川も海も湖も、 釣りを始めたいすべての人を応援する総合釣りサイト

自然に人の手を加えることの是非 「手助け」でもダメなのか? :前編

短期集中連載 池の水ぜんぶ全部“は”抜くな! :第3回

つり人編集部=レポート
ike_04
人間の都合で持ってきた生きものを、同じく人間の都合で、今度は駆除する……。
外来種というのは、本当に駆除すべきワルモノなのか?
今回は、生きものたちにとって、人の手を加えないのがベストなのかどうかを考えたい。


◆関連記事 短期集中連載 池の水ぜんぶ全部“は”抜くな!
・第1回「池田清彦先生に聞く外来種問題の現在」前編後編
・第2回「我々は「手つかずの自然」を取り戻せるのか?」前編後編
・第3回「自然に人の手を加えることの是非 「手助け」でもダメなのか?」前編後編

人の手が加わった環境


 学生のころ、記者はナゼか水生昆虫のタガメに興味を持った。その生態を研究しようと思い、生物学の先生に相談したことがある。生きものを研究するのだから、当然理学部の生物学科に行くのが筋だろうと思っていたら、すすめられたのは農学部だった。

「農地に多くいる昆虫ですから、あまり理学部では研究されていないようです。農学部のほうがいいですよ」

 いろいろ調べてくれた先生は、そう教えてくれた。実際、当時タガメを研究していたのはとある農学部の研究室だった。結果的にそこにお世話になったのだが、そのことはずっと後まで不思議な印象として脳裏に刻まれた。

ike_01 水田に多く生息するタガメ。といっても今は数を減らしていて、なかなか目にする機会はない

 なぜ理学部の生物学科では、農地にいる生きものをあまり扱わないのか? たしかに作物や畜産物そのものは、もちろん農学部で研究されている。さらに害虫などについても、やはり農学部で扱われることが多い。しかしタガメは、単に水田に多くいるだけで、特に害虫でもない(養魚場では害虫扱いされていたが……)。もちろん池や川にも生息している。理学部で研究されるのか、それとも農学部で研究されるのかの区別が、いまいちよく理解できなかったのだ。

 今考えてみると、やはりその背景には、人の手が入っているかどうかが関わっているようだ。

 水田というのは、人の手で作られた環境だ。そこに多くいる昆虫は、「自然の状態で」生きているとは言いにくい。いわゆる自然のなかで生きる生物と、そうでない生物の間には、どうも見えない壁があるようだ。

ike_02 心が和む棚田の風景。人が作ったものであるのは間違いないが、タガメやゲンゴロウ、トンボなどの水生昆虫や、魚類、さらに周囲に棲む鳥類やほ乳類も含め、里山の環境に支えられて生きる生きものは多い

 外来種の定義では、人の手で運ばれたかどうかが問題になる。人が運んだのか、あるいは自然に運ばれたものかは、外来種かどうかの線引きの基準になる。この考え方は、前述のようにタガメを理学部で研究するか、農学部で研究するかの違いと似ている。

生きものを手助けする


 前回書いたように、どうも多くの人の心の中には「手つかずの自然」こそがすばらしい、という思いがある。正直に書けば、それは記者自身も同様だ。だが、それが実際にあるかどうかは別問題。少なくとも私たちが目にする範囲では、純粋な意味で「手つかずの自然」はまずない。

ike_03 道のない川を何時間も歩いた先でも、このようなナタ目を見ることが多い。日本には、純粋な意味での「手つかずの自然」はほとんどないだろう

「手つかずの自然」を取り戻そうとするのは、すなわち人の手で運ばれた生きもの〝外来種〟を排除しようという考え方につながる。しかし一方で、手つかずの自然はもうないし、仮にどこかの池で外来種を排除できても、それで手つかずの自然に戻るわけではない。であるならば、ある程度は人の手が加わることを認めてはどうなのか?むしろ人の力で、生態系が豊かになるよう手助けできないものなのか? 今回はそのあたりを中心に話を進めてみたい。

堰堤の上に魚を移動させるのは?


