コンパクトながらも本格仕様で人気のロッド、パックスタイル。あなたならこのロッドを使ってどんな場所でどんな魚をねらう? この連載ではパックスタイルを使って楽しめる釣行の一握りを紹介! 今回はハスを求めて琵琶湖流入河川を巡った自転車釣行
文◎黒神樹
写真◎大﨑俊典
黒神 樹プロフィール:1999年生まれ、明石市在住。釣り好きが高じてがまかつに入社、商品開発課にて釣具の企画開発に携わる。イワナ釣りと釣り旅が特に好きで1尾との出会いを大切にすべく各地を巡っている。
目次
ハス(ケタバス)とは?
一部の酔狂な人たちを中心に、ここ数年人気がじわじわと出てきているのが日本固有の淡水魚であるハス(別名:ケタバス)。琵琶湖やその流入河川のほか、淀川水系と福井県の一部にもともと生息していたコイ科の魚である。なお、福井県の個体群は絶滅したと言われている。ただ、実は関東、中国、九州地方には琵琶湖産アユの放流に混じってハスが移入している河川もあり、各地で楽しめるターゲットでもあるのだ。
ハスはフィッシュイーターでありながら、歯をもっていない。その代わりに特徴的な「への字」のような形状をした硬い口を持っていてこの口で魚を挟むように食らいつく。歯が無いのにどうやって魚を食べていくかと進化していった結果がこの口であり、かっこいい顔となったのだろう。釣れた際はぜひともそのカッコイイ顔を眺めてほしい。ハスは体色も特徴的で、特に6~8月初旬にかけて見られる婚姻色バリバリの30cmを超えるような雄個体は悦に浸れるほど美しい。

ハスは積極的にルアーを追うゲームフィッシュ
ハスは専門でねらってみるとルアーのターゲットとして申し分ないことが分かるはず。なぜなら完全なるフィッシュイーターであるため、トップウォータープラグにも背ビレを出しながら果敢にアタックしてくるからだ。まるで青物のようなアグレッシブな釣りが楽しめてしまう。しかも、口が硬くなかなかハリ掛かりしないのでついついムキになってしまう。掛かったら今度はよく走るし、ジャンプも何回も繰り返す。ライトタックルでねらうと小型青物より楽しい好敵手かもしれない。
ただし、あんなに厳つい顔つきでアグレッシブな魚ではあるが、酸欠や手の熱に非常に弱く、すぐに弱ってしまう。陸にずり上げて写真を撮ろうものなら確実に死んでしまう。食べるつもりがないのならランディングする際はネットを使い、写真を撮る時も水の中からなるべく出さないようにするなど釣れた魚への配慮を心掛けてほしい。リリース前提ならハリもバーブレスフックを使うか、バーブを潰して使用するといいだろう。
実は食べてもおいしいのでリリースに失敗してしまった時には持ち帰って食べてみるとよい。軽く骨切りをして塩焼きにするのがおすすめだ。

ハス釣りのタックルとルアー
6~7月の琵琶湖ではハスは主に小アユをベイトとしているので、河川の近くの浜か流入河川が釣りやすい。浜なら小アユのベイトボールや鳥を探すと比較的高確率でハスに出会えるだろう。河川であればハスは群れで遡上しているので群れを探すのが手っ取り早い。浜と河川、どちらがねらいめかというと河川にいる個体のほうがキレイなうえに釣りやすいのでおすすめである。
5cm前後の小型ミノー、スプーン、トップウォータープラグを使うのでタックルはULクラスでOK。リールは2500番のスピニングリールでPE0.4号を巻いてある。リーダーはフロロカーボンの6ポンド。
フィッシュイーターらしく積極的にルアーをチェイスしてくるが、ゆっくりとしたアクションだと見切られてしまうことが多いため、渓流用のミノーなどを用いた高速連続トゥイッチなど積極的にロッドアクションを掛けるのが有効。スプーンならただ巻きでも、トゥイッチでも釣れるので初心者にもおすすめ。なお、スプーンは細身のものが使いやすい。
私の最推しはトップウォータープラグ。5cmクラスのペンシルやポッパーでリズミカルに誘っていると背後から猛追してきて繰り出す派手なバイトはハス釣りの醍醐味だと思っている。ただ、なかなか乗らない(笑)。
ルアーの種類にこだわらなければ釣りやすく、琵琶湖ということもあり景観もいいので家族連れやカップルでも誘いやすい。水もきれいなのでウエットスタイルで川に浸かり、水遊びの延長として楽しもう。

ハスの群れを目視で探してポイントを選ぶ
6月中旬のこの日は琵琶湖流入河川に足を運んだ。例年ならば小アユとともに相当数が遡上している時期なのだが両種ともポツリポツリと見受けられる程度。代わりに一足先に遡上するはずのニゴロブナ、ニゴイが多かった。そんな季節の遅れを感じながら釣行がスタート。
河川でのハス釣りではまずハスの群れを探すことから始まる。ここで見つからなければ諦めて浜に移動となる今日はどちらにせよ癒しの釣りというよりも厳しい釣りのようだ。ハスの遡上量が例年の今時期と比較すると少なかったが、どうしても婚姻色の出ているハスをねらいたかったため河川での釣りを諦めずに複数箇所をチェックすることに。こんなこともあろうかと車に積んできた折り畳み自転車を使って足早に探っていく。なお、琵琶湖の流入河川の河口には“やな”が設置されていることがあり、その周囲は禁漁区となっているので事前に確認し、周辺は避けて釣りをしたい。
この日用意したのはA4サイズに分解できるのが特徴のパックスタイルA4 54UL(ラグゼ)。畳んでコンパクトにすれば機動力が抜群で使い勝手がよいのはもちろん、付属のセミハードケースに入れておけば今回のように折りたたみ自転車を車に積んでいてもロッドの収納場所に困ることもなく、破損リスクもかなり抑えられる。

反応が悪いときはルアーローテも必要
いくつかポイントを見て回っているとハスが溜まっている場所を発見。エントリーしてみたが、どうも反応が渋い。ルアーになかなか興味を持ってくれないようだ。あれやこれやと試していると早巻きとトゥイッチを組み合わせたアクションで、スプーンとペンシルベイトにはチェイスがある。渋い状況下にも関わらずペンシルに反応してくれるのはうれしいものだが、バイトはあれども乗らない。ただただ乗らない。
それでもルアーを変えながら根気よくアクションを掛け続けているとスプーンにバイト! 魚の重みを感じてからアワセを入れ、ようやくフッキング。ドラグを引き出す小気味よい引きを楽しんだ。
いつもなら時速4~5尾ペースで釣れ、2、3時間で満足してしまうのだがこの日は3時間やって5尾を釣るのがやっと。それでもイカした顔と出会うことができて一安心だ。やはりハスはかっこいい。
最後にこの釣りの裏ターゲットをねらうことに。タックルはそのままでスプーンを沈めて、ボトムパンプ。するとナイスサイズのニゴイがヒット。重量感のある引きだが54ULでも物怖じすることなくロッドをしっかり曲げ込んでファイト、そしてランディング。ウエットスタイルで夏も涼しく楽しめるハス釣りをパックスタイルで楽しんでみてはいかがだろうか。


※このページは『つり人 2023年9月号』を再編集したものです。