オトリが泳がない。野アユが追ってこない。そんな時はチャラ瀬の群れアユをねらう人も多いだろう。だが『やる気のある野アユのポジションは盛期と変わらない』と断言するのがG杯覇者・廣岡昭典さんだ。シビアな野アユを釣るために、オモリとショートロッドで流心にオトリを止める、その操作を見せてもらった。

解説◎廣岡昭典 写真と文◎月刊つり人編集部
1980年生まれ。日高川でアユを釣りながら育ち、G杯争奪全日本アユ釣り選手権優勝1回、報知アユ釣り選手権オーナーカップ優勝2回を手にするがまかつテクニカルインストラクター
5月からアユ釣りが楽しめる日高川龍神地区
1年でその寿命を全うするアユは、初夏から秋までの短いシーズンのなかで刻一刻とねらいどころが移り変わっていく。まだサイズが小さく活性も上がりづらい解禁初期は油断して臨むと苦戦することも多いシーズンだ。
和歌山県中部の東寄りに位置する龍神温泉は日本三大美人の湯として有名な温泉郷。そこを流れる日高川は数々の名手を輩出したアユ釣りの名川であると同時に、全国に先駆け5月1日からアユ釣りが楽しめる早期解禁の釣り場として毎年注目を集めている。
オトリ店に聞く釣況
今年の調子をオトリ店・松阪食堂の松阪正澄さんに尋ねると……。
「今年は遡上が遅れていて、ダム下からの汲み上げがまだ始まっていません。いま釣れているのは人工産の放流で、1日やって15尾くらいが平均。いいところに入れば60~70釣った人もいて、サイズも16~17cmが混ざっています。ですが、やっぱりまだ時期が早くて釣果が上がっていない人もいます。昨日(解禁日)に雨で水位が30cm上がって、流れてくる落ち葉で釣りがしづらかったのもあるでしょう」とのこと。
そんな状況で取材をお願いしていたのが、日高川のほとりで生まれ育った龍神の手練れ、廣岡昭典さんだ。
ショートロッド+オモリで「入れる」&「止める」オトリ操作
5月3日、正午に廣岡さんと合流した。水位は平水に戻っているが、夕方から雨の予報なので短時間勝負となる。廣岡さんが入ったポイントは松阪食堂の目の前だ。深みでは時おりヒラを打つ群れアユが見え、午前中に先行者がサオをだしていたポイントだが、テンポよく掛けているようすは見られなかった。廣岡さんはどうねらうのか。
「解禁初期に意識しないといけないことは、野アユの追う範囲が狭いこと。それから、オトリの泳ぎが悪いことです」と廣岡さん。それに対応することが釣果を伸ばすうえで絶対必要で、具体的には「ピンポイントでオトリを安定して止めておく」ことだという。
それを踏まえたうえでこの日の廣岡さんのタックルを教えてもらった。
がま鮎競技スペシャルV8胴抜早瀬75を選ぶ理由
サオは今年新しくなった「がま鮎競技スペシャルV8胴抜早瀬75」。7.5mのショートモデルだ。
「早期解禁の今の時期だと、野アユが追う範囲は50cmもないのでは? というイメージで、その範囲で掛けられるようにピンポイントでオトリを止めておくことが必要になります。そういった狭い範囲を丁寧に探るためにショートロッドが有利です。
短いということは感度もいい。この時期の小さなオトリは、底に入れにくいですよね。入ったと思っても中層の流れの緩みでオトリが馴染んでしまい、それに気づかずに操作してしまっていることもよくあるんです。それはサオ先をちょっと上げたときの感触が軽いといった違和感で判断できるので、やはり感度も重要です。付属のS3ソリッドトップと組み合わせれば、穂先にかかる負荷の感覚でよりわかりやすいです」
オモリで流心のオトリを安定させる考え方
そして、オトリを安定させるためにオモリも欠かせないという。
「この時期は群れアユを泳がせでねらう方も多いですが、オトリの泳ぎも鈍いので思うように掛からないことも多いと思います。それなら流心にいる追い気のある野アユをねらっていくほうが結果は出やすい。追う範囲は狭いですが、やる気のある野アユのポジションは盛期と同じです。
そんなポイントにオトリを入れて、狭いナワバリに止めておかなければなりません。そのためにオモリを打ってオトリを沈めるとともに、イトに掛かる水の抵抗を相殺することでオトリを安定させます。また、野アユに追われたオトリがぶれてしまうと掛からないですから、オトリの自由を拘束するねらいもあります。
V8胴抜早瀬はがま鮎のラインナップに無かったショートの胴調子です。オモリの負荷を背負わせながら止めておけるので、オトリを拘束しつつ安定させるうえでも有利なんです」
水中イトは複合メタルの0.04号、ワンピースの中ハリス0.6号に、ハリは「快」6.5号4本イカリというセットアップだ。
ねらうポジションは盛期と同じ──実釣の展開
釣り場に立った廣岡さんは川幅が狭まる岩盤際の流心にオトリを通していく。岩盤の上には木の枝がオーバーハングしており、ショートロッドのメリットが活きるシチュエーションでもある。サオを寝かせた引き釣りだが、1回のストロークのなかでも要所でピタリとオトリを止める間を作りながらゆっくり引き上げていく。
反応が出たところではそのまま待つだけでなく、コースを微修正しながら何回か通すことも重要だという。
開始20分で良型がヒット、流心を通して野アユを追加
すると開始20分ごろ最初の野アユが掛かった。いきなり15~16cmクラスの良型で、引き抜きながら笑顔がもれた。
同じねらい方でポイントを変えながら野アユを追加していく。皆瀬橋下の幅が広くなっている流れのなかでもオトリを通すのはあくまで流心。10~12cmクラスも釣れてくる状況で、オモリをうまく使って循環を作る。口掛かりが多いが、背掛かりで水面から抜かれていく野アユも複数混じった。
2時間で8尾、時速4尾の釣果を支えたオトリ操作
ちなみに龍神の流れではV8胴抜早瀬で28cmまで抜いたことがあるそうだ。
14時までかけて温泉橋の下流までを探り終えると、いよいよ雨がパラついてきた。ここまでの釣果は8尾。1日の平均釣果15尾、外せばオデコも、という状況で時速4尾はさすがの釣果であった。廣岡さんの釣りは全国の川でも応用が利くはずだ。ぜひピンチの際に思い出してほしい。
※このページは『つり人 2026年7月号』に掲載した記事を再編集したものです。

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