『SEABASS Life NO.12 春号』の特集は「道具で釣りはどう変わる?」。今号の特集記事の中からイチオシ記事を特別公開! シーバスゲームを追求するにはこの上ないアイテム、『フラッシュブースト』と『NEWステラ』。何がどう変わるのか? 革命ってどういうことなのか? アングラーサイドからのダイレクトな言葉を聞いた。
スピニングリールというものの基本構造が変わってしまった
編集部=文
『SEABASS Life NO.12 春号』の特集は「道具で釣りはどう変わる?」。今号の特集記事の中からイチオシ記事を特別公開! シーバスゲームを追求するにはこの上ないアイテム、『フラッシュブースト』と『NEWステラ』。何がどう変わるのか? 革命ってどういうことなのか? アングラーサイドからのダイレクトな言葉を聞いた。
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解説◎嶋田仁正
理論派ランカーハンター。マルジン代表。広島在住
気付かないほどの地味なイノベーション
3年前、嶋田はあるリールを手渡されて「投げてみて」と言われた。そして、1投目でいい意味での違和感を覚えることとなる。
「“あれっ?”って1投目で気付いたよ。ちょっとギアが変わったとか材質が変わったとか機能が増えたとか……そんな中身のことはわかんないし興味ない。そんなんじゃなくて……これまでと何かが大きく違ってた。ルアーが超スムーズに飛んでいって驚いたから。衝撃的だったね」
そして、投げて巻くほどに、これまでのステラとは一線を画すものだと悟ったという。
「ひとつひとつのパーツにイノベーションが起きてスピニングリールの基本構造が変わった。ハンドル巻いてギアが動いてシャフトが上下してラインを巻き取るっていう基本動作に変わりはない。でも、これまでのスピニングリールとはまったく別ものになった」
ミレニアムステラ(2000年)はハンドル7回転でスプールが上下1往復していたが、今回のニューステラは8回転半とさらにスローになったスーパースローオシュレートシステム。つまり、これが超密巻きを実現しこれによりあらゆる副産物を生み出すこととなった。進化ではなくイノベーションだと。新機軸となるニューステラ。これによってシーバスゲームはどう変化していくのだろうか
その軸となるのが、スーパースローオシュレートシステム。その機構によって実現した超密巻きを可能としたインフィニティーループ。ハンドル8回転半でようやくスプールが1回上下運動するというスーパーロースピードによりラインが超密に巻けるわけだ。これはすぐに視認できる。明らかに遅い。これにより、スプール面に並べるように整然に巻かれたラインは抵抗なく出ていくため、放出スピードも上がることになる。
「密巻きといえばミレニアムステラ。それはそれで、よかったんだよ。糸巻き量を減らせば問題はなかったからね」
今回のステラが克服したのは、エアノットだという。
「エアノットって、どうやったら起こるかわかる? 一番の原因は、ラインのスプールまたぎ(スプールの上にラインが乗ること)なんだよ。これは気付いてないだけで、想像以上に釣りしてる時に何回もなってることが多い。ずっと、手元を見て釣りしてないからわからないだけでね。ラインがスプールに乗っかったまま次のキャストするとエアノットができてトラブルになる。でも、このエアノットがアンチツイストフィン(ラインローラー部のすぐそばに設置されたフィン)によって解消された。解消だよ。なくなったわけ。これもまさにイノベーションだよ。これも数値化はできないけど……なくなるんだよ! これもアングラー側の諦めのひとつだった。こういうもんでしょって。ストレスと感じないようにしてる人もいる。でも、なくなれば、それはそれで気付かないもの。地味なんだよ。でも、すごいことなの」
新形状のAR-Cスプールはスプールリングとドラグノブの角度を改めることで、エアノットを解消することに成功した
ラインローラー下部に弾性のフィンを配置。ラインのたるみを軽減することでエアノットなどのライントラブルを解消してくれる
普通に何も起こらない日常のように、いわゆる平和ボケしてしまうとそれを当たり前に感じてしまうもの。感覚というものはすぐに鈍ってしまう。少しのトラブルによって、今までその手を止めていたのに、それが知らぬ間になくなっていると、それまでのことを忘れて現状を普通と捉えてしまう。ニューステラはそんな地味ではあるが、時代を静かに大きく変えるようなイノベーションを成し遂げている。
「それらをねらってやったんじゃなくて、どれも副産物として生まれたもの。付加価値として、あらゆるところがよくなっていった。それが、すごいよね。まだあるから……密巻きにしたことで、ドラグの滑りもすごいよくなった。それも1尾目掛けた瞬間にすぐわかったよ。ちなみにドラグワッシャーは従来の10倍の強さのデュラクロスになったけど、シーバスでそこまではわからない。それは大物釣りで発揮されるんだろね」
そして、話はロッドの話に逸れる。
「昔ね、他社でロッドを作ってた時に小口径ガイドのシーバスロッドを作ったの。それはPEラインの時代になったからそうしたんだけど、小口径にすることで元ガイドの脚も低くなるからラインの放出角が浅くなるでしょ。それによって飛距離が伸びる。
そこで、『エクスセンスジェノス87L+/Fダークフォース』でも、小口径ガイドにしてもらった。それは、すでにこのニューステラをテストしてる段階だったからなんだよ。ちなみに、他のリールをこのロッドにつけるとティップに糸が絡んでしまう。でも、それって普段から皆も起こってるでしょ。頻度としてもその程度なんだよ。リールの説明でも話したのと同じように、これまで当たり前に起こってることのひとつなんだよ。
でも、ニューステラでキャストすると、そのティップへの絡みはなくなるんだよ。それ、すごくない? でも、そのこともわざわざ言ってあげないと誰も気付かないんだよ。そんなレベルのトラブルってこと。でも、そんなのないほうがいいでしょ。地味なんだよ。でも、すごいことなの!」
地味を連発する嶋田だが、それくらいストレスフリー。ステラだから当然、というわけではない。イノベーションされたニューステラだからこそのすごさといえる。その平和を実感していただきたい。
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