渓流釣りの世界でよく耳にする「適水勢」と「ナチュラルドリフト」。どちらも基本中の基本だが、意外と誤解しているかも……。今さら聞けない2つのキーワードについて、ここでちょっと掘り下げてみたい。
「適水勢」と「ナチュラルドリフト」について整理
写真と文◎編集部
こちらの記事は月刊『つり人』2020年4月号に掲載したものをオンライン版として公開しています。
渓流釣りの世界でよく耳にする「適水勢」と「ナチュラルドリフト」。どちらも基本中の基本だが、意外と誤解しているかも……。今さら聞けない2つのキーワードについて、ここでちょっと掘り下げてみたい。
目次
自然に流すかそれとも誘うか?
テンカラ釣りでは、自然に流すのがいいか、それとも誘いをかけるべきかで悩むことがある。渓流域で釣りをする場合は、どちらかといえば「自然に流す派」が多い。特にドライテンカラの場合はその傾向が強いようだ。自然に流して反応がなければ誘いを入れてみるなど、奥の手として使うケースが多い。
一方、本流域でテンカラ釣りをやる人は、「誘いを入れる派」が増える。特に逆さ毛バリを沈めて釣る場合、誘いを入れるとハックルがふわふわと動くので、効果的だという。
それでは、エサ釣りの場合はどうだろう? おそらくほとんどの人は、自然に流すことを心がけているはずだ。自然に流下する川虫を模しているのだから、当然ともいえる。
しかし、エサ釣りで誘いが有効でないかといえば、必ずしもそうではない。「誘引(ユウイン)釣法」を提唱する福田和彦さんも、その名のとおり誘いを使う釣法を確立している。
※誘引(ユウイン)釣法とは、エサを水面直下で逆引きして誘う「引き釣り」、川底から水面までエサを誘い上げる「ウエット釣法」、中層から川底へエサを落とす「止め釣り」を組み合わせて魚を誘う釣法のこと
誘引(ユウイン)釣法を実践する福田和彦さん。本人もナチュラルドリフトが基本だと言うが、誘いを取り入れることで釣りのバリエーションは広がる (Photo by S. Ura)
羽化の時には浮き上がることも
エサ釣りの基本とされるナチュラルドリフトは、そのまま日本語にすれば分かるように、自然に流すための技術。ここでいう自然とは、死んでいたり弱ってしまった虫、あるいは遊泳能力のない陸生昆虫などが、流れに揉まれて流下するようすをさすはずだ。
一方で、川虫のなかには遊泳能力のある種類も多い。というか、死んでいなければどの虫も多少は動くだろうし、なかにはかなりの速度で泳ぐものもいる。そのようすを模すというのは、別に不自然ではない。特に水生昆虫が羽化するシーズンには、水中から浮上する種類は多いので、エサを浮き上がらせる誘いは有効なはず。実際、流し終わりでエサを浮き上がらせて釣る人は多い。
ライズする魚は、エサ釣りでは釣りにくい。誘引(ユウイン)釣法では、このような魚をねらうことができるという
動くエサは食べにくいという問題点
「だったら積極的に誘いを入れていいんじゃない?」と思うが、ひとつ大きな問題がある。それは、魚にとって食べにくいということ。
ドライテンカラで自然に流す派が多いのは、毛バリを動かすと魚が食べ損ねる確率が増えるからだ。毛バリをチョンチョンと動かしてみると、魚が出ないことはないのだが、フッキング率はかなり下がる。逃げる虫のような動きだから当然だ。だが毛バリを沈めると、誘いによって食い損ねるようには感じない。だがもしかしたらそれは、食い損ねる瞬間を見ていないだけで、実際には水中でも何度も毛バリをくわえようとしているのだろうか……。
エサ釣りでもおそらく、不規則に動くエサは食べにくいはず。その点が心配されるが、たとえば川虫が羽化する時期などは、誘いを積極的に試しても面白いかもしれない。
誘引(ユウイン)釣法の福田さんは、誘引(ユウイン)釣法はライズをしている魚にも効果的だという。水面のエサを意識した渓流魚は、エサ釣りでは釣りにくいもの。今シーズンは渓流釣りのオプションとしてひとつ、誘いを入れてみてはいかがだろうか。
福田さんはフライフィッシングの経験者でもある。ウエットフライの釣りなどから、ユウイン釣法のアイデアは生まれたそうだ (Photo by S. Ura)
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