編集部2016年6月12日

田辺哲男のスピナーベイト道場 :第6回(最終回)

Basser バス釣り

バックシートでひとり連発し、絶好調のS。 田辺先生はその理由を冷静に分析しこの日の答えを導き出した。 ひと口にスピナーベイトといってもタイプが違えばこんなに差が出る!

先生、僕も早く釣りたいです!

生徒ササキがバックシートで連発した理由

編集部=写真・文、もりなをこ=イラスト

バックシートでひとり連発し、絶好調のS。 田辺先生はその理由を冷静に分析しこの日の答えを導き出した。 ひと口にスピナーベイトといってもタイプが違えばこんなに差が出る!
編集部員がエキスパートに入門し、座学と実践で免許皆伝を目指す 『Basser』の人気連載をピックアップ
※この記事はBasser2009年11月号に掲載されたものを再編集しています


tanabe 講師=田辺哲男(たなべ・のりお)

1958年7月9日生まれ。1980年代に本場アメリカのバスフィッシング理論やテクニックを吸収し、日本に持ち帰ったアングラー。1986年発行の本誌創刊号に「パターンバッシング」を寄稿。その内容は今もまったく色褪せることがない。1998年からB.A.S.S. に参戦し、自身が生みの親であるクリスタルSを駆使して数々の実績を残した、理論派であり実践派。スピナーベイトをメインパターンにして初日2位にランクインした2015年のバサーオールスタークラシックが記憶に新しい。

yamagata 生徒=ヤマガタ
小学校6年生の冬に、山形の城跡の堀でバイブラシャフトで釣ったのがスピナーベイトでの初バス。「雪が降ってる日に釣れるはずがないと思って、根掛かりしにくいから、という理由で投げてたら釣れました」。以来、地元ではスピナーベイト派だったが、千葉へ越してきてからはクランクベイト派に。ちなみに「ヤマガタ」は新人時代に付けられたニックネーム。『Basser』編集長。


sasaki 生徒=ササキ
小学校6年生の夏に、広島の山間部の野池でデルタフォースで釣ったのがスピナーベイトでの初バス。「足もとのカバーから飛び出してきて食う瞬間が見えました。あのときの興奮は忘れられません」。以来、東京へ越してきてからも一途なスピナーベイト派で、一日中投げ続けることもある。2015年4月のH-1グランプリ新利根川戦でスピナーベイトを使って2位に入賞できたのはこの道場を受けたおかげ。

スピナーベイド スピナーベイトとは……ブレード、ワイヤー、ヘッド、スカートで作られたルアー。水中で引くとブレードが回転し、光の反射と振動でバスを誘う。フックの前方にワイヤーがあるので根掛かりしにくい

 

「キーは〝弱め〞じゃない、
  〝ゆっくり、ふわふわ〞だ!」

正午。ベイトが少ないためボートをUターンさせ下流へ向かう。道中、田辺先生が1尾追加(ヒットルアーはディーパーレンジ3/8oz)し、ヤマガタはまたまたまたまた(※4回目)バラしてしまう。バイトはいずれもショアライン沿いのカバー周りだった。そして3人を乗せたトライトンはふたたび河口へと戻ってきた。
 
田辺06田辺 んっ? 流れが、止まってるな……。利根川本流が満水になって、逆に水が流れ込んできたからだな。
 

 
b_y6 そ、そんなぁ、田辺先生ッ! 僕にノーフィッシュで帰れと?
 

 
b_t01田辺 大丈夫。相変わらずベイトは騒がしいだろ? さぁ、ここはさっき俺とササキがダブルヒットしたスポットだ。ほかの場所よりも浅くなってて、なぜかベイトが一段と多い。
 

 
すると──。   
 
田辺哲男のスピナーベイト道場:タイニークリスタルでヒットベイトの少なさを理由にUターンして河口部へ舞い戻る。ここでササキが火を吹いた!
「またタイニークリスタルです!」
 
田辺哲男のスピナーベイト道場:またまたタイニークリスタル!フロントデッキの田辺先生とヤマガタを差し置いてササキが連発。「午前中よりも流れがないから、タイニーくらい弱くしないと食わないのか?」と田辺先生を悩ませ続けた
「またまたタイニー!」
  
田辺哲男のスピナーベイト道場:実はクリスタルS1/4ozここで田辺先生があることに気付く。ササキが「タイニークリスタル」と言い張っていたのは勘違いで、実はクリスタルS1/4ozだったのだ。ここから田辺先生の推理が冴え渡る

b_s6  んんっ! 先生ッ! そのとおりでした! 2尾目です。
 
b_t04 田辺 やるじゃん。ルアーは?
 
b_s6 またまたタイニークリスタ……っと、またヒットです! こりゃもう、どうにも止まりません。
  
b_t01田辺 バックシートで2連発か。お前、すげぇな。
  
b_s4  だろ?
 
