年々注目度が高くなっている北海道のアユ釣り。今夏こそ挑戦しようと思っている人に、シーズン後半に有望な大型アユが狙える4河川をガイド。例年8月いっぱいは楽しめる!
年々注目度が高くなっている北海道のアユ釣り。今夏こそ挑戦しようと思っている人に、シーズン後半に有望な大型アユが狙える4河川をガイド。例年8月いっぱいは楽しめる!
Photo & Text by Ryo Kobayashi(North Angler’s)
North Angler’sとは?:北海道での釣りを満喫するための情報誌。北海道の自然を体感するキャンプの情報や、フィールドを守るための環境問題にも光を当て、多角的な視点からアウトドアライフを提案している。誌面と連動したウェブサイト『つり人オンライン』での記事展開に加え、好評放送中の『ノースアングラーズTV』や公式動画チャンネルである『釣り人チャンネル』を通じても、北海道の釣りの魅力を発信している。
大型が狙える北海道のアユ釣り場
北海道でアユ釣りができる期間は、内水面漁業調整規則で7月1日~9月15日と定められている。9月に入ると婚姻色の入った魚が増え、追いも弱くなり、エキサイティングな釣りを楽しめるのはおおむね8月末まで。残暑が厳しかったり大きな出水がない年は、アユの落ちる時期が少し遅れるものの、それでも9月1週目くらいが納竿のタイミングになる。いずれにしてもシーズンは約2ヵ月と短い。5~6月に開幕し、10~11月に終了する本州に比べると釣期は半分以下。まさにあっという間に終わってしまう。
この記事掲載時点でも、今シーズンは半分ほど経過。「アユ釣りも面白そうだけど、今年も始められないかな……」と思っている人もいるかもしれないが、まだ半分も残っていると考えたい。
後半戦は支流や上流域などアユの生息範囲が広く、何といっても釣れる魚が大きいのが最大の魅力。強い引きを味わえるほか、オトリの泳ぎがよいため太仕掛けでも全く問題ない。多少強引なオトリ操作も許容してくれるはず。
トラウトの名流としても知られる尻別川は8月に本格化する。盛夏にデビューするのにうってつけのフィールドだ。アユ釣りに入門したくても、「2ヵ月だけの釣りに大金をかけられない」という話はよく聞く。しかし、すべてハイエンドモデルでそろえたりしない限り、ソルトルアーや氷上釣りと大差はない。そもそも、氷上釣りやサケ釣りも好期は2~3ヵ月。また、近年はアユ釣り人口の高齢化に伴い、引退した釣り人の中古品がネットオークションに出ることも増えているようだ。初期費用はそれほどかからない。次から後半戦に注目すべき4河川を紹介したい。
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道央の登竜門【朱太川】
札幌市街から約2時間半とアクセスがよく、川から近い黒松町内にオトリ店がある。近年は天然魚の遡上量が多く、安定して数釣りできる状況が続いていて、道央圏におけるビギナーの登竜門になっている。
黒松内町は道内屈指の豪雪地帯。同川は日本海の寿都湾に注ぐ河川でありながら、源流や上流部は太平洋に近いという地理的特徴がある。夏は朝霧が発生しやすく、午前中は小雨がパラつく日も多く渇水になりにくい。また、保水力の高い北限のブナ林を縫うように流れる恩恵で水温が上がりにくく、雨後の急な増水も起こりにくい。
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なお、同地のブナ林に湧く清水は『水彩の森』という名でミネラルウオーターとして販売されている。水質のよさは折り紙つき。食味のよいアユが釣れるのは、この良質な水が豊富に流れ、アユのエサとなる石のアカの状態が常によいからだと推測される。
釣り場は川幅の広い下流部、市街地に近く魚影の多い中流部、良型が期待できる上流部、いずれも面白い。支流の黒松内川、熱郛川などでサオをだす人もいる。山深い上流部でもイヨシロオビアブがほとんどいないのがうれしい。
ただし人気河川ゆえ、「いかにも」という好ポイントは釣られていることが多い。素通りしてしまいそうなヘチのチャラ瀬で良型が連発する場合もある。また、サオ抜けのポイントを探して広範囲を歩くほうが数釣りしやすいが、混雑するお盆などは移動しにくく、サオが入ったであろう場所で釣るしかない。そんなとき、先行者と同じ釣り方をしても反応は得にくく、アプローチを変えるのが賢明。たとえば、引き釣りでさんざん探って反応がなくなった場所でも、泳がせでねらうと何尾か絞りだせたりする。同じ引き釣りでもオモリと背バリで反応はまた違ってくる。
朱太川のアユ釣り情報
・遊漁券:1日2,000円、年券12,000円
・オトリ店:ホンダ菅原商会 TEL:0136-72-3547
・管轄漁協:朱太川漁業協同組合 TEL:0136-72-3231
・備考:アユルアー禁止
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復活の古戦場【尻別川】
後志エリアのアユ河川で、昔から有名なのが尻別川。ダイワ主催『鮎マスターズ』全国決勝大会を始め、数々の大会が開催されてきた1級フィールドだ。同川は10~15年前、壊滅的といえるほどの不調に陥り、アユ釣りをする人の姿が一時消えた。それが、5~6年前から復調。近年は往年の活気が戻っている。
