春を代表するターゲット、乗っ込みの銀ピカ「クロダイ(チヌ)」。産卵を控えた大型が浅場に差すこの時期は、大型を手にする最大のチャンスだ。内房を例にした時期の目安やポイント選び、好条件となる気象など乗っ込み特有の攻略法から、ウキの使い分け、コマセ作り、タナの探り方など春チヌ攻略の基本まで徹底解説する。

写真と文◎時田眞吉
昭和39年生まれ。釣り雑誌編集者を経てフリーに。クロダイを得意とするが、多彩なジャンルの海の陸っぱり釣りもこなす。
目次
内房に見る乗っ込みクロダイの時期
関東で早くから乗っ込みの声が聞こえるクロダイ釣り場は、房総半島の内房地区だ。南は富浦から北は金谷までの海岸線全域で釣果は得られるが、より高確率で大型クロダイを手にする3つのキーワードがある。
キーワードは3つ「海水温」「地形」「南西風」
まずは海水温。クロダイの乗っ込みは、水温によってスイッチが入る。春になって徐々に水温が上がり、房総半島の場合は13~14℃を超えると集団を作って産卵場となる浅場に入る。具体的には内房・南房地区で3月前半からスタート。水温の上昇がやや遅い外房は一月ほど遅く、三浦半島も外房と同じ時期に本格化する傾向にある。
乗っ込みクロダイのポイント選び
最も大切なのが地形。これは内房地区だけではなく、乗っ込みクロダイをねらううえで全国共通のポイントである。
海藻帯と砂地の「溝」がクロダイの通り道になる
乗っ込み時期のクロダイ釣り場は水深がある、潮通しがよいといった条件で選んではいけない。地磯や堤防なら陸に近い比較的浅場で、陸側を向いたほうが有望となる。理由は速い潮が通さず、海底まで日光が届き、海藻の生えている場所が多いからだ。こうした海藻帯にある海底が白く見える砂地底の溝をねらうのが一般的。
地磯の先端部など、ある程度潮の動く所では、潮流によってできる潮目の内側にエサが溜まりやすく、好ポイントを構成することも多い。
また深場に落ちていたクロダイは溝を伝って浅場に移動するケースが多く、その通り道でエサを食べやすい。沖から続く溝は絶好のポイント。港では船道もそうで、カケアガリに沿って差してくると考えられる。
春の好ポイントは「水深の深さ」ではなく「産卵に適した場所」
浅場の定義だが、陸っぱりのクロダイポイントは主に水深が3~15m以内だ。浅場という言葉を考えると、10mは深場なのか、7mは浅いのか、人によって捉え方が異なる。
ここで少し考えたい。なぜ春は浅場がよいといわれるのか。浅場というのは単に水深が浅いというだけでなく、浅いために海藻などがよく茂り、産卵に適した場所が多いということだ。
したがって春は浅い深いよりも産卵に適した場所であるかないかのほうが重要である。水深が5mでも海底に変化がなく、海藻や岩礁もないような場所は、クロダイもやってこない。しかし水深が10m以上あっても、海底には海藻が生い茂り、岩礁や砂地も点在しているような所にはやってくる。
浅場がよいといわれるのは、このような産卵に適した場所が、水深のある所よりも浅い場所に多く存在するからだ。だから、浅場という言葉は絶対ではなく、可能性がより高い地形と解釈されたい。
南西風による濁りがもたらすシケ後の大チャンス
そして南西風だが、これは内房地区でクロダイをねらう場合に注目したい項目だ。春先は強い南西風が吹くことが多い。代表的なのが春1番だ。この南西風、内房地区では乗っ込みクロダイを呼び込む風となる。
神奈川方面から千葉方面へと、陸に向かって吹く風は温かい表面の海水を運んできて、底の冷たい海水を追い出すため水温の上昇が期待できるうえ、海底の泥や砂を大きく動かすことでイソメなどのエサも巻き上げられる。そのニゴリは魚の警戒心も解いてくれる。だからこそ、南寄りの大風が吹いたシケ後は絶好のチャンスとなるのだ。ただし、地磯などではウネリも残っているため無理はしないこと。大荒れ後は、エッ、こんな所で!? と言うような港内でもヒットしてくるので、安全な釣り場で楽しみたい。
クロダイ釣りのタックルセッティングとウキの使い分け
クロダイ専用ザオはやや胴調子気味になっている。0号の極軟調子も人気が高いが、一般的には1~1.2号。全長5.3mを選ぶとよい。リールは2500番が基本。2号のミチイトが100m巻けるアイテム。ミチイトは視認性のよいナイロン1.5~2号、ハリスはフロロカーボンの1.5号を中心に2号までが使われる。ハリはチヌバリ1~3号。
立ちウキと円錐ウキの使い分けがキモ
クロダイをねらうウキは、大きく分けて立ちウキ、円錐ウキの2タイプが多用される。立ちウキは「感度がよく小さなアタリが取りやすい」、「遠くのポイントでも視認しやすい」などの長所があり、内海などの比較的静かな海をねらうのにもってこい。
これに対し「円錐ウキ」は、「風や波などの条件にも対応しやすい」「近くのポイントでもアタリを取りやすい」などの長所があり、波の立つ磯場などでも対応可能なオールラウンドなウキである。また、「円錐ウキ」にはウキ本体の真ん中に環状の穴が通された「中通しタイプ」と「環付きタイプ」の2種類がある。
特に中通しタイプは、近年の多様なアプローチのベースにもなっている。ウキ止め糸を付けず、付けエサの重みで海底まで自然に仕掛けを送り込んでいく「全遊動」や、浮力を持たないウキ(00号など)を用いてウキごと海中に沈める「沈め釣り」。強風や二枚潮の影響を排除して底層をダイレクトに探る戦術がその代表だ。刻々と変わる潮や水深に仕掛けを同調させていくための、極めて合理的なシステムと言える。
とはいえ、初心者がいきなり沈め釣りに挑むのは難易度が高い。まずは上部仕掛け図のウキ止めをセットする「半遊動仕掛け」を基本に据えよう。そこから釣り場の地形や海況の変化に合わせて、立ちウキや円錐ウキ、ウキの浮力を使い分けていくのが釣果への近道と言える。

寄せエサ(コマセ)の作り方と配合エサの選び方
クロダイ釣りでは寄せエサの役割が重要である。オキアミを適当な大きさにカットしたうえで、クロダイ用の配合エサを混ぜ込んだものを使用する。ポイントや釣り方によって寄せエサの重さを考えたい。
海底のある一点に寄せエサを集中させてポイントを作り、そこにクロダイを寄せて釣るスタイルが多い立ちウキの釣りは、重めの配合エサを混ぜてよく練り込み、底まで寄せエサを一気に落とし込む。海底に溜まってクロダイを寄せるようなイメージだ。
地磯などから潮流に乗せて仕掛けを流す円錐ウキの釣りは、寄せエサと付けエサの同調が重要となる。比較的軽めの配合エサを用い、練り込まずに水中でバラけて広がりながら沈んでいくように仕上げたい。いずれも、量は1日分としてオキアミ6kgに大袋の配合エサ2袋くらいの割合だ。
付けエサはオキアミが主体だ。クロダイは大きいエサを好むのでLLサイズで、エサ取りが少ないようなら頭を取らずにハリ付けしたい。エサ取りが多いようならボイルしたオキアミや練りエサ、スイートコーンなども有効になる。また、アタリがあるのに乗らない時などは、逆にオキアミを小さくハリ付けするのも手だ。
パッケージで選ぶ!クロダイ用配合エサのキーワード
配合エサとは、オキアミエサなどに混ぜ込む粉エサのことで、対象魚や目的に応じて原材料の種類や分量を調整しながら作られている。選び方としては、配合エサの品名やパッケージの説明書などに記されている対象魚の名前が優先。クロダイ用なら「チヌ」とパッケージに記されているものを選びたい。
一般的にクロダイの配合エサは、オキアミの沈降する速度よりもやや速め、メジナ用に比べて重く作られている。クロダイは底近くでエサを拾うことが多いため、その特性を配合エサに反映させているのだ。クロダイ用の配合エサを選ぶキーワードはパッケージに記されている。各目的ごとの代表的な特徴を解説するので、選ぶ際の目安とされたい。
◎遠投・まとめ
操作性・遠投性の向上など。
◎ ムギ・ホワイト
視認性の向上など。
◎ 集魚・アミノ酸・にんにく・エキス
集魚力の増強など。
◎ 中比重
寄せエサの比重を増し、海底近くを探る時。
◎ 深攻め・深場
重い配合で、底近くをねらう時。
◎ フカセ・全層
宙層もねらえる比較的軽めの意味。
堤防と磯で変わる「タナ」の探り方とアワセの極意
「クロダイのタナは底」とよく言われるが、これはクロダイの主な行動域が海底付近であることに起因している。実際クロダイがヒットしてくるタナは、中層から海底にかけて。
そのため探るレンジとしては堤防など比較的海底がフラットな所では、水深の約3分の1から根掛かりするまでの間を集中的に探るようにする。 一方、海底の起伏がある地磯などでは、水深の約2分の1から探り始めて、アタリが出ないようなら根掛かりしないギリギリまでタナを少しずつ深くしたい。
なお朝・夕のマヅメ時やシケ後は、クロダイは貪欲にエサをあさる。3m前後の比較的浅めのタナで、貝類や小型甲殻類が付着している磯際、堤防際、根周りをタイトに探っていくと思わぬ好釣果に恵まれることもある。

「居食い」のアタリを見極め、確実なアワセとタモ入れでフィニッシュ
円錐ウキにしろ、立ちウキにしろ、クロダイが食ったアタリは、明確にウキが海中に没する。押さえ込むような小さなアタリしか出ない時もあるが、これはクロダイがエサをくわえた後、すぐに反転せず静止したり、ゆっくりとバックしたりするような「居食い」と呼ばれる特有の食い方だ。そんな時は軽くミチイトを張ってクロダイが焦ってエサを食い込み反転するように促してやる。
クロダイは歯が硬いため、アワセはしっかりとハリが貫通するように、大きく確実に合わせること。ハリ掛かりした後のやり取りは、サオの弾力をフルに活用し、あまりこちらから強引に引っぱるのではなく、あくまでも落ち着いてやり取りする。クロダイは根に走る魚ではないので、時間を掛ければ大型でも寄せられる。
フィニッシュは必ず玉網ですくうこと。先にも述べたように、うまくハリが貫通していないと最後の最後でスッポ抜けてしまうケースも少なくないからだ。
※この記事は『つり人』2016年5月号に掲載したものを情報更新・再編集しています。