 

b_y6 ちょ、調子に乗りすぎだっつーの! 田辺先生、キャストはササキより決まってるのに、何で釣れないんでしょうかあッ!?
 
b_t02田辺 たしかに、何でだ? 俺とヤマガタのディーパーレンジ3/8ozには食ってこない……、ディーパーレンジでも強すぎるってことか?
  
b_s3 ふふふ、自分でも恐ろしいくらい……、うっ! ああ、また釣れてしまいましたよ。20㎝ほどですがね。
 
b_y6 ギャーーーッ!!
 

 

田辺先生と憎きヤマガタの前で怒涛の3連発。アドレナリン出すぎのササキ、焦りがピークに達したヤマガタ、ともに人格が壊れ気味である。しかし、田辺先生だけは冷静だった。
 
b_t02田辺 そのタイニー、ちょっと見せてみろ……。ササキ、これはタイニークリスタルじゃない。クリスタルSの1/4ozだ。
 
b_s2 ええっ!? つまり僕はずーっと勘違いしてたと?
 

 
b_y1 そして僕たちを騙していたってことになりますね、先生?
 

 
b_t01田辺 まぁ、間違ってたものはしょうがない。クリスタルS1/4ozか……、わかった! パズルが解けたよ!
 
b_y3 パズル? どういうことでしょうか?
 

 
田辺哲男のスピナーベイト道場:ディーパーレンジ3/8oz(上)とクリスタルS1/4ozディーパーレンジ3/8oz(上)とSがタイニークリスタルと思い込んでいたクリスタルS1/4oz(下)

b_t04田辺 俺たちはササキがずっとタイニークリスタルを使ってたと思ってたよな? だから、同じく弱めのディーパーレンジを使ってた。でも、河口部に戻ってきてから俺たちにはバイトさえなくて、バックシートのササキが3連発。普通だったら「ディーパーレンジでも強すぎる」と判断するしかない状況だ。
 
 
b_y3 それが、実はクリスタルS1/4ozだったと。
 

 
b_t07田辺 そう。俺たちが投げてたディーパーレンジ3/8ozと、ササキのクリスタルS1/4ozを比較しよう。クリスタルS1/4ozは軽いし、動きも強めな分、浅いレンジをゆっくり引けるんだ。今日はゆっくりふわふわ……、これだよ! キーは〝弱さ〞じゃなかったんだ。
 
 
b_s4 でも、先生は午前中にディーパーレンジ3/8ozとクリスタルS3/8ozでも釣ってますよね?
 

 
b_t01田辺 それは〝流れ〞があったから。今は流れが止まってるだろ? レンジとスピードをシビアに合わせないと食ってこないんだよ。ともかく、ササキ! お前はスゴイ! 今日のゲームのカギを教えてくれたよ。
 
 
b_s6 た、田辺先生に褒められた! 生きててヨカッタ!! 先生、僕はたった今、スッパーの星を目指すことを決意しました!
 

 
意外なところからゲームのヒントを得た田辺先生。ルアーをディーパーレンジ3/8ozからクリスタルS1/4oz……ではなく、シャローロール3/8ozにローテーションする。  
 
b_y3 クリスタルSの1/4ozじゃないんですか?
 

 

b_t01田辺 持ってないからな。というか、あえてボックスに入れてないんだよ。ゆっくりふわふわがキーだとしたら、バスを引っ張る力がより強いシャローロール3/8ozのほうがハマるはずだからね。さぁ、答え合わせだ!
 
 
田辺哲男のスピナーベイト道場:シャローロール3/8ozをセットした田辺先生にヒット!「勘違いしてたよ。今日のキーは“弱め”じゃなくて“ゆっくり、ふわふわ”。ササキがバックシートで3連発したのは、ひとりだけ浅めのレンジをゆっくり引けていたから。じゃあ、これならどうなんだよ?」とシャローロール3/8ozをセットした田辺先生。答えはすぐに返ってきた!
 

答えはすぐに出た──。田辺先生が立て続けに2尾をキャッチしたのだ。

 
b_t01田辺 ピンポンだ! いやぁ、こういうゲームが1番面白い。まるでパズルだろ? ひとりで釣りしてたら気付かないよな。
 
田辺哲男のスピナーベイト道場:田辺先生が連発シャローロール3/8oz に変えたとたん、田辺先生が連発。まるでパズルを解くようにルアーを合わせた結果

 
b_y2 は、はい。でも先生、同じシャローロール3/8ozを投げているのに僕には釣れません……。
 

 
b_s2 僕もです。あの勢いはどこへ?
 

