の終わりから初秋にかけて真っ赤な婚姻色をまとってメスにアピールする。産卵期を迎えたカワムツは食欲旺盛で、流れてくる川虫や羽虫を口にし、ルアーへの反応も抜群なファイターなのだ。
そんなカワムツのゲーム性に注目して魅力を広く知ってもらおうと情報を発信しているのが、川ムツング伝道師の仲谷聡さんだ。釣行したのは産卵期を控えた4月中旬。本格的に釣れだすには時期尚早とのことだが、春爛漫で水も温み「まあ厳しいなりにボウズはないでしょう」と、京都の南丹市を流れる本梅川を訪れた。
本梅川は大堰川漁協が管理する大堰川(桂川)の支流。カワムツには漁業 権が設定されており、釣るには雑魚の 遊漁券が必要になる。「遊漁券といっても日釣りで400円です。こんな景色のいい場所で一日遊べるわけですから安いものだと思いますよ」と、カワムツ鉄板スポットの園部町林業組合前にエントリーした。ちなみに遊漁券は事前にスマホから買えるので漁協に出向く煩わしさもない。
大堰川の本流は川幅も広い。アユ釣りが解禁になれば友釣りファンも訪れる人気河川だが、浅い砂礫底の本梅川にはアユが薄いのか夏も釣り人の姿は少ない。この日も貸し切り状態でのびのびとルアーをキャスティングできた。京都の奥座敷と称される南丹市とあって山間に田園が広がる里山は日本昔話の景色である。「子どものころは学校が終わったら友達と連れだっては自転車で近所の川や池にザリガニやナマズを釣りに出掛けていましたよね。その延長線上にある大人の遊びですよ」と仲谷さんは川ムツングの魅力を語りながらタックルを準備した
ライトタックルを駆使して繊細な釣趣を味わい尽くす
仲谷さんが愛用しているタックルは、川ムツング用に開発した専用のグラスロッドとアンダースピンリールの組み合わせ。ロッドは5フィートクラスのウルトラライトで「このベロベロな感じが小さなカワムツと遊ぶにはベストマッチなんですよ」とお気に入りだ。柔軟な穂先がカワムツの小さなアタックを弾くことなくフッキングに持ち込み、全体がキレイに曲がってカワムツの抵抗を受け止めてくれる。「繊細な小物釣りの釣趣と、ライトゲームのいいとこ取りをしたのが川ムツングです。例えるならタナゴ釣りとアジングを足して2で割ったような釣りですね」とのことで、カワムツを味わい尽くすために導き出したセッティングとのこと。
アンダースピンリールを使う理由は、レバー操作が簡単で軽量ルアーをコントロールしやすいから。手返しも早い。1g前後のスプーンを多用するので、ラインはしなやかなナイロンの0.4~0.6号を巻いている。年々ラインの性能が向上しており、カワムツを釣る程度なら強度的に充分とのこと。
ルアーはスプーンをメインにプラグやスピナーなど。「当日の状況によっ<て目まぐるしくカワムツの反応が変わるので、なるべく多くの種類を持参しましょう」とのこと。スプーンは0.6~2.5gで揃えておきたい。ちなみに仲谷さんは自作した超小型のスピナーベイトでも釣っているそうだ。釣り方の基本は、ポイントにルアーを通して反応してこなければカラーやシルエットを変えていく。ルアー釣りの基本どおりに派手から地味へとアピール度を徐々に落としていく。エリアトラウトと同じ要領でローテーションさせていけばよい。「当日のコンディションによってヒットに偏りが生じますから、状況にマッチしたと感じるまでどんどんローテーションさせていきましょう」とのこと。釣り方の基本は、ポイントにルアーを通して反応してこなければカラーやシルエットを変えていく。ルアー釣りの基本どおりに派手から地味へとアピール度を徐々に落としていく。エリアトラウトと同じ要領でローテーションさせていけばよい。「当日のコンディションによってヒットに偏りが生じますから、状況にマッチしたと感じるまでどんどんローテーションさせていきましょう」とのこと。
なお、いずれのルアーもフックを小さいものに交換してある。そのままでも釣れなくはないが、フッキング率が極端に落ちるそうだ。以前は小さなフックにスレッドを巻いて自作していたが、より手軽に川ムツングを始められるよう今シーズンからワンタッチでフックアイにセットできる専用の小バリをリリースするとのこと。スピナーやスプーンの入門セットもリリースを予定している。痒いところに手が届くようなアイテムをリリースしてくるあたり、仲谷さんの本気度が伺えた
淡水の小物ゲーム用にリリースされる環付きの袖バリの「ウルトラコンパクトフック」があれば、わざわざフックを自作する必要もない。ゴールデンミーンより発売予定
なお、風や流れなどの条件に応じてマッチするルアーは異なるが、基本的にルアーを軽くするほどスローに巻けてシルエットも小さくできるのでアタリが増える。ポイントに入れられる重さでできる限り軽いルアーを結ぶことが釣果の秘訣だ。
