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編集部2022年8月23日

世界一のクランクベイトができるまで。ラッキークラフトU.S.A. Behind Story 第7回

PICKUP ブラックバス Basser バス釣り 米国バストーナメント

スモールクランクの研究をする日々のなかで、ふたたび私の前に「フラットサイド」という存在が出てきました。連載第4回で触れたように、2001年ごろから一度は勉強したものの、大きな芽が出る前に開発を保留したジャンルです。

 

1尾への最短距離。“Heart of Young Angler”としてのフラットサイド

瀬川 稔(ラッキークラフトUSA社長)=語り  

この記事は『Basser』2022年9月号に掲載したものを再編集しています。Basserのバックナンバーは定期購読をお申し込みいただくとデジタル版バックナンバーが4年分以上読み放題! 詳しくはこちらをどうぞ

 目指すは「世界一のクランクベイト」。この連載では、ラッキークラフトUSAのルアーデザイナーと、大森貴洋、リック・クラン、スキート・リースら歴代プロスタッフが勝てるルアーを作るために繰り広げた知られざる切磋琢磨の歴史を紹介する。

以下、瀬川さん談。

◆第1回:すべては衝撃のひと言から始まった。「このルアー、泳いでないね」

◆第2回:勝つためのFAT CB B.D.S.2、アングラーに寄り添うB.D.S.3

◆第3回:プロに使われるルアーの絶対条件

◆第4回:「新しい振動」を探す旅のはじまり

◆第5回:ディープクランクを巡る熾烈 大森貴洋「やっぱりオレはディープはやらない」までの道のり

◆第6回:駆け出しのバスプロに寄り添うスモールクランク乱造時代

ふたたびのフラットサイド研究

 前回は一心不乱にスモールクランクを作った日々の話(2004〜2006年ごろ)を紹介しました。まだハートが育っていない駆け出しバスプロの心に寄り添ったルアーがバイトを得やすい小さいクランクベイトだったのです。

 スモールクランクの研究をする日々のなかで、ふたたび私の前に「フラットサイド」という存在が出てきました。連載第4回で触れたように、2001年ごろから一度は勉強したものの、大きな芽が出る前に開発を保留したジャンルです。

 当時、小型のフラットサイドがアメリカで流行していました。シダーウッド製の小さなフラットサイドがもてはやされていましたが、冷静にトーナメントのデータを洗ってみると、意外にもウイニングルアーにはなっていない。勝っているのはバグリーのバルサB2、B3が多かった。大森貴洋さんに意見を聞いてみると、「フラットサイドは風に負けて飛ばないし精度も出ない。だから使わない」とのこと。

 ではなぜ流行っているのか?

 分析したところ、やはりフラットサイドもDTNなどと同じく、駆け上がっていく途上のバスプロが安心を得るために使うルアーだという結論が出ました。

 つまり、当時の我々がともにルアーを開発していたチームメイトたちです。スキート・リースやブレント・エーラーたち全員が成長段階のアングラーであり、毎年毎年考えが変わっていた。挑戦的なタックルで戦う試合もあれば、保守的に試合を組むこともあった。結果次第で気をよくすることも、くじけることもありました。思うに、バスプロは50歳を超えてようやく「オレはこうだ」と言い切れるようになる気がしています。

 2002年にデニー・ブラウワーがB.A.S.S. のトップカテゴリーで優勝しましたが、このとき「おめでとう」と言いに行くと「嬉しいよ。オレはクラシックもAOYも獲った。今は優勝しか目指していないからね」と返ってきました。これぞベテランという感じで本当にカッコよかった。バスプロは50歳を超えたあたりで完成するのだと思います。

 ただ、我々の若いチームメイトにその腹のくくり方はまだできていません。彼らのメンタルはしばしばブレますし、とにかくすぐに魚が食ってくるルアーを投げて安心したいという気持ちが強かった。そこで私が再び目をつけたのがフラットサイドでした。

「SKT MR」の誕生

SKT MR

SKT
「もっとも素早く1のはサイズを問わず1尾が釣れやすいルアーでした。では、「もっとも素早く魚を釣れるルアーは何か?」。


 その問いに対する私の答えがフラットサイドクランクでした。

 フラットサイドクランクは設計にもよりますが、振動係数がもっとも細かくなりやすく、また任意のレンジに素早く達するものに仕上がりやすかった。アクションを言葉で表現すると「ウイグル」。大きくゆらゆらする「ウォブル」に対し、規則正しく細かくテケテケテケ……と揺れるのが「ウイグル」です。これがサイズを問わずバイトを引き出しやすいルアーだというのが当時の私が考えていたことでした。

 しかしそれだけでは試合で使われるルアーにはならない。雨にも風にも負けないキャスタビリティーと、リズムに乗れる引き抵抗、そして強度を兼ね備えたモデルを模索していきました。「フラットサイド=明滅で食わせる」というイメージもありましたが、明滅はアクションではなく色で出すことにしました。

 こうして仕上がったのが「SKT MR」。あえて乱暴な言い方をすると、初期のラッキークラフトUSAのなかで一番釣れやすいルアーです。経験値の少ない湖で若いアングラーが必死にバスを触るためのフラットサイドです。

 私たちはこのように若いプロスタッフと励ましあい、時にけなし合うことでルアーを作り、ともに高みを目指していました。こうしてできた「SKT MR」が大きな芽の根になります(続く)。

 


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