 釣り人ならご存知のように、現在多くの川では、アユや渓流魚などを増やすための活動が行なわれている。放流はもちろんそのひとつ。だが近年は、その方法も少しずつ改善され、たとえばアユなら産卵床の造成や、魚道の研究・整備、汲み上げ放流なども行なわれている。

 人の手が生物を移動させるのが問題だとしたら、堰堤でソ上できないアユを汲み上げるのはどうなるのだろう? たしかに人の手で移動させたのは間違いないが、そもそもアユのソ上を阻害する堰堤を作ったのは私たちだ。

 産卵床の造成もしかり。人間の活動によってアユが産卵できる場所が減った今、それを人の手で作り出すことは、はたして問題なのか?

 人口がここまで増え、その活動範囲が国内の隅々まで及んでいる今、その他の生きものも、人間の活動と切り離すことはできない。そのような現状では、人の手が加わることは、ある程度認めるべきではないだろうか。人が運んだ=悪ではなく、さまざまな観点から評価する必要があるはずだ。

後編に続く……


この記事はつり人2019年6月号でも読むことができます



 

外来種問題をさまざまな角度から掘り下げる1冊

 


定価:本体1,000円+税
四六判並製128P




 

つり人2019年6月号 4月25日発売!

 


特集は「渓流 小川 堤防 地磯 ゴロタ浜 とびきりのポイント見つけよう! 穴場探釣」。まもなくゴールデンウイーク。夢の10連休という人も、多少は休めそうという人も、次の休日は、新しい釣り場に足を向けてはいかがだろう。川も海も、季節がよくなり、人出も増える季節。その中でも、視点を少し変えたり、歩く労力をいとわなければ、理想的といえる釣り場は、意外なほど身近にある。巻頭の舞台は東京都の奥多摩、小川谷、大丹波川。ゴールデンウイークでも、都心部から渋滞を気にせず行けるこのエリアには、きれいなヤマメやイワナが棲む支流が数多くある。そのほか、伊豆、三浦の穴場攻略、真鶴の空撮ガイドなど充実の内容でお届け。



2019/5/7

つり人社の刊行物
池の水ぜんぶ“は”抜くな!
池の水ぜんぶ“は”抜くな! 本体1,000円+税 四六判並製128P
外来種だからといって、すべてを駆除するのが正しいのか? 本書ではさまざまな例を挙げ、声高に叫ばれる「外来種=悪」という単純な見方について疑問を投げかけます。外来種問題に詳しい池田清彦先生の解説に加え、「外来魚駆除」から「外来魚お引っ越し」へ…
釣りあそびジャーナル 骨抜きの達人Ⅲ
釣り人道具店


つり人社の刊行物
池の水ぜんぶ“は”抜くな!
池の水ぜんぶ“は”抜くな! 本体1,000円+税 四六判並製128P
外来種だからといって、すべてを駆除するのが正しいのか? 本書ではさまざまな例を挙げ、声高に叫ばれる「外来種=悪」という単純な見方について疑問を投げかけます。外来種問題に詳しい池田清彦先生の解説に加え、「外来魚駆除」から「外来魚お引っ越し」へ…
釣りあそびジャーナル 骨抜きの達人Ⅲ
釣り人道具店

最新号 2019年9月号

特集は「やってみたい釣り、行ってみたい川、全部これでOK 夏の川釣り超入門!」。 どんよりとした梅雨が明ければ、いよいよ夏の日差し。最近は困った猛暑も多いが、ひんやりとした流れに浸り、川を棲み処とするたくさんの生きものと触れあえば、大人も子どもも分け隔てなく眩しい季節の一部になれる。テーマはずばり「川ガキに戻ろう!」。ちょっと乱暴なその呼び方には、忘れたくない溌剌さ、元気、夢中で遊び回る大切さが込められている。ターゲットはヤマメ、アマゴ、イワナ、アユ、カジカ、オイカワなど。そのほか、天然ソ上が好調な日本側のアユ釣り最新情報、読めばクールダウン間違いなしの水辺の怪談、釣りエサのひみつなどをお届け。 
[ 詳細はこちらから ]

オンライン書店Fujisan.co.jp

つり人最新号を、毎号、発売日当日までにお手元にお届けいたします。 (地域や交通事情によって発売日より遅れて届くことがございます。予めご了承ください。) 送料は全国無料。印刷版、デジタル版共に1冊から定期購読がはじめられます。 店頭で売り切れてしまったり、忙しくて買いそびれる、という心配もありません。
定期購読をお申し込みいただくと、デジタル版の最新号からバックナンバーまで約1年分が無料で読めます。

[ 定期購読はこちらから ]

 

読み込み中