稚魚の反応を見ながらルアーを合わせていく
水際に立った仲谷さんが最初に結んだのはゴールド系の明るいスプーン。対岸のボサ際に落として、流れに乗せながらゆっくりリーリングしてようすを伺う。仲谷さんは川のあちこちに群れているカワムツやオイカワの稚魚の反応を状況判断の目安にしているそうで、スプーンの後方を注視する。目を凝らすとルアーの後方に小さな魚が無数についてきていた。「スプーンの選択は間違ってはいませんね。その周辺に大人のカワムツがいればヒットしてきますよ」と同じエリアにキャストすると、すぐにコツンと穂先が押さえ込まれた。「やっぱりいましたね!」と優しく足もとに寄せてくると、小さなオイカワが水面を割った。
オイカワもゲームの主軸を担う好ターゲット。「まずは1尾ですね」と嬉しそうに川に戻した。なお、同じポイントに繰り返しキャストすると稚魚の反応が鈍ってくるので、サイズやアクション、カラーを変えるか、少しポイントを移動してキャストする
釣りの手順は渓流釣りと同じ。アップクロスやアップでテンポよく探っていく。メインで使うスプーンが0.6~1gと軽量なので、ダウンだと浮き上がってしまう。アップ気味に入れて流れに乗せながら川を横切るように探ってくると、カワムツたちも反応しやすいようだ。もちろん攻め方は流れや水深に応じて調整していく。このあたりのパズルゲームが実におもしろい。それでいて敷居は高くない。テクニカルな面を持ちながら、実に牧歌的な釣りだ。これは確かに癒される。仲谷さんは稚魚をバロメーターにしながら上流に探り歩いていった。
夕マヅメに時合に突入し納得の20cmクラスが水面を割る
カワムツは快適な場所を求めて川を移動しているので、的確な川読みが釣果の鍵を握っている。春や初冬は流れが弛んでいるトロ場、夏から秋は流れのある場所に身を寄せる。また、涼しい朝は水温が上昇しやすい浅くて拓けた流れの緩いエリアがねらいどころ。時期的に早かったこともあり、この日は水量のあるエリアにカワムツの姿はなかった。
目ぼしいポイントの奥にアップクロスでキャストしたら、ルアーを浮き上がらせないようテンションに注意して流れに乗せながらゆっくりリーリング。余分に巻き取らないさじ加減が秘訣とのこと。ここでもギア比の低いアンダースピンリールが威力を発揮する。後方から魚影がチェイスしてきてもルアーを止めなければ、地形の変化点に差し掛かったところでアタックしてくるそうだ。
対岸寄りの深みにキャストして誘ってくると、中州状に浅くなってきたところでギラリと魚が身をひるがえし、同時にサオ先がクンと入った。30cmもないような浅場でヒットするので、アタックしてくる瞬間も丸見えだ。やはりサイトでのヒットは面白い。ヒラヒラと水面直下を泳いでくるスプーンが目の前で引っ手繰られる。実にエキサイティングだ。繊細な釣りなのでアワセは軽く手首を返す程度。「カワムツ相手にバシッと合わせたら飛んできちゃいますよ」と笑いながらも慎重に寄せて本命のカワムツをキャッチした。「川ムツングは数日前から計画を練って当日の朝一から気合いを入れてフィールドに繰り出すような堅苦しいものじゃなくて、午後から暇だし夕方までどこかに遊びに行こうか……みたいなノリで楽しんでほしいお気楽な釣りなんです」
仲谷さんはしばらくカワムツを眺めてからリリースした。小型魚ながら「釣った」を実感できるので1尾1尾に満足感が得られて癒されるという
夕マヅメを迎えて無風になると、川のそこいらじゅうがカワムツの波紋で埋め尽くされる。どうやら羽虫を捕食しているようだ。「いかにも釣れそうですね」と、20cmクラスを求めてキャストを再開した。すると1回のキャストで何回もアタックしてくるほどカワムツの活性が上がっていた。
何尾かキャッチしたところで軽く根掛かりしたので、次は底に当たらないよう少しサオを立てて同じコースにスプーンを引いた。すると再び根掛かり。「おかしいですね……」とサオを軽くあおったところでグンとサオごと持っていかれた。「魚でしたわ(笑)。これはいいサイズですよ。20cmあるかも!」と慎重にファイト。最後まで抵抗していたタモに収まったのは、丸々と太って体高のある見事なカワムツだった。この会心の1尾を手にした仲谷さんは満足してサオを置いた。
「少しでも川ムツングの魅力が伝わればいいのですが……」とのことだったが、仲谷さんの脇でカメラを構えてずっと釣りを眺めていて、まったく飽きないほど面白かった。まさしく癒しと熱さを兼ね備えたハイブリッドなライトゲームだ。これは誰もがハマるに違いない。
※このページは『つり人 2023年7月号』を再編集したものです。
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