価値ある一尾を手にするには、飛距離だけでは足りない。水中の変化をいかに把握し、意図したコースを通せるか。その精度を左右するのが、ラインの性能だ。エキスパート・沼田純一さんの知見をもとに、「X9」の実践的なセッティング、扱いの要点を整理した。

解説◎沼田純一
文と写真◎North Angler's編集部
協力=株式会社バリバス
パームスのプロダクトマネージャーと、バリバスのフィールドテスターを務めるエキスパート。北海道へも精力的に通い釣行を重ねている。
バリバスX9の構造と直進性の秘密
バリバスの「X9」シリーズは、その名称から9本撚りを想像するかもしれないが、厳密には「1+8」の構造を採用。通常9本撚り以上は「丸打ち」に分類され、袋状になりやすく、形状変化が起こりがち。一方のX9は、あえて8本組みの「角打ち」をベースとし、中心に芯材を通すことで撚りの形状を保持。これにより長時間使用しても潰れにくく、性能劣化の抑制に成功した。
さらに、このラインの優位性を決定づけているのが「Vertical Braid(縦編み)工法」だ。編み角度を従来よりも鋭角な縦方向へ振ることで、直進性を高めている。横方向に近い角度で組まれたラインは、水中で膨らみやすく潮流の影響も受けやすい。それに対しX9は水の抵抗を受け流し、余計なスラックが発生しにくい。結果として水切れがよくなり、ルアーはねらったレンジへ素早く到達する。
ショアレコードショックリーダー[フロロカーボン](写真左)新原糸「VSFフロロカーボン」を採用し、しなやかさと耐摩耗性を高い次元で両立
実釣で差がつく直進性と超低伸度の恩恵
直進性の高さは、実釣で大きな差となって表われる。ラインが弧を描きにくいため、同じ水深でも放出量を抑えやすく、着底までの時間短縮と感度向上を両立。余分なたるみが減ることで、ボトムタッチやバイトの感触がより明確に手もとへ伝わる。とくにディープエリアや流れの利いた状況では、情報量の差がそのまま釣果へ結びつく場面も多い。
また、伸度がこれまでの6%前後から3%台に低減されている点も見逃せない。伸びが少ないことで、アングラーの入力はロスなくルアーへ伝達され、ジャークやリフトといったアクションのレスポンスが高まる。フッキング時も同様で、遠距離や深場でも確実に力が乗りやすく、掛かりのよさに直結。さらにファイト中のテンション維持が容易になり、バラシ軽減にも寄与する。
沼田純一さんが語るX9の優位性とタックルセッティング
近年、北海道へ精力的に通い釣行を重ねているエキスパート・沼田純一さんに、海サクラと『アバニ キャスティングPE マックスパワーX9 ショアマスター』の相性についてうかがった。なお沼田さんはパームスのプロダクトマネージャーで、バリバスのフィールドテスターを務める。
沼田さんが考える「X9」の優位性とは何でしょうか?
沼田 まずX9最大の特徴は、適度な張りと低伸度にあります。横風や向かい風といったトラブルが発生しやすい条件下でもラインが暴れ(バタつか)ず、キャストミスやエアノットなどを大幅に軽減。さらにイトフケも抑えられるため、風や潮流の影響を受けにくく、遠投時でもルアーとアングラーが一直線につながるようなダイレクトな操作感を実現します。たとえば100m先のメタルジグに対しても操作の伝達ロスが少なく、バイトは明確な衝撃として手もとに届く。この「情報量の多さ」と「アタリの分かりやすさ」は、使ってみればすぐに実感できるはずです。攻略の組み立てはもちろん、釣りそのものの面白さを引き上げる要素となっている気もしますね。
サーフと磯で使い分けるラインシステムとリール選択
タックルセッティングについて教えてください。
沼田 ロッドは『ショアガンエボルブ SFTGS-103MH』を兼用しつつ、フィールドに応じてラインとリールを使い分けています。サーフでは飛距離を最優先にメインライン0.8号、状況により1号をチョイス。磯では海藻や根周りへの対策として1.2号を基準に、より強引なやり取りを可能にするバランスをとります。リーダーは「メインライン号数×20ポンド」が私の基本的な考え方。いずれもPEとの結束はFGノットで約1mに統一し、キャスト時に結び目をトップガイドの外へ出すようにします。
