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つり人編集部2026年5月30日

【マダイの生態】なぜタイラバで釣れる?科学で紐解く捕食の秘密

タイラバになぜマダイは反応するのか。そのヒントは「海底の砂を掘り返してエサを捕食する」という、生来の摂餌行動に隠されていた。本記事では、マダイの成長や行動メカニズムを専門に研究する愛媛大学の高木基裕教授が、アングラー必見の生態データを解説。稚魚期からの成長過程をはじめ、実際の摂餌パターンやマダイが好む色など、釣果に直結する事実を解き明かす。

著者:高木基裕

解説◎高木基裕(たかぎ・もとひろ)

愛媛大学南予水産研究センター教授。「水生動物の生き方を知り共に生きる」ことを目標とする。水産重要種を中心に個体や個体群のもつ遺伝的な違いを評価して育種系統や野生群の保全管理の研究をしてきた。最近では、所属する研究センターの飼育設備を用い、マダイやメジナの成長や行動に関して研究している。

稚魚から学ぶマダイの捕食スタイル

マダイの産卵は水温が14度程度になる春先、水温が高い海域から始まり、3ヵ月程度の期間で複数回行なわれる。種苗生産の現場で観察すると、1尾のメスを複数のオスがしばらく追尾した後、遊泳速度を上げ、放卵・放精に至る。直径1mm程度の受精卵は2日で孵化し、1ヵ月程度の浮遊生活を経たのち、体長約10mmになると着底生活に移行する。

夏場になると体長70mm程度になり、いわゆるチャリコとして漁港の防波堤の際などでは近縁魚のチダイ(Evynnis tumifrons)とともに、ときには混群(複数種で群れを成すこと)を形成する。ちなみにチダイは秋産卵であり、マダイよりも半年早く生まれている。それにも関わらずマダイは生後3ヵ月ほどですでにチダイの体長に追いついてきている。

マダイ稚魚のナワバリ形成とカニとの不思議な関係

筆者らは30年以上も前に漁港内に放流されたマダイの一部がナワバリを形成することをスキューバ潜水により発見した(山岡ら,1991)。このナワバリは、よりよいエサ資源の確保のため、一定のエリアを占有し、他の個体を排他的に追い出すいわゆる摂食縄張りであると考えられる。面白いのは特に強いナワバリを形成する個体がおり、これはガザミの仲間であるフタバベニツケガニがナワバリ内に存在している時であった。このカニは通常、大きな石の下に穴を掘り、体を半分隠しつつ、辺りのようすをうかがっているが、ナワバリを形成するマダイの稚魚はこのカニを保護するかのように、侵入してきた他のマダイ稚魚や他魚種も攻撃した。これにはマダイの摂餌の仕方や餌生物が関係している。

マダイの摂食行動6パターン

マダイは口がやや下向きにつき、視軸も前下方に20度向いており(塩原・有元,1999)、底生生物を摂食するのにより適している。マダイ稚魚の摂食行動は多様であり、以下の6種類に分類される(工藤・山岡,1998)。

fig2-2

(1) sand pecking:個体が砂表面を軽くついばむ行動

(2) substrate pecking:個体がコアマモなどの藻類等の表面を軽くついばむ行動

(3) digging:個体が明らかに砂表面を約5~10mm程度すくいとる行動

(4) blowing:個体が砂表面を断続あるいは連続的に吹く行動

(5) water column feeding:個体が海底から0.5m以上浮上し、浮遊餌生物を探索または摂食する行動

(6) near bottom feeding:個体が海底から0.5m未満で浮遊餌生物を探索または摂食する行動

強いナワバリを形成した理由は普段のsand pecking、digging、blowingのような底向きの摂餌方法では利用できない、より深いところにいる餌生物をカニが掘り起こすことにより、摂餌できるようになるためだった。トラクターであるカニを守るかのように強いナワバリを形成したというわけである。

ナワバリの形成時に見られる排他行動(図1)や個体同士の力が均衡している場合には競合行動(図2)をとりながら(藤原・高木,2025)、時には小さな群れとなり、マダイの稚魚は行動範囲を広げていく。

図3 ナワバリの形成時に見られる排他行動
図1 ナワバリの形成時に見られる排他行動
図4 個体同士の力が均衡している場合には競合行動となる
図2 個体同士の力が均衡している場合には競合行動となる

タイラバをマダイが追うのはなぜか?

