観賞魚として日本に持ち込まれ宮崎県と群馬県の河川で繁殖が確認されたコウライオヤニラミ。なぜ有識者は懸念の声を上げているのか。釣り人にも無関係ではないそのリスクをまとめる。

文◎月刊つり人編集部
写真◎オイカワ丸/ペスカトーレ中西/浦壮一郎/月刊つり人編集部
1946年創刊の雑誌「月刊つり人」を始め、数々の釣りに関するコンテンツを作成してきたつり人社の編集部。
目次
コウライオヤニラミとは?朝鮮半島原産の外来魚が日本の河川で繁殖
2026年9月、生態系へのリスクが懸念される外来魚「コウライオヤニラミ」が特定外来生物に指定された。
コウライオヤニラミ(Coreoperca herzi)は朝鮮半島原産のケツギョ科オヤニラミ属の淡水魚で、日本のオヤニラミと近縁で姿も似ているが、日本のオヤニラミは通常8cm前後、最大でも14cmというサイズだが、こちらは全長30cmまで大きくなる大型種だ。日本には観賞魚として国内に持ち込まれ、2017年に宮崎県・大淀川水系で確認された。
その宮崎県では大淀川水系からの持ち出しを禁止する内水面漁場管理委員会指示が出されるなど対応が進められてきたところ、今年5月に隣接する別水系の清武川水系でも生息が確認されたとして、委員会指示の対象を全域に広げる措置が取られることとなった。
群馬県では、2024年に本州で初確認された利根川水系の鮎川で、昨年夏には稚魚も含む複数尾が捕獲されたことから繁殖していることが判明、駆除を進めるとしている。
いったいなぜ、これほど大きく騒がれているのだろうか。釣り人にとっても無関心ではいられない懸念点がふたつある。
コウライオヤニラミのなにが問題なのか
第一に、在来の魚類への食害が懸念されている。大淀川水系で2021年に行なわれた採集調査によれば、コウライオヤニラミが侵入した水域では2017年まで採集されていたモツゴ、ドンコ、ヨシノボリ、カマツカ、同水系固有種のオオヨドシマドジョウなどが全くいなくなるか、個体数が大幅に減少していたことが報告され、捕食による在来種の減少が強く示唆された(日比野ら、2022)。また、胃の内容物のDNA調査から実際にオオヨドシマドジョウを捕食していたことが判明し(高田ら、2026)、こういった底生魚への影響が裏付けられた。
これらの魚は釣りの対象魚ではないから関係ないと思ってはいけない。生態系はあらゆる生き物が絡み合う、食う・食われるの関係から成り立っているので、こういった魚たちの減少によってどんな悪影響が生じるか分からないのだ。
水生昆虫を大量に捕食する食性
その点でさらに深刻度が高いと思われるのが、水生昆虫を多く捕食していることである。これが第二の懸念点だ。
藤田・山中(2025)の胃の内容物解析によると、コウライオヤニラミにとって魚よりもむしろ水生昆虫が重要なエサになっている可能性がある。水中を漂うコカゲロウ科だけでなく、砂や泥に潜り込んだり倒木などに密着したりして暮らすユスリカ類、石や落ち葉の隙間に暮らすヒラタカゲロウ科(チョロムシ)などあらゆる生活様式の水生昆虫を捕食していることが報告されている。なかでも驚くべきことに、トビケラ科(クロカワムシ)を捕食していた個体では、巣材や固着していた抽水植物の根ごと食べていたケースもあったという。
渓流魚やオイカワなどへの影響
私たちを楽しませてくれるヤマメ・アマゴなどの渓流魚や、子どもたちにもねらいやすいウグイ・オイカワといった魚もこういった水生昆虫を捕食しているが、彼らは基本的に流下してくる水生昆虫を待ち受けて食べている慎ましい(?)食生活だ。つまり、コウライオヤニラミは日本古来のターゲットである魚たちのエサを横取りして食べ尽くしてしまうかもしれないのだ。そうなれば日本が誇る私たちの釣り文化も大打撃を受ける恐れがある。
すでに環境破壊にさらされている日本の在来魚
ただこれには反論もあるかもしれない。コウライオヤニラミの故郷の韓国にもヤマメはいるし、同じく水生昆虫を食べている底生魚が食害で数を減らせばヤマメのエサはむしろ増えるのでは……など。
しかし、ここで思い出さなければいけないのは、日本の在来魚はすでに厳しい環境破壊にさらされているということだ。小誌(月刊つり人)で何度も問題提起してきたように、ダムや堰堤による上流からの土砂供給の途絶、河川改修による流路の単調化と礫(石)の除去などによって日本の河川は環境の劣化が著しい。
瀬では砂礫が流出し岩盤が露出するなど河床低下が引き起こされ、淵では細かい砂が堆積し石が埋まってしまう。トビケラやカゲロウの生息に不可欠である石と石の隙間が物理的に消滅しつつあるのだ。そうなってしまった川では、魚たちはギリギリのエサで命を繋いでいると言っていいだろう。
肉食魚の爆発的な増加が釣り文化に与える打撃
また、天敵のいない場所に放たれた肉食魚は、一度爆発的に個体数を増やす。いつかはバランスのとれた個体数に落ち着くという主張もあるが、河川環境の悪化と増加のフェーズが重なれば、その間にその川の釣り文化は壊滅的な打撃を受けてしまうかもしれない(これはコクチバスなどにも同じことが言え、姉妹誌『Basser』でも外来生物法を改めて周知する記事を掲載している)。
怪しい魚が釣れたら?釣り人に期待される役割
前述のような被害を未然に防ぐには、侵入からなるべく早期の発見と対策が必要だ。
まず、怪しい魚が釣れた際には別の場所へ持ち出さないこと。これが何より重要である。そして各都道府県の水産課や水産試験場など関連機関に報告することだ。
日常的に水辺に通う釣り人は第一発見者になる可能性が高い。水辺の監視人である釣り人として、必要な役割が期待されている。
<参考文献>
・藤田宗也・山中裕樹(2025)宮崎県大淀川水系支流の萩原川における国外外来魚コウライオヤニラミ(Coreoperca herzi)の食性.伊豆沼・内沼研究報告,19:53-63.
※このページは『つり人 2026年8月号』に掲載した記事を再編集したものです。



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