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編集部2022年6月13日

世界一のクランクベイトができるまで。ラッキークラフトU.S.A. Behind Story 第5回

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リップは薄いほうがアクションのキレは出ますが、引き抵抗が重くなってしまう。また、飛距離を出すための重心移動を備えつつ、リトリーブ時はウエイトが固定され速引き時にアクションを安定させることも重視しました。そうして作ったのが潜行深度6mのフラットCB D 20です。

タイトル写真/2004年FLWツアー・ケンタッキーレイク戦でウイニングルアーとなったFLAT CB D20。アングラーはアンソニー・ガグリアーディ

ディープクランクを巡る熾烈 大森貴洋「やっぱりオレはディープはやらない」までの道のり

瀬川 稔(ラッキークラフトUSA社長)=語り ラッキークラフトUSA=写真提供 

この記事は『Basser』2022年7月号に掲載したものを再編集しています。Basserのバックナンバーは定期購読をお申し込みいただくとデジタル版バックナンバーが4年分以上読み放題! 詳しくはこちらをどうぞ

 目指すは「世界一のクランクベイト」。この連載では、ラッキークラフトUSAのルアーデザイナーと、大森貴洋、リック・クラン、スキート・リースら歴代プロスタッフが勝てるルアーを作るために繰り広げた知られざる切磋琢磨の歴史を紹介する。

以下、瀬川さん談。

◆第1回:すべては衝撃のひと言から始まった。「このルアー、泳いでないね」

◆第2回:勝つためのFAT CB B.D.S.2、アングラーに寄り添うB.D.S.3

◆第3回:プロに使われるルアーの絶対条件

◆第4回:「新しい振動」を探す旅のはじまり

 

年間26試合に立ち向かう究極のバーサタイル

 ラッキークラフトUSAのルアー作りの軸は「大森貴洋」です。私の人生の師匠であり、アングラーの魂の鏡だと思っています。

 2004年にバスマスタークラシックを勝った大森さんですが、「記録は塗り替えられていくもの。次の試合にだけ集中する」と前進を止めることはありませんでした。

 2005年、大森貴洋さんは年間で26試合にエントリー。これまで1~6月で終わっていたB.A.S.S.戦が拡大し、夏や秋の湖を釣る必要が出てきました。2004年にクラシックを制した大森さんの次の目標はAOYでしたので、年間26試合に立ち向かう究極のバーサタイルを身に着ける必要がありました(大森貴洋の「15年計画」の最終ゴールはAOYでした)。私たちのなかで、シャローだけでなくディープでも勝てるルアーを作らなければならないという意識が芽生えたのはそのためです。

ディープクランク戦争

 当時、アメリカのトーナメントシーンにおけるディープクランクのキングはファットフリーシャッドでした。ファットフリーシャッドはプラスチック製なのに2mmという肉厚ボディーでキャスタビリティーが極めて高かった。また、当時のディープの魚はスレていなかったので、内蔵の大きなスチールボールにドラム効果がありアピール力が強いのも特徴でした。ムダのない名作です。これとDD22が二大巨頭でした。DD 22はすり抜けがよく、立ち木の間をねらうようなシチュエーションで出番が多かった。後発で出てきたストライキングのシリーズ6も人気でしたね。

 それらを研究し、私なりに重要だと考えたのが、ある程度リップを厚く作ることです。リップは薄いほうがアクションのキレは出ますが、引き抵抗が重くなってしまう。また、飛距離を出すための重心移動を備えつつ、リトリーブ時はウエイトが固定され速引き時にアクションを安定させることも重視しました。そうして作ったのが潜行深度6mのフラットCB D 20です。レイク・フォークでのテスト時にケリー・ジョーダンが6連続ヒットさせるなど、テスト結果は上々でした(ちなみにケリーはいまだにD 20を愛用しています)。

 そして、このルアーは2004年のFLWツアー・ケンタッキーレイク戦でアンソニー・ガグリアーディによってウイニングルアーになります。

FLAT CB D20

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潜行深度20ft(6m)。重心移動モデルで厚めのリップを備えている

 しかし……。

 ウイニングルアーには2種類あると思っています。「勝てるルアー」として、選ばれるべくして選ばれたのか、「勝つべくして勝った選手」がたまたま使ったルアーだったのか……。今回は残念ながら後者に近いというのが私の考えです。

 というのも、この優勝のあとディープクランク戦争は熾烈さを増していき、フラットCB D20はプロのタックルボックスに残り続けるルアーにはなりませんでした。2003年ごろから2016年までの流れを簡単に追ってみると、重心移動のディープクランクはメガバスのディープX300やディープSIXといったバランスの極めてよい決定版が世に送り出されました。また、デュオのレアリスD87-20Aも西海岸で旋風を巻き起こします。固定重心モデルではストライキングのシリーズ6の進化版の6XDが定番化しました。また、夏のスモールマウス対策で、メガバスのビジョン110やデュオによるスパイベイティング(シンキングダブルプロップ)などによる別角度からのディープ攻略法も台頭しました。

 そして2010年以降は魚探が進歩。今ではライブスコープ系の魚探でディープの魚が格段に釣られやすくなりました。結果的にディープのバスのハイプレッシャー化が加速し、今ではディープクランクはラパラDTシリーズのひとり勝ち状態です。キャスタビリティーとすり抜け性能が非常に高いタイトアクションの名品です。

大森貴洋の決断

 話を大森さんに戻します。一度は究極のバーサタイルを目指した大森さんですが、2005年から2016年はもの凄い葛藤の時期でした。バーサタイル化が完遂されたのは2016年のこと。B.A.S.S.レイク・ウィーラー戦での優勝です。沖のシャッドスポーンパターンを追い、ペンシルベイトとスイムベイトで勝ったわけですが、意外にもこの試合以降しばらくして、大森さんはある決断を下します。

「沖の釣りも含めてバーサタイルに釣っていくスタイルもアリといえばアリ。実際、自分もこうして勝った。けれど釣りが荒くなる。オレには向かない。だから捨てる」

 優勝という結果が出たことが、逆に大森さんが本来のシャローフィッシャーマンとしてのスタイルに回帰する決断を下すキッカケとなったのです。

 フラットCB D 20から本格的に始まった私たちのディープクランク開発ですが、「やっぱりオレはディープはやらない」という大森さんのひと言によりブレーキを踏むことになります。B

 

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