友釣りが成立しないほどアユが減り、資源回復に向けての動きが特段なかったのに復活したのは、天然魚が逞しかったからにほかならないだろう。こうした事例があると余市川、遊楽部川、太櫓川など、今は釣れなくなってしまったかつての名流のアユも、どこかで細々と命を紡いでいて、いつか復活するのではないかと希望が持てる。
かつて尻別川は漁協があったが、現在管轄漁協はなくアユルアーもOK。マスターズ決勝の舞台になるほどの規模と実績があるのに、無料でアユ釣りを楽しめるのは全国的にみても稀有なフィールドといえる。
シーズン開幕は遅めで、早くても7月中旬。おおむね8月に入ってからが本番。ほかの川が釣れ始める頃になってもアユの姿を確認できず、「今年はダメなのか?」と気をもむが、いつの間にかあちこちにいるというパターンが多い。
道南に比べると道央の川は初夏でも水温が低め。おそらく6~7月は比較的水温の高い下流部にいて、上昇したタイミングで中流部や支流に遡上するのではないだろうか。ポイントは蘭越町の豊国橋上下、湯山別橋周辺、支流の昆布川や目名川など。入る場所に迷ったら、激戦区とはいえ豊国橋周辺が無難。
なかでも橋の下流左岸、通称「ランラン公園前」がおすすめ。サオは9mクラス、水中イトは複合メタルのポピュラーなタックルを用意し、広い瀬をテンポよく探るのが王道だ。とはいえ、渋いときはヘチ、橋の下、バイカモ周りなどサオ抜けしやすいピンスポットを拾い釣りするのも有効な戦略。近隣にオトリ店はなく、黒松内町で入手するのが確実だが、ルアーを使って確保するのもよい。
尻別川アユ釣り情報
・備考:管轄漁協なし、無料
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豪快に楽しめる清流【後志利別川】
檜山エリア屈指の大河。檜山の川なのに後志と頭に付くのは、かつての地方制定である後志国に瀬棚界隈も含まれていたため。今金町、長万部町、島牧村という3町の境界辺りに端を発し、渡島半島を横断するように流れる。
同川は釣り番組のロケ、釣り具メーカー主催の大会が行なわれたこともあり、長ザオによる豪快な瀬釣りを満喫できるのが魅力。アユ釣りのキャリアを積むと、激流で知られる福井県の九頭竜川、熊本県の球磨川、岐阜県の長良川といった道外の釣り場にも遠征したくなる。そのための修練を積む場としてもピッタリだ。

ポイントは花石、中里、住吉、稲穂、田代の中~上流部に各所ある。ただし、石のある場所とない場所がはっきりしていて、どこにでも魚がいる感じではない。また、8月以降は渇水になる年が少なくない。「利別は水が詰まると追いが渋い」と話すベテランもいて、そんな状況では少しでも水量の多い中流部に入るとよいかもしれない。
流れのキツい瀬の1級スポットには、惚れ惚れするような背っぱり体形のアユがいる。ビギナーも臆せず挑戦したいが、大河に立ち込む際は細心の注意が必要。ウエーダーではなく水抜けのよいタイツ着用が必須。浮力材入りのアユベストやネックタイプのライフジャケットも併用したい。
連日釣行で川にオトリを活けておく場合、夜間にダム放水があるとオトリ缶が流されてしまう。支流に活けたり、引き舟を使いたい。なお、イヨシロオビアブはあまり見ないが、上流部はヒグマの気配が濃厚。複数人での釣行が望ましい。
後志利別川のアユ釣り情報
・遊漁券:1日2,000円、年券8,000円
・管轄漁協:瀬棚郡内水面漁業協同組合 TEL:0137-82-0032(永豊商店内)
・備考:遊漁券は佐久間旅館(今金町字今金100)、永豊商店(同178)で購入可能。周辺にオトリ店なし。漁協が管轄する河川は1.馬場川、2.後志利別川本支流、3.太櫓川・二俣川・濁川。1~3で遊漁券は異なる。アユルアー禁止
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ポイント豊富で魚影多し【天の川】
道南の人気河川。よい石が全域にあり、中規模ながら釣り場のキャパシティーは見た目より大きい。水が綺麗で魚の食味もよく、道央から遠征する人も多い。
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ポイントは下流部の中須田、中流部の小森や早瀬、上流部の宮越や湯ノ岱、支流の上の沢川など。ただし、中下流部は海風が強い日が多く、上流部や上の沢川は8月になるとイヨシロオビアブが大発生し、一帯はヒグマの気配も濃厚で要注意。とはいえ、アブの猛攻に耐えてサオをだすと、入れ掛かりになることもある。お盆を過ぎるとアブはしだいに減る。8月中旬以降の釣行がおすすめ。
鏡のようなトロ場では、野アユがオトリを追って掛かる一部始終を目視でき、上達を早めてくれる。強風下の下流部、川幅の狭い上流部、いずれも6~7mの短ザオが必需品。上流部は峡谷を流れる場所もあり、強雨後は水位が高くなりやすい。廃線となった江差線鉄橋の欄干に流木が挟まっているのがその証。アカの状態が悪いときは雨後に状況が好転しやすい。水が引くタイミングの見極めが難しいがチャンスだろう。管轄漁協はないが、地元の有志団体である『天ノ川鮎愛好会組合』が会員費を募っている。
天の川のアユ釣り情報
・会員費:1日券2,000円、年券8,000円
・オトリ店: 天ノ川鮎愛好会組合(上ノ国町上の沢川近く)
・備考:管轄漁協なし、オトリ1尾600円、アユルアー禁止を要請
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