 
田辺哲男のスピナーベイト道場:ヤマガタにもササキにもバイトはないノーフィッシュのヤマガタも当然シャローロール3/8ozにチェンジ。しかし、「俺のシャローロールがバスを引っ張っちゃってる」と田辺先生が言うとおり、ヤマガタにもササキにもバイトはない


b_t01田辺  それは、俺のシャローロールがバスを引っ張ってきちゃってるから、だな。ルアーが状況にマッチしているからこそ、釣り残しが少ないってことだ。ところで、もう時間がない。最後は本流をチェックして帰ろう!
 
b_s3 ハイ!!
 

 
b_y6 ひゃ、ひゃい……。
 

 

根木名川を出た午後3時時点の釣果は田辺先生が5尾、Sが4尾、そしてYが0。
 

「釣れない理由はすべて自分。
  そういう状況が理想だな」


 
b_s6 先輩、コレでも食べて元気出してください! 応援してますから! ハイ、これ。サンドイッチですよ〜。ぷぷっ(笑)
  
b_y6 お、お茶目が過ぎるんじゃないのか、ササキィ!? 俺は絶対サンドイッチマンなんかにはならねぇからな!(※サンドイッチマン:3人同船のボートで真ん中の人だけデコること/テキサスリグ道場参照)
 
 
田辺哲男のスピナーベイト道場:本流へ出て水中堤防があるスポットへ。様子見のためにシャローロール3/8ozをキャストする先生があっさりキャッチ。利根川にヤマガタの悲鳴が響き渡った
本流の水中堤防が入ったストレッチに入る。午前中と同じく流れは緩いもののベイトの数が多い。釣りを開始してすぐ田辺先生がシャローロール3/8ozで35㎝ほどのバスをキャッチ。  
 
y8 田辺先生! ロッドを置いてマンツーマンで指導をしてください! ルアーも合っているはずだし、何で釣れないのかわかりません。バスがすべて田辺先生のほうに吸い寄せられてるとしか……。
 
b_t02田辺 ダメだ。俺もキープ・キャスティングだ。なーんて、冗談……
 

 
バシャバシャ!!
 

b_y6 ヒイッ!!
 
田辺哲男のスピナーベイト道場:同じストレッチで田辺先生が連発同じストレッチで田辺先生が連発。ササキに「先輩、いっしょに写ってください」と要求され顔を引きつらせる  
 
先生、さらに1尾追加である。ここからマンツーマンの熱血指導が始まる。
 
b_t01田辺 あの倒木が見えるか? あそこはかなりゴージャスだ。投げてみな。……違う! もっと左だろ! ヤマガタ、このタックル(HB760L +カルカッタコンクエストDC100)で釣ってみな。
 
y4 うっ!? 劇的に投げやすいです。しかも巻きやすい……。これが、先生が座学篇で言っていた「バランスのとれたタックル」なんですね。
 
 
田辺哲男のスピナーベイト道場:エレキを踏ませてもらうが、時すでに遅しエレキを踏ませてもらうが、時すでに遅し。流れが完全に止まってしまったためか異常なし
田辺09田辺 そうだよ。リールにウエイトがあるおかげで、〝投げ〞も〝巻き〞も安定するだろ? 必然的にキャストも決まる。たとえば今の倒木でも、一発でキャストを決めればすぐに次のスポットへ移ることができるから、「次の1尾」が待ってるんだよ。
 
 
b_s3 そのために完璧なタックルセッティングが必要なんですね。
 

 
b_t01田辺 そう。そうすれば、釣れないときは全部自分のせいだって思えるだろ? もっとキャストを練習しなきゃとか、釣り方が違うのか、とか、そう考えるしかなくなるからな。上達を目指すなら絶対に必要なことだよ。
 
 
本流をラン&ガンするもヤマガタにバイトはない。ロッドを握らずエレキを踏みながらヤマガタがんばれと念を送る田辺先生。その光景をバックシートでカシャカシャと撮影するササキ。沈みゆく陽。ヤマガタサンド完成間近である。  
 
 
b_s3 ヤマガタ先輩はいつも、こんな感じで僕を眺めていたんですね。ああ、絶景かな。先輩〜、リーリングのリズムがガタガタになっちゃってますよ(笑)。
 
 
田辺哲男のスピナーベイト道場:V6マリンへの帰り道時間切れ。V6マリンへの帰り道、ヤマガタは1度もササキと目を合わせなかった


b_y2
 ……(ブツブツ)。
 
 
b_t04田辺 タイムアップだ! ヤマガタ、今日は残念だったな。でも、今日のゲームは君の糧になるはずだよ。
 
b_y1 はい。僕は今非常にスッキリした気分です。これでまた明日から修行に励めそうです。ササキ、今日は完敗だよ(棒読み)。
  
b_s6 せ、先輩、声が小さすぎて、何を言ってるのか全然わかりません。
 
田辺08田辺 ササキ、そっとしておいてやれ。
 
 
スピナーベイトの使い分けひとつでここまで差が出るとは、驚きである。取材翌日の深夜、会社がある神保町の裏通りでバスロッドを振る不審者の姿が確認されたという。B  



スピナーベイトの基礎から
季節や状況ごとの使い方まで映像で解説

 

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2016/06/12

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