渓流の解禁初期は、雪道や凍結した路面を車で走ることも多い。安心・安全なドライブをするための注意事項や道具をご紹介。
安全装備、快適釣行。けっして無理はしないこと
レポート◎モリヒサシ
こちらの記事は月刊『つり人』2020年4月号に掲載したものをオンライン版として公開しています。
渓流の解禁初期は、雪道や凍結した路面を車で走ることも多い。安心・安全なドライブをするための注意事項や道具をご紹介。
モリヒサシ
2輪、4輪を問わずオフロードのドライブを好む。砂漠のラリーから、ロシアの泥沼ラリーまでなんでもこなす。特にロシアのオフ・ラフロードに関しては、すべての季節での経験あり。
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オフロードで安心なSUV
早春の渓流釣りでは山に雪が残っている場所も多く、北側の日陰道、山奥の林道では積雪箇所や凍結路面がたくさんある。ドライブするのに油断できない場所も多くあるだろう。そうした場所では、走破性の高い4WDのSUVで行くことができればベターだ。
早春の渓流釣りには雪がつきもの
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時代はまさに、空前のSUVブーム。街中には軽四輪から大型車と大小さまざま、形状もハッチバックからミニバンまで多種多様なSUVが走り回っている。アウトドアブームに押されSUVは人気である。SUVは、通常の車両に比べて最低地上高(ロードクリアランス)が高めだ。アウトドアや雪道でも走破性が高いといわれ、その多くが駆動力に優れた4WD車である。そのため、釣りファンにも人気になっている。
もちろん、SUVといっても4WDではない車両もたくさん存在しているし、FFやFR、RRもまれにある。「そもそも、4WDって何?」と思う人もいるだろう。ちょっと難しく言うと、4つの車輪が等速協調して駆動し走行するクルマということだと、大先輩から教わったことがある。
セダンタイプも含めて、そうした4WD車のほとんどが、今でいうフルタイム4WD車である。
フルタイム4WD車の定義は、大まかにはドライバーの切り替えや選択操作なしに4輪駆動となっている車のことをいう。フルタイム4WDの多くは、タイヤと路面の接地状況をセンサーで検知し、エンジンの出力をセンターデフを介して、最適な駆動力に配分する。さまざまな電子デバイスや電子制御によって、今ではとても緻密な制御が行なわれ、悪条件の路面での駆動力と走行安定性が実現されるようになった。
急な操作は基本的にNG
スタッドレスタイヤの進化も著しい。凍結路面、雪道で圧倒的なグリップを発揮するもの、高速道路での走行に特化したもの、フルシーズン走行できるものもある。ちなみに、雪国では圧倒的な人気を誇るB社のスタッドレスはグリップ力に優れ経年変化が少ないともっぱらの人気である。
4WD車にスタッドレスを履けば、ウインタースポーツに、そして間もなく始まる渓流シーズンに出かけるにはもってこいの移動手段になる。
万全の装備であってもやはり重要なのは、冬の路面、積雪、凍結など、どのシーンでも細心の注意を払って運転すること。加速、減速、ハンドル操作、どれをとっても急な操作は危険につながる。言い古されたことだけど、これに尽きる。
春の渓流釣りでは、雪道走行を強いられることも多い。無理はしないように
そして、普段より速度を抑えてほしい。滑りやすい路面は当たり前だが、ちょっとした氷や凸凹を乗り越えるには歩行速度程度に速度を抑えて走破してほしい。どんなに優れたサスペンションやタイヤをつけていても、ゆっくりと走り車体への衝撃を抑えるのが上手いドライバーだ。
林道にある水溜まりも同様に、できれば歩行速度で通り抜けたい。水は速度に比例して車両の抵抗にもなるし、あらゆる隙間に入り込む。水を吸い込めば、最悪エンジンがダメージを受けることもある。
クルマによってはさまざまな走行モードが選択できるものもあるが、速度を制御して悪いことはない。オートマチックでもシフトダウンでエンジンブレーキが使えることも覚えておいてほしい。
「危ない?」と思ったら降りてみる
交通量の多い幹線道路は、除雪や凍結防止剤の散布等々が行なわれている。そのため深夜、早朝でもなければ、そう簡単にスリップやスタックなどすることはあまりない。だが一般道路から渓谷へ、川原へとポイントに近づく際には、凍った路面や、深い轍、水溜まりにはまってしまうことがある。狭い道では路肩も、積雪や凍結時には要注意である。
そんな場所にさしかかったら、細心の注意でクルマを進めることは当然。少しでも不安だったり、路面状況やその先の状態に疑問をもったりしたら、まずクルマから降りること。道路を歩いて確かめてほしい。路面の状態や傾斜、轍の深さを、直接目で、足で確認してみるとよい。
