渇水時は流れが弱くなり水深も浅くなる。すると仕掛けが流れから受ける抵抗は小さくなる。この状況でイトを細くするとどうなるか。仕掛けは流れに乗らず手前に寄ってしまうはずだ。これを避けるためにオモリを軽くするのも1つの方法ではあるが、それにも限度がある。たとえば7mのサオに5号のガン玉では振り込みすらままならない。
糸はあえて太くする。高橋宗久さんの工夫
解説◎高橋宗久
降雪の少ない年のシーズンは、渇水の川を釣る機会が多くなる。それでも状況をよく観察し、先入観を取り払って川に立てば、悪条件下でこそ見つかるものがきっとあるはず。諦めずに渇水の川を攻略できたなら、充実の休日になること間違いなしだ。
こちらの記事は月刊『つり人』2020年4月号に掲載したものをオンライン版として公開しています。
目次
- 第3回:糸はあえて太くする
- 第3回:ニオイの強いキヂで魚にアピール
- 第1回:渇水は厳しい条件
- 第1回:特異渇水と自然渇水
- 第2回:流れが走るポイントを重点的に探る
- 第2回:渇水時は長めの竿が有利
解説◎高橋宗久
新潟県在住。同県十日町市で生まれ、10代で渓流釣りに没頭。現在は春のサクラマス、初夏のヤマメ、晩夏の北海道遠征というパターン。最近は源流釣りにも興味津々。連休とお金の決定的な不足が悩み
糸はあえて太くする
「渇水時は渓流魚の警戒心が強いので、イトは細くする」という論旨の渇水対策を入門書で読んだ記憶がある。私は当初この言葉を疑うことなく実践した。だがよく考えてみると、渇水時に渓流魚の警戒心が高まるというところから引っ掛かる。平水時に比べて瀬音も小さく水面も穏やかな状況では、カワウや釣り人などの外敵の接近は察知しやすい。いつも以上に警戒する必要はないはずだ。だとしたらイトを細くするのは本当に有効なのだろうか。
渇水時は流れが弱くなり水深も浅くなる。すると仕掛けが流れから受ける抵抗は小さくなる。この状況でイトを細くするとどうなるか。仕掛けは流れに乗らず手前に寄ってしまうはずだ。これを避けるためにオモリを軽くするのも1つの方法ではあるが、それにも限度がある。たとえば7mのサオに5号のガン玉では振り込みすらままならない。
私はこうした状況では太いイトと飛ばせるギリギリのオモリを選択する。そうすることで押しの弱い流れでもある程度の抵抗が期待できる。また仮に渓流魚がイト自体を視認することがあったとしても、彼らの警戒心が高まっているわけではないのなら、仕掛けが流れに乗るメリットを相殺することもない。
実際、私は6~8mのサオに0.6~1号の水中イト、4号~Bのガン玉で、渇水の川を釣ることが多い。また鏡のようになった水面を前に派手な振り込みは警戒心を与える可能性がある。外敵の接近を察知しやすい状況なのだから、足音を忍ばせてポイントに近づき、慌てずに呼吸を整えてからサオを振ろう。太イト、小オモリの仕掛けはオモリに頼らず、ある程度ライン自体を加速させる意識で振り込むと飛びやすい。
仕掛けが流れにうまく乗らない場合はオモリを変えるなど仕掛けを微調整したい
仕掛けを流す時、少しのミスによって仕掛けが流れに蹴られてしまうことがある。そのため、サオの送りには特に気を使う
仕掛けを流す段階では少しのミスが流れに乗らないきっかけを作るため、サオの送りには特に気を遣う。渇水の深トロでは弱いながらも中層に流れが通っているケースが多く、この流れにイトを押してもらうイメージで流すとよい。一方、上層と中、下層では流れの向きが異なることがある。イトが行きたがる方向からねらう層の流れの向きをよく見極め、うまく流れに乗らない場合はオモリや振り込み点、立ち位置を変えるなどの工夫が必要だ。またこの釣り方では常にある程度のイトフケがありアタリがボケやすい。目印に変化が出なくても重みが乗るような感触を得たら合わせてみよう。半信半疑で合わせたら尺ヤマメということもままある。
仕掛けがうまく流れに乗らない時は立ち位置を変更することも有効な対策の1つ
ニオイの強いキヂで魚にアピール
渇水時のエサはキヂが効く。流勢の衰えた川では流される川虫が少ないことや、キヂが匂いの強いエサであることと関係があるかもしれない。また私は普段大きめのキヂを1匹掛けで使うことが多いのだが、渇水時はキヂを数匹掛けて使うことが多い。これはエサにかかる水の抵抗を増やしたいという釣り人側の事情で、1匹掛けの時と比べると流れに乗らなくなる率を低減できる。キヂが複数かたまって流れてくることは自然界では考えにくいが、魚は気にしないようだ。
ただ活性は高くないのだから、全体としてボリューム感を抑えるために小さなキヂを使わないとフッキング率が下がる。また目先を変えるのにブドウムシやクロカワムシも有効だ。
渇水対策を事前に立てておき、釣行に臨みたい。
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