瀬田さんはアユ釣り競技会屈指のアスリートである。高い身体能力と勝負強いメンタル。計算された試合運びは盤石の強さを誇る。一方で気さくでアユ釣りが大好きな趣味人でもあり、どんな質問でも明快に答えてくれる。
今さら聞けない基本と、解禁初期の対策
解説◎瀬田匡志
瀬田さんはアユ釣り競技会屈指のアスリートである。高い身体能力と勝負強いメンタル。計算された試合運びは盤石の強さを誇る。一方で気さくでアユ釣りが大好きな趣味人でもあり、どんな質問でも明快に答えてくれる。目次
- Q:解禁初期の仕掛けは各パーツ(天井イト、水中イト、ハナカン回り)どのような種類と号数、バランスが理想的か?
- Q:解禁初期のハリは最低何種類、サイズは何号数用意すべきか?
- Q:仕掛けは各パーツ(天井イト、水中イト、ハナカン回り)何セットくらい用意すべきか?
- Q:固着せず、節落ちしないサオの伸ばし方は?
- Q:固着してしまったサオの仕舞い方は?
- Q:元気なオトリの選び方を教えてください。
- Q:小さなオトリを扱う際の注意点は?
- Q:解禁初期、アユの放流量が多く、釣り返しの利く数釣りが有望なポイントはどこか?
- Q:解禁初期でもオトリごろのアユが掛かりやすい場所はどこか?
- Q:湖産アユと人工産アユでは釣り方が変わるのか?
- Q:解禁初期の群れアユはどのように掛けるのか?
- Q:天然の一番上りはどこにいるのか?
- Q:混雑河川で仲良く釣りをするための最低限のマナー
- Q:混雑河川で上下もしくは対面する釣り人との間隔はどの程度空けるべきか
Q:解禁初期の仕掛けは各パーツ(天井イト、水中イト、ハナカン回り)どのような種類と号数、バランスが理想的か?
A: シーズン初期は低活性および小型の魚が多い。私が使う仕掛けは意外にもナイロンです。オトリをソフトに扱い、河川のようす、活性を読み取り、オトリが替わってから複合メタルに張り替える場合が多い。ハナカン回りのイトはオトリにまとわりつかない、主にフロロを使用し、号数は極力細くします。逆バリやイカリも軽い物を使用します。各パーツのイトの号数は表を参照してください。
ナイロン
天井イト PE0.3号
水中イト ナイロン0.15号
中ハリス フロロカーボン0.5号
複合メタル
天井イト フロロカーボン0.6号
水中イト メタコンポ0.04号
下付けイト フロロカーボン0.4号(入りが悪い時は0.25号)
中ハリス フロロカーボン0.6号
Q:解禁初期のハリは最低何種類、サイズは何号数用意すべきか?
A: シワリ系(ダイワ「キープ」)とストレート系(ダイワ「スピード」)の2種類を用意します。解禁初期であればサイズは5~6.5号。瀬でサイズのよいアユが釣れる場合もあるので軸が太く重めのダイワ「パワーミニマム」も用意しておけば完璧です。
ハリはハリ先がややチモト側を向いたシワリ形状と直線的なストレート形状があり、この2種類を5~6.5号揃える
Q:仕掛けは各パーツ(天井イト、水中イト、ハナカン回り)何セットくらい用意すべきか?
A: 天井イトはフロロ2組、PE2組、水中糸はナイロン4組、複合は0.04号と0.05号を各号数2組程度で用意すればよいと思います。号数別に色が異なるカラーハナカンを使うと便利です。ハナカンの大きさに応じて中ハリスの号数も変えます。
6mm(青)、6.5㎜(ピンク)、7㎜(緑)とサイズが色分けされているダイワ「快適カラーハナカン」
Q:固着せず、節落ちしないサオの伸ばし方は?
A: シーズン前にスキーのワックス等をサオ下の継ぎ箇所に軽く塗る。乾いたタオルでワックスが見えなくなるまで擦ると、薄くロウがコーティングしているので固着は減ります。また最初にサオを伸ばす時に回しながら止まる所までしっかり出し切っておくと固着を防げます。サオをしっかり出していないと雨等で緩んで節落ちし、濡れた状態で慌てて伸ばすと固着します。サオが乾いている時にしっかり出しておくことが重要です。
Q:固着してしまったサオの仕舞い方は?
A: 可能であれば家に持ち帰る。床にマナ板等を敷いて垂直に落とす。階段等の段差のある場所に立って上から手を離す感じで行なうとよいです。車に積めない場合はタビを脱ぎ、サオ尻のほうにタビを履かせ、平らな石の上に添える。サオ先側にもタビを履かせ、ソフトボール程度の大きさの石でタビの底を叩きます。ただ釣具店に持ち込むのがベターで安心です。
Q:元気なオトリの選び方を教えてください。
A: 背中が黒く、ヒレが大きく育ったスリムな筋肉質のオトリを選ぶ。オトリを持った時に肌のヌメリと固さ(締まりぐあい)を見るとよいです。ぽっちゃり体系のオトリは体力がありそうに見えますが泳ぎは悪いです。また、ヒレの付け根や鼻がしらが赤くなっているアユもよくありません。なお私は大小1尾ずつ選ぶようにしています。
Q:小さなオトリを扱う際の注意点は?
