ミノーの使い方はアングラーそれぞれに正解がある。しかし、ポテンシャルを100%引き出すには、その根底にあるコンセプトを知っておいたほうがいいはずなのだ。そこで、今期注目の渓流ミノーについて、各メーカーの開発者にそのコンセプトとおすすめの使い方をインタビュー。
エデンシリーズの開発コンセプトに迫る
開発者=石塚恒、まとめ◎編集部(鱒の森)
『鱒の森 2022年4月号』の特集は「この渓流ミノーが凄い」。今号の特集記事の中からイチオシ記事を特別公開!
通うフィールド、タックルバランス、そしてもちろん好きな釣り方によって、ミノーの使い方はアングラーそれぞれに正解がある。しかし、ポテンシャルを100%引き出すには、その根底にあるコンセプトを知っておいたほうがいいはずなのだ。そこで、今期注目の渓流ミノーについて、各メーカーの開発者にそのコンセプトとおすすめの使い方をインタビュー。新シーズンに向けたスタメン構成の参考にぜひどうぞ。
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目次
シリーズ:注目渓流ミノーの使用法を開発者に訊く!
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エデンシリーズの開発コンセプトに迫る
●エデン 45S/45SS/60S/ 60 H (メジャークラフト)
「主力は50mmでも、川に立てば『もっと軽いもの』『ひと口サイズのもの』とほしいミノーが出てくる。釣り場で必要なモデルをつくれば、おのずとこのラインナップになると思う」
開発者=石塚恒
EDEN EDN-45S / EDN-45SS
Major Craft
上)エデン45S。重量3.7gのシミーフォールを得意とするシンキングタイプ。ややリア重心で小型ながら飛距離も充分。下)エデン45SS。ローウオーターの状況で活躍する小粒で適度に軽いスローシンキングタイプ。重さは3g。
現場で釣りをする中で感じた「こんなミノーがあればいいのに」といういちアングラーとしての願望が、石塚さんが手がけるミノー開発のベースになっている。
―― そもそも「誰にでも使いやすく、しかも釣れる」ことがエデンシリーズ開発時のメインコンセプトにあったとのことですが、「誰にでも使いやすいミノー」とは具体的にどのような性能を持つミノーとお考えでしょうか?
「簡単に言うと『思いどおりに動かせる』ことです。渓流ミノーイングの楽しさの1つはトゥイッチによるルアー操作だと思います。釣り人は自分の入力したロッドアクションに即応し、流れの中でしっかり動いていると実感できるミノーを選ぶものですし、さらに1人1人が、それぞれ思い思いのロッド操作を行ないます。ロッドアクションが強い人、弱い人もいれば、ロッドを立てる人、寝かす、あるいは下げる人、激しい人、ラインスラックを出す人……など、それら多種多様なロッドアクションにトラブルなく即応する基本性能を高めたミノーが、『誰にでも使いやすいミノー』と考えます。
そのうえで、癖がなくよく動き、イトがらみなどが少ないもの。つまり誰にでも使いやすい操作性を備え、なおかつルアーとしての基本性能が高いミノーをエデンシリーズでは目指しました」
こちらはボディー金型作成用の電極。職人により手彫りされた45mmと60mmのエデン。何度も試作と実釣を繰り返し細部を詰めた。
―― それらの性能を実現するために、開発時に特に苦心したことは何でしょうか。
「ミノーがよく動いている状態とは、ミノーがバランスを崩し、そして浮き上がっている状態とも言えます。そのため、『動きすぎるミノー』もよくないと考えました。動きすぎるミノーは浮き上がりが速く、ラインを拾いやすい欠点があるからです。これは使い手を選ぶうえ、予期せぬ時にミノーが絡まり、千載一遇のチャンスを逃すことにもつながります。
そしてまた、動きすぎて浮き上がりが速くなると、流れの中で浮き上がらずに動き続けることが難しくなります。ここがとても重要なところで、そのためエデンシリーズではただ操作性がいいだけではなく、そのバランス設定によって流れに対して浮き上がりにくい性質を与え、流れに食い込むことで『食い波』に入っている時間を長くするように工夫しました。
魚がバイトしやすいレンジを常にキープできることが釣れるミノーだと思いますので、エデンシリーズでは『よく動き、浮き上がりにくい』という、この2つの矛盾した性能のバランスを取ることにチャレンジし、そして成功できたと考えています」
石塚さんが操るエデンにヒットした美しいヤマメ。
―― 開発当初から、水平姿勢のシミーフォールと急速沈下の尻下がりフォールの2タイプを同時進行で設計した理由を教えてください。
「鱒は基本的に上流から流れてくるエサを待っています。しかし、ルアーで水面付近まで魚を引き出すことは至難の業です。一般的に魚のバイトしやすいレンジに合わせたほうがよく釣れるわけですが、とはいえ『レンジ』とひと口に言っても、各ポイントの深さや流速、流れの厚さ、魚の活性やスレ具合等々によってベストなものは変化します。そうした千差万別の状況に対応し、ベストなレンジをねらえるように、チェイスさせる釣りに使いやすいシミーフォールと、ディープレンジに張り付いた魚、特に良型を直撃できるリアフォールの2つのタイプをつくりました」
2つのダウンサイズモデル45Sと45SS
―― 新たにダウンサイズモデルの45mmを開発することになった経緯と、なかでも45Sのおすすめの使い方を教えてください。
「一般的に50mmを多用する釣り人が多いと思いますが、それだけに頼っていると釣りをしていて使いづらさを感じる状況があるはずです。具体的には、アベレージサイズが小さい時、魚の反応が悪い時、釣り場の規模が小さい時などですが、45mmはそうした場面でキャストしたくなるサイズで、なかでも45Sは小渓流で活躍するミノーになっています。トレースできる距離が短かいポイントでは、50mmクラスよりもやはりこのサイズが使いやすいですよね。
直アップで小刻みに連続のヒラ打ちをさせてもいいですし、アップクロスでチェイスを見ながら、移動距離の短かいヒラ打ちでバイトに持ち込むといった、手数の多いルアーアクションを打ち込める点が強みだと感じています。比較的アベレージサイズが小さいアