瀬田さんはアユ釣り競技会屈指のアスリートである。高い身体能力と勝負強いメンタル。計算された試合運びは盤石の強さを誇る。一方で気さくでアユ釣りが大好きな趣味人でもあり、どんな質問でも明快に答えてくれる。
瀬釣りの対策。オモリの打ち方やねらうべきポイントについて
解説◎瀬田匡志
瀬田さんはアユ釣り競技会屈指のアスリートである。高い身体能力と勝負強いメンタル。計算された試合運びは盤石の強さを誇る。一方で気さくでアユ釣りが大好きな趣味人でもあり、どんな質問でも明快に答えてくれる。目次
- Q:立ち込み時に踏ん張りの利く足使いを教えてください
- Q:川をどのように切るべきか?
- Q:オモリを打つ位置の基準は何か?
- Q:オモリは何号から使うべきか?
- Q:オモリよりも背バリのほうがよいと思う時は?
- Q:引きやすい背バリの打ち方はあるか?
- Q:根掛かりした時はどのように外すと上手くいくか?
- Q:大石底の瀬では、どんなポイントから探っていくのか?
- Q:石の上、前、後、横、どの部分にアユが付きやすい(または残りやすい)か?
- Q:小石底の瀬では、どんなポイントから探っていくのか?
- Q:あまりにも変化のない平瀬はどのような手順で探るのか?
- Q:流心をねらう時の注意点は何か?
- Q:胸近くまで立ち込んでいる時のオトリ交換の方法は?
- Q:釣り人が下流にいるのに下って取り込むのはルール違反か?
Q:立ち込み時に踏ん張りの利く足使いを教えてください
A: 下流側の足は動かない大きめの石を捜して、しっかり踏ん張ってください。足は肩幅程度に開き、上流側の足は軽く膝を曲げた状態にします。ホールドできる石があれば、膝下までの内側で石を抱くように添える。急流で身体を流れに預けて釣る場合は、両足を動かない石に添え、踏ん張った状態で流れに逆らい上流方向へ傾けて水流抵抗を受けないようにする。なにより重心を低くすることが立ち込みには重要です。
立ち込んだ中でも穂先がブレず、引き抜きもしやすい安定した姿勢で釣りをすることが重要である。それにはやはり無理のない流れを選ぶこと
Q:川をどのように切るべきか?
A: 釣り人がいない場合は目的地までの距離に余裕をもって上流部からから斜めに川を切っていきます。重要なのはしっかりと下流を確認しながら川を切ることです。対岸に行こうと慌てて横ばかり向いて泳ぐと体力を失います。また障害物等も発見しにくく危険です。
足のつま先は常に上を向けてかかとから付けます。石を探り、蹴りながら川切りをしたほうが、石の間に足が挟まることもなく安全です。足首まで石の間に挟まり抜けなくなると前に倒れ、起き上がれません。注意して下さい。
※無理な川切りはやめましょう。生きていればまたアユは釣れます
Q:オモリを打つ位置の基準は何か?
A: 基本はオトリのサイズや釣れるアユのサイズに合わせます。いわゆるオトリ1尾分の距離を空けてオモリを付けます。ただし神通川や九頭竜川など流れの強い大河川ではオトリから40~50cmとかなり離した位置にセットする場合もあります。そのほうがオトリの泳ぎを殺さず誘いになるからです。オモリを使うのが苦手な方は、鼻から10cm程度を目安に付けると根掛かりのリスクは減ります。 オモリは第2の穂先と考えてください。穂先ではなくオモリにぶら下がったオトリを操作するイメージです。
Q:オモリは何号から使うべきか?
A: 難しい問題ですね。多種多彩な流れがあります。分かりやすくいえば、オトリを止めたい時には流れに合った号数より大きくしても大丈夫。ある程度オトリを引いて川底を通して釣る場合は流れにマッチする号数を選びます。状況にもよりますが、私の場合は1尾目のオトリを取る時にオモリがなくても釣れる流れを選びます。サオ角度を45度程度まで立てて操作すれば、ある程度泳ぎを抑制できる流れです。また少し弱ったオトリでも流れに負けない、浮かない元気があれば、サポート的にオモリを使用します。流れに合ったオモリを使えばベタザオで引いても根掛かりの率やリスクも少ないと思います。
Q:オモリよりも背バリのほうがよいと思う時は?
A: オトリのスピードを落としたい場合や、段々瀬等の流れの早い場所と緩い場所が点在している場所や大石底の落差の大きな河川です。オモリでは流れの強弱が連続して多い場所ではコントロールが大変です。
瀬田さんがV3を決めた昨夏のダイワ鮎マスターズでは、背バリを使ってスローな沖出しアクションを意識的に行なった
Q:引きやすい背バリの打ち方はあるか?
A: 背バリを背ビレ側に深く打たないことです。背バリの種類にもよりますが、私の場合は頭が少し下がる程度の位置、ハナカンが若干前倒しになるくらいの位置に打ちます。
Q:根掛かりした時はどのように外すと上手くいくか?
A: まず下流に引っ張る。それでも外れない場合は自分の立ち位置を根掛かりした真正面まで下り、もう一度下流へあおる。さらに外れなければ45度程度のサオ角度で下流上流とあおる。それでも外れない場合は。立ち込んで外しにいくしかありません。最初に上流へ煽ると外れにくくなる場合が多いです。ゴミでなければ大抵最初の一あおりで外れます。
Q:大石底の瀬では、どんなポイントから探っていくのか?
A: 石の頭~側面です。よいオトリが取れたところで石裏の緩い流れをチェックします。
Q:石の上、前、後、横、どの部分にアユが付きやすい(または残りやすい)か?
A: 間違いなく石の頭にアユは付きやすいです。釣り残す可能性が高いのは側面ですかね。
Q:小石底の瀬では、どんなポイントから探っていくのか?
A: 手前から沖へ扇状にダウンクロスで探ります。瀬の中にある少しでも大きな石周りか、カケアガリなど川底に変化のある場所をねらいます。
Q:あまりにも変化のない平瀬はどのような手順で探るのか?
A: しゃがんで水面と同じ高さで川面を見ます。かすかな水面のウネリを捜して、ウネリがあれば、その場所の川底は若干石が大きいか川底に変化がある場所です。カケアガリならば落ち込む部分の川底に比較的大きな石が集まりやすいと感じています。もしくは両サイドのアシ際しかないですね。
Q:流心をねらう時の注意点は何か?
A: 生きた流れの真上からオトリを入れることです。元気のよいオトリなら、芯の手前からでも入りますが、少しでも弱ると流心には入っていきません。芯のド真ん中にオトリを誘導し、オモリや背バリを使って直接真上から流心に入れ込み、きっちり流れの筋にイトの角度を合わせます。前後左右とサオ(穂先)の位置調整を的確に行ない、生きた流れにオトリを通すことができれば人の後でも釣れます。
Q:胸近くまで立ち込んでいる時のオトリ交換の方法は?
A: タモ受けしたあと通常なら掛かりアユのイカリを最初に外します。それを立ち込んでいる場合はオトリを先に外す、タモ受けしたアユの掛かりが浅い場合は深く打ち直す。そうしてオトリを外してから、掛かりアユにイカリが刺さった状態のままハナカンを通してオトリを交換するのです。タモは脇か肩に挟む。上級者向けの難しい技です。
Q:釣り人が下流にいるのに下って取り込むのはルール違反か?
A: 私は自分の前に下って取り込まれても「ルール違反」とは言わないです。ただ他人が釣っているエリアに立ち込む行為は迷惑をかけずに取れる自信があってこそ行なうべき。基本姿勢は挑む流れのアユに対し、充分に取り込める強度の高い仕掛けやサオで勝負するべきだと思います。競技会では選手に近づくほど下ることはしません。大会ではなく一般の釣りであれば問題ないと思いますが、サオを上げて頂いたら「すみません」と必ず一言あるべきです。球磨川などの大アユ河川はどうしても下らなければ取れないアユがいます。そんな釣り場は下って取り込んでくる人を楽しむくらいの余裕があったほうが釣りは面白いですよ。
※この記事は、月刊『つり人』2018年7月号でも読むことができます。
◆関連記事
今さら聞けない要点を解説! オトリ篇、ポイント選び篇、足取りとサオさばき篇