A: 0.15号程度のナイロン水中イトでしっかりフケをだして沈めやすくさせます。小型は風でも上下にあおられて体力を消耗します。細めのナイロンだとこれを防げます。引かないので小型も弱らず長時間体力を持続できます。大小バラつきがある場合は比重があるイト(ダイワ「ハイパーエムステージ」など)の0.1号程度の太イトを使うのも効果的です。ベタザオでしっかりとラインを水に浸け込めば、重たいラインがオモリ代わりとなり小型オトリも瀬の中を安定して釣ることができて風の影響も受けません。ハリの重さも気にしたほうがよく5~5.5号があるとよいでしょう。
Q:解禁初期、アユの放流量が多く、釣り返しの利く数釣りが有望なポイントはどこか?
A: なるべく上流域のポイントがおすすめです。放流アユはあまり移動しない傾向があるので放流された場所にとどまりやすい。しかし浅場は休む場所が少なく釣り荒れ気味になります。ある程度の深みがあるタナになった場所や、淵やトロ場を挟んだ瀬肩、瀬尻が釣り返しの利くポイントです。
Q:解禁初期でもオトリごろのアユが掛かりやすい場所はどこか?
A: やっぱり水通しのよい瀬肩~瀬尻にかけてがよいですね。流れの通った場所にいるアユはコンディション(体調)がよいです。しっかりエサを食べた=縄張りを持ったアユが掛かるのでオトリの循環もよくなります。
Q:湖産アユと人工産アユでは釣り方が変わるのか?
A: 違いますね! まずハリスのセッティングですが、湖産系アユの場合はハリスを短くし尾ビレの内側に収まる程度に、逆に人工産は少し張りのあるハリスを使って長く出します。湖産系のアユはしつこく追ってきます。オトリの腹下、真ん中あたりをめがけてグルグル回ります。そのためハリスが短くても背中に掛かりやすいです。人工産の場合は追いが甘く、追って来る回数も湖産に比べたらしつこくありません。追って来る位置も尾っぽ周辺までしか入って来ないことが多いのでハリスを長くしていないとイカリに掛かりません。追いが浅いアユも掛かる確率を上げるため長出しが有効です。
Q:解禁初期の群れアユはどのように掛けるのか?
A: 群れたアユは基本的に追いません。群れの中で交差する時に偶然掛かります。中部河川の人工産はその群れの中でも一瞬追うアユがいるのか? 背掛かりになることがあり、しかもずっと同じ場所で釣れ続けます。しかし、よほどの密度でないと普通は続きません。基本的には群れアユはねらわないほうがよいです。が、やむをえない場合はハリスを長くセッティングし、ナイロンハリスの場合はイカリを5.5号と小さくし、フロロハリスの場合は6.5~7号の重さのあるイカリを使うとよいです。理由は追いの弱いアユの魚体にハリスを巻き込みやすくさせるためです。逆バリの打ち方も注意してください。尻ビレの付け根の点に、浅く、外れやすくなるように打ちます。深く刺すと逆バリが外れず水中バレが多発してしまいます。
群れねらいでは尻ビレの付け根の点に逆バリを刺し、深く打ちすぎないようにする
Q:天然の一番上りはどこにいるのか?
A: 堰堤等が少ない河川であればかなり上流部までソ上しています。中でも石組がよく水当りのよい瀬に付いています。下流域でも石組がよく水通しや水当りのよい瀬には良型が付いている可能性が高いです。早くからソ上がよかった川であれば初期でも大石の瀬では良型が釣れる可能性が高いです。後はハミ跡等の大きさで判断するとよいでしょう。
流心に付いた良型をねらうのが瀬田さんの釣りの真骨頂
Q:混雑河川で仲良く釣りをするための最低限のマナー
A: 入川前に必ず先行者に一声かけましょう。「上流もしくは下流に入らせて頂いてもよいですか?」と聞くことが最低限のマナーです。魚を釣りたいのは皆同じ、かといって自分だけ釣れても楽しくありません。周りの皆さんも釣れているとさらに楽しいと私は思います。また空いている場所、あまりよくないと思われるポイントで釣果を伸ばすことも技術を向上させるひとつでしょう。
Q:混雑河川で上下もしくは対面する釣り人との間隔はどの程度空けるべきか
A: 私の場合はサオ2本くらいを目安にしています。もちろん河川によって、入川されている状況によっても違います。混雑する河川であればサオ1本でも仕方なく入る場合がありますが、サオ1本間隔ではお互いがサオを寝かせると当たってしまいます。サオ2本分の間隔であれば、お互いのサオが当たる可能性は少なくなるのでトラブルは減ると思います(私は釣れなくても空いている場所を捜します)。
※この記事は、月刊『つり人』2018年7月号でも読むことができます。
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