気になる場所を下見するくらい、たいした時間のロスにはならない。もしスタックや脱輪をしたら、その何倍も時間をロスするし、不幸にもクルマを傷める可能性だってある。
これは凍っていない場所や、季節が変わっても同じこと。乗り慣れたクルマであっても、乗車人数や荷物の量で車体の状態が変わる。そうしたことを考慮しながら、不安な場所は歩いて下見する。これが悪路やオフ、ラフロードにクルマで入り込む時の鉄則なのである。
常に細心であれ。雪道、凍結路、オフロード、ラフロード、クルマで走る時はいつもそうであってほしい。そして、できれば複数台での行動が望ましい。思わぬ事故が起きた時、単独ではなくもう一台そこにクルマがあったら、状況はずいぶんと変わるはずだ。
スタックレスキューや牽引は、危険を伴うので常日頃、その作業や動作を予習しておくことも重要だ。
さらに、意外に多くの人が知らないのが、自分の車の牽引ポイント。最近の車は牽引フックをバンパーのカバーを外してねじ込むタイプが多い。この場所と操作の確認も、事前に知っておきたい。
釣りのポイントを調べるのと同じように、ポイントまでの道の状況を知ることも釣行には重要な要素である。そしてそれは、最終的に釣果にもつながることなのだ。
雪道ドライブで活躍する道具たち
装備は慎重に選ぶこと。行く先が決まれば、その地域の情報を集めておくのは釣りと同様。降雪や積雪の可能性があれば、スタッドレスタイヤを履いておくべきだ。さらにチェーンを用意しておけば、いうことはない。
夏タイヤにチェーンで冬を乗り切るのなら、使用目的、走行パターンなどを考慮する。たとえばタイヤネットなどもよい選択だが、スタッドレス装備のうえのチェーンであれば、緊急脱出用と考えてシンプルなものでも構わない。実はタイヤチェーンは雪だけでなく、舗装されていない場所、泥道でのスタックなどの脱出にも有用なのである。持っておくとよい装備のひとつである。
さて、この時期の渓流に向かう際に、これだけは持って行ったほうがいいものを以下に紹介しよう。なおこれは、スタッドレスを履いているクルマでも、夏タイヤのクルマでも、ほぼ同じである。
これくらいあれば、スタックやトラブル時には結構心強い。釣行に出かける前に、これらを並べて、どんな時にどう使うか、シミュレーションしてみればなお心強いものたちばかりである。
くれぐれも、細心の運転を心がけ、楽しい、釣行を。
タイヤチェーン
スタックした際に使いたいので、あまり高価なものでなくてもよい。もちろん、長い距離を走行したり、ずっと使いたい場合は、それなりのものを選ぶ
牽引用のロープ
そのクルマの牽引ポイントを確認したうえで、フックやシャックルのサイズを選ぶ。伸縮タイプのモノは品質を見極めることが必要
コンプレッサー
タイヤの空気圧調整に使う。スタック時にエアを抜いたら、できるだけ早く標準値に戻したい。充電式バッテリーを使用するコンパクトなものが便利である
最近はスペアタイヤを積む代わりに、パンク修理の道具が入っているクルマも多い。その場合、このようなコンプレッサーが備えてあることも
ライト
できれば大小を揃える。作業には大きなものを用い、細部の点検には小さなものがあると便利。スタックしたらクルマの下を覗いて、車体と地面が接触してないかは、昼でも暗い場所を見ることがあるのでこれも必携
エアゲージ
タイヤの空気圧をコントロールするために必携
折りたたみ式万能ツール
車載工具がほとんど装備されていない時代だから、最低でも緩める、切る、穴を開けるために使えそうなものがほしい
テープ類布製粘着テープとビニールテープがあるとよい。布製粘着テープはさまざまに使える。たとえば、ボディーをヒットして外れかかったパーツを車体に固定したり、ウインドウが割れた時の応急的な処置にも有用。ビニールテープは、ちょっとしたものを固定や縛る際に便利。傷テープの代わりに使うこともできる
タイラップ(結束バンド)サイズ違いを数本ずつ持つとよい。これも、意外に使える。たとえば馴れないタイヤチェーンを履いた時、余分なコマの固定とかにも重宝する。もちろん、取れかけたボディーパーツの固定にも便利。車体外装には樹脂製パーツが多いので、割れたり外れたりしたら、穴を開けてタイラップで固定という手もある
ブースターケーブル
エンジンを切った後にもエアコンを付けっぱなしにしていると、バッテリーがあがってしまうことも。ケーブルがあれば、そのような事態でもエンジンはかけられる。もっとも、ほかにクルマもいないような山奥では無理だが……
シートと軍手なんらかの作業が必要な時は、悪路であることが多い。このようなシートと軍手があると汚れずにすむ
スノーブラシ、アイススクレーパー
フロントガラスにこびり付いた雪や氷を取るための道具。早朝に出発したい釣り人には便利なグッズ
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