成魚になると生息域が水深200mにまで達し、詳細な生態観察が困難になるが、成魚になっても摂餌方法は基本的に同様であるとみられる。タイラバのヘッドが底について砂を巻き上げたり、スカートやネクタイにマダイがよく関心を示すのは、海底が摂餌場所の中心で、砂をすくいとったり、吹いたりして現われるゴカイ類やエビ類などの底生生物や底から少し上方にいる餌生物を摂餌していることとよく合致しているためと考えられる。

また、平均体長43cmのマダイを用いて直径約3cmの黄色の鉛玉を上下に動かす実験(丘ら,2013)では、2.5cm/秒の速度で8秒の周期で往復運動しているときのみ静止状態よりも明らかな反応行動をとったとしている。ヘッドの着底後、上下に巻き上げ・フォールを繰り返すタイラバの釣り方はマダイが関心を示す摂餌行動と合致しているが、4秒で10cm上げ下げするという実験での最適条件と実際のタイラバでのストロークと速度とはかなり異なっている。釣れないときはこんなことを思い出してみるとヒントにつながるかもしれない。

マダイが興味を示す色は黄・橙・赤系

また、マダイが興味をもつ色については、1970年代後半の水槽実験において黄色系、橙色系、赤色系のエサに対し反応することが明らかにされており(伊奈ら,1979)、現在のタイラバ釣りにおいてもこの色選択は王道だ。しかし、陸上と違い光が吸収される水中では水深により見え方が異なる。マダイが黄、橙、赤といった暖色系を見分けて反応を示すというよりも水深50mくらいまでは物体(タイラバ)として認識できる色が暖色系であるということだろう。

筆者らの最近の研究ではマダイは青色LED光で飼育すると他の光の三原色の赤色や緑色の照明で飼育するよりも成長がよく、ストレス濃度も低いのに対して、近縁のチダイでは赤色光で成長がよいことが判明した(川原ら,2024)。これは、チダイの生息水深が赤色光を認識できる浅い範囲が中心であるのに対して、マダイでは青色光のみ届く200m水深まで生息していることと関係があると考えられる。

マダイにも個性がある:エサの取り方や警戒心の違い

さらに忘れてはならないのが摂餌行動と逃避行動の個性である。筆者らはマダイに浮くエサと沈むエサを同時に与えたところ、毎回浮くエサばかり摂餌(浮遊摂餌)する個体と沈むエサばかり摂餌(底面摂餌)する個体(図3)がいることを見つけた(藤原・高木,2025)。

また、マダイ稚魚は容器内で水をかき混ぜるなどして驚愕させると、毎回横臥行動(容器の縁などにへばり付き忌避する行動、図4)をとる個体と横臥行動をとらずにそのまま普通に遊泳する個体があることも示した(藤原・高木,2025)。浮くエサを好み、横臥しない個体は人に慣れ飼育しやすいことから養殖向きであり、沈むエサを好み、横臥する個体は天然海域での生存の確率が高くなることから放流向きであるといえよう。これらの現象はまさに、マダイそれぞれの個性というべきものだ。毎回同じようには釣れないのは魚の個性に惑わされているからかもしれない。面白いものである。

図5 浮遊摂餌(上)
図5 底面摂餌(下)
図3 浮遊摂餌(上)と底面摂餌(下)
図6 容器の縁などにへばり付き忌避する横臥行動
図4 容器の縁などにへばり付き忌避する横臥行動

引用文献等

山岡耕作, 高木基裕, 山田徹生, 谷口順彦. 人工種苗放流マダイに見られるなわばり行動. 日本水産学会誌1991; 57: 1-5.
塩原泰, 有元貴文. マダイの視軸に関する行動実験. 日本水産学会誌1999; 65: 728-731.
工藤孝也, 山岡耕作. 天然マダイおよびチダイ稚魚のなわばり形成場所と摂食行動. 日本水産学会誌1998; 64: 16-25.
藤原成晴, 高木基裕. マダイ人工種苗にみられた競合、摂餌および横臥行動. 令和7年度日本水産学会春季大会講演要旨集 2025; 156.
丘明城, 石崎宗周, 金碩鍾, 不破茂. 動きのある物標による視覚刺激がマダイの摂餌行動に与える誘発効果. 日本水産学会誌 2013; 79: 158-165.
伊奈和夫, 領木快一, 東久美. マダイの色に対する反応性. 日本水産学会誌 1979; 45: 1-5.
川原久美, 藤原成晴, 竹内久登, 高木基裕. LED光照射飼育によるマダイ人工種苗の成長および行動. 令和6年度日本水産学会中国・四国支部例会講演要旨集 2024; 12.

※このページは『つり人 2026年4月号』に掲載した記事を再編集したものです。

マダイ 船の釣り 環境レポート オフショアルアー タイラバ・一つテンヤ

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