ちなみに『ショアレコードショックリーダー[フロロカーボン]』は耐摩耗性にすぐれながら、ナイロンラインのようにしなやか。ルアー本来のアクションを損なわず、ミノーやジグ、ジグミノーそれぞれの性能を最大限に引き出す点も大きな強みといえるでしょう。
リールはサーフで汎用機のC5000番(4000番ボディー)を選択し、細イト運用時に有利なドラグの微調整機能を駆使。一方、磯ではSW4000番を用い、過酷な環境下での耐久性を重視します。
![取材時のタックル。ロッド:パームス『ショアガンエボルブ SFTGS-103MH』、リール:シマノ『18ステラ C5000XG』、ライン:バリバス『アバニ キャスティングPE マックスパワーX9 ショアマスター』0.8号、リーダー:バリバス『ショアレコードショックリーダー[フロロカーボン]』16ポンドをFGノットで約1m](https://web.tsuribito.co.jp/hs-fs/hubfs/auto-publisher-assets/opt-content-064-066_11.jpg?width=624&height=832&name=opt-content-064-066_11.jpg)
◎取材時のタックル
-
ロッド:パームス『ショアガンエボルブ SFTGS-103MH』
-
リール:シマノ『18ステラ C5000XG』
-
ライン:バリバス『アバニ キャスティングPE マックスパワーX9 ショアマスター』0.8号
-
リーダー:バリバス『ショアレコードショックリーダー[フロロカーボン]』16ポンドをFGノットで約1m
X9と海サクラ用ルアーの相性、X8との使い分け
「X9」と海サクラ用ルアーの相性はいかがでしょうか?
沼田 とくにジグやジグミノーの釣りでは、X9の直進性が活きます。先述のとおり、巻き抵抗やシャクリ時のわずかな負荷変化といった水中情報がダイレクトに伝わり、ブラインドの状況把握が容易になるからです。距離が伸びるほどその差は顕著で、ラインのたるみを修正する手間が減ることで、食わせのアクションに集中できます。ミノーにおいても、たわみの少なさが操作性を底上げし、大きくロッドを煽らずとも入力が的確に伝達。水中ではしっかりとダートアクションを生み、フッキングにも力をロスなく反映させられます。
X8とX9はシーズンやスタイルで使い分ける
既存「X8」との使い分けは有効ですか?
沼田 従来のX8と比較すると、両者は明確に役割が分かれます。しなやかさを武器に飛距離を最大化するX8は、広範囲を探る釣りやミノー主体での遠投重視の展開に好適。対してX9は、操作性や情報量、トレース精度を優先したい場面で真価を発揮します。優劣ではなく、シーズンやスタイルに応じた使い分けが有効といえるでしょう。
X9を扱ううえでの注意点とメンテナンスのコツ
その特性からやや〝ピーキー〞な印象を受ける「X9」ですが、扱う際の注意点や気遣うべきことなどを教えてください。
沼田 超低伸度ゆえのダイレクトなバイトに注意が必要です。強い衝撃として伝わるため、反射的なアワセでバラシを招かぬよう、事前のドラグ調整が重要になります。また、一般的なフロロリーダーとの組み合わせではクッション性が減るため、ロッドの弾性で吸収させる意識も肝心。さらにX9は中芯+外層8本構造ゆえ、繊細な外周部のダメージチェックも欠かせません。こまめに指先で摩耗や砂噛み、磯での擦れを確認したいところです。
密巻きリールにも対応するX9ショアマスターの総合力
『アバニ キャスティングPE マックスパワーX9 ショアマスター』は適合するタックルの幅が広く、ややスローな調子のロッドから高弾性モデルまで対応。直進性の高さと超低伸度設計の恩恵により、「密巻き」方式を採用したリールでもライントラブルが起きにくい。
加えて視認性に長けたホワイトカラーは、ライン軌道やルアーのトレースコース、ファイト中の魚の進行方向を把握しやすく、実釣面でのメリットも大きい。それに「何より白はカッコいいですよね」と沼田さんは言う。
トラブルレス性能とダイレクトな操作感を両立するX9は、海サクラゲームにおいて「飛ばす・感じる・掛ける」という一連の動作を高い精度で支えるラインである。
※このページは『North Angler's 2026年夏号』に掲載した記事を再編集したものです。


.jpg)
