安定の大場所・荒川本流の岩淵水門か、それとも対岸の支流・芝川か──。手軽な川の釣りの筆頭であるテナガエビだが、シーズン走りの時期は外すことも多い。おかめ鮨の釣り好き大将・長谷文彦さんとともに、東京都内の実績場3ヵ所を巡り、潮位・仕掛け・エサ付けのコツを探った。

写真と文◎月刊つり人編集部
1946年創刊の雑誌「月刊つり人」を始め、数々の釣りに関するコンテンツを作成してきたつり人社の編集部。
今期初のテナガエビ釣りは早朝スタート
手軽な川の釣りの筆頭といえるテナガエビ。人気ターゲットであるが、実はけっこう苦戦を強いられることが多いのも事実。その理由は取材をする時期が4月後半から5月前半で、梅雨時に本番を迎えるテナガエビを釣るにはほんの少し早いためだ。
「そうだよ。4月じゃまだテナガエビモードにならないよ。今日は5月だけど肌寒いからライトダウンまで着込んでいるし(笑)」
そう語るのは、おかめ鮨の釣り好き大将としておなじみの長谷文彦さんだ。
現時点で釣果情報が聞こえてくるのは人気の荒川、それも超メジャースポットである岩淵水門周辺くらい。
大河川のゴロタ場で釣りやすい潮位とは
とはいえGWという大型連休で、しかも晴天の予想とくれば、釣り場はもちろん、河川敷に設けられた大型BBQ施設へ繰り出す人も多いことから、水門に近い荒川知水資料館アモア隣の休日駐車場は満車が予想される。
ちなみにこの日は大潮あとの中潮で満潮は朝6時、干潮は13時。実は前日に取材を予定していたもののアクアラインが通行止めになるなど関東全域で20m近い強い南風が吹き荒れたことから翌日に順延した。ところが長谷さんはこの日は午後14時から赤羽で仕事の用事が入っていることから赤羽に近い釣り場で昼過ぎまでの下げ潮勝負となった。
ちなみに荒川のような流れの強い大河川でのゴロタ場では潮位の低い時間帯が釣りやすいとされ、ゆっくりと潮が動く干潮からの上げ潮ねらいがベストとされる。というのも満潮からの下げ潮は流れが強くて仕掛けが流されやすく安定しないためだ。
とはいえテナガエビ自体は上げ潮でも下げ潮でも釣れる。もともと岩の隙間などの暗がりを好む性質でも分かるように夕方になると活性が高まり、浅場に群れで差してくることでも知られる。夕方以降は全体が暗いことから岩の隙間ではなく岩の上や杭の周り、泥底のボトムなど広い範囲を徘徊する。
最初の釣り場は足立区の都市農業公園前
とはいえ今回は午前中勝負。赤羽から至近の岩淵水門周辺はまさにおあつらえ向きの釣り場だったが、荒川本流だけに満潮からの下げ潮は流れが強すぎる可能性も高い。そのため、右岸側の北区ではなく、左岸側の足立区にある都市農業公園へ向かうことにした。ここは芝川水門を通じて合流する支流・芝川の最下流にあたることから、本流に比べると流れも緩やかかもしれないと考えたためだ。
ただし、都市農業公園の開門は9時で、それまでは併設の駐車場にも入れない。今から考えれば慌てることなく9時の開門に合わせて入場していたほうがよかったのだが、少しでも実釣時間を確保しようと焦った記者は、「こんなに早くからテナガエビ釣りに行くの?!」とおののく長谷さんのご自宅へ早朝5時に迎えに行き、6時前には現地着。公園近くのコインパーキングを利用し、公園は通らずに荒川沿いの遊歩道から芝川左岸の釣り場に入った。
こちらのゴロタは蛇篭の上につるつるとした丸石がきれいに積まれているのが特徴で、ゴロタとゴロタの間には階段状のテラスがあり、最盛期にはこの階段の上にもたくさんのテナガエビが見えるという。
シモリ仕掛けと玉ウキ仕掛けの使い分け
「おお、素晴らしいロケーションじゃないですか。開園前で空いているし、開園後は食堂やトイレも利用できる。ここで釣れたら最高ですね」
岩淵水門周辺では何度も釣りをしているものの、都市農業公園には初めて来た長谷さんはテンションがアップ。
「さてさて、ゴロタがいいのか階段がいいのか分からないので、まずはその境に入って両方を探ってみましょう」
サオと仕掛けのセレクト
長谷さんのサオはティムコ/幸釣四五六。「ゴロタ場では6尺1.8mが基本。5尺、4尺の三段スライド方式なのでさらに小場所でも重宝しますよ」というお気に入りだ。
仕掛けはオーナーばり/手長エビシモリ仕掛と手長エビ玉ウキ仕掛の180cm。「仕掛けを自作するのも楽しいですが、こんないい完成仕掛けがありますから使わない手はありません」と長谷さん。150cm、180cm、240cmと3種類の長さがあり、3mザオなら60cmの天井イトを付ければ問題なく使える。予備バリ(OH手長エビ2.5号)2本付きで、長谷さんはタナゴバリの流線もマッチするという。
玉ウキ仕掛けとシモリ仕掛けの使い分けのコツ
「繊細なアタリを目で楽しむなら仕掛けの動きがはっきり見えるシモリ式がおすすめです。階段側で釣れるならこっちのほうが楽しいかも。ただ、私がメインで使うのは基本の玉ウキ仕掛けですね。こちらは早ジモリに調整済みなので底まで素早く仕掛けが届いて水面下に玉ウキを沈ませているので違和感なくテナガエビがエサをつまんで移動できます」
テナガエビの付き場が分かって一ヵ所に腰を落ち着けて並べ釣りをするなら玉ウキ仕掛け、横移動しながら手持ちザオで探っていくならシモリ仕掛けという使い分けもおすすめである
都市農業公園前の芝川で浮遊ゴミに苦戦
結果から言うと、都市農業公園は開園前の6時に来たのがよくなかった。前日の爆風の影響なのか満潮時の水面には草や枝などの浮遊物が非常に多くあり、それが釣り座のある左岸側へ風で寄せられ、下げ潮に乗って次々に流下してくるため仕掛けに絡んで非常に釣りづらかったのだ。1時間ほどの間に大半の浮遊物は水門の先の荒川本流へ下っていったが、9時の開門に合わせて入場していればあらかた浮遊物も本流へ流されたあとで下げ潮の動きも弱まって釣りやすかったかもしれない。
芝川水門上流の消波ブロックを探るも反応なし
ここでは小型のメスとレギュラーサイズのオスがゴロタでヒットしたものの、アタリ自体が多くないうえにゴミの仕掛け絡みが気になり8時過ぎに退散。そのまま対岸の岩淵水門に行けばよかったのだが、芝川水門を出た荒川の少し上流のフットサルコートの裏に小規模な消波ブロックがあり、その上流側の土手が沖側に張り出していることから浮遊物の影響も少なそうに思えた。
芝川水門の荒川側は柵に覆われているので釣りはできないが、フットサルコートの手前で柵は切れる。釣り人の踏み跡と思しき獣道もあり、期待は充分。すぐ沖には流れを避ける長い堤がいくつかあるためか下げ潮も弱めで仕掛けも安定。公園の丸石よりも複雑に入り組んだ消波ブロック周りは絶好に思えたが、意に反して何度サオで聞き上げしてみても、エビ特有の「ビビンッ」という感触が伝わらない。
「食いが浅いんじゃなくて食われないね。こりゃ参りました」
早起きは三文の徳とはならなかった。
やっぱり安定の大場所・岩淵水門周辺へ移動
快晴のこの日、荒川岩淵関緑地に設けられた広大なBBQ場は超満員の大盛況であった。当然、荒川知水資料館アモア隣の岩淵関緑地駐車場は満車。ただしこの日は1km上流のJR高架下に臨時駐車場が用意されたのでそちらを利用。釣り道具や撮影機材を持っての往復2kmはまあまあ大変であったが、もうここでやるしかない。
中之島の下流側で1投目からヒット
赤水門と呼ばれる旧岩淵水門の上の歩道を渡って荒川赤水門緑地が広がる中之島に渡ったのはもう11時だったが、ここから2時間後の干潮までと、その後の上げ潮はベストタイムといわれる潮位。中之島にはテナガエビ釣りファンの姿が多かったものの、引き上げる人たちもいて、青水門と呼ばれる岩淵水門側を向いた最下流に入れるスペースがあったので、両隣の釣り人にひと声かけて入れさせていただくと、1投目でいきなり本命がヒット。釣り人も多いがエビも多いようだ。
「横方向に探るのは難しいし、目の前だけでも捨て石が複雑に入り組んでいるから、玉ウキ仕掛けでしっかり穴の中に落とし込んで釣るのがいいみたい」
アカムシの通し刺しでフッキング率アップ
ビビンッというアタリを感じながら、逃げられたり、しっかりフッキングが決まって、ビビン、ビビビンッというバックビートを味わいながら釣果を重ねる幸せな時間。
「これこれ、テナガエビ釣りはこうじゃないと!」
食いは浅いようで、それならばとアカムシの装着方法を頭部へのチョン掛けから胴部への通し刺しに変更する。テナガエビ釣りの名手として知られる橋本春雄さんから教わった食い逃げされない装餌法だという。チョン掛けに比べて手間が少しかかるものの、その分、フッキング率は上がるというのでお試しあれ。
ジャンボサイズのオスが登場して大盛り上がり
「お、おお、バルタン星人のお出ましだよ!」
威嚇するようにハサミをもたげたジャンボサイズのオスの登場で大いに盛り上がる。その後、干潮からの上げ始めまで間断なくアタリが続いたが、臨時駐車場までの距離を考えるとそろそろタイムアップ。
「まあでも今年最初のテナガエビ釣りとしては上出来でしょう。6月以降の本番が楽しみです。今日回った3ヵ所はいずれも魅力的でしたので今度は回る順番を入れ替えて再挑戦してみたいです」
※このページは『つり人 2026年7月号』に掲載した記事を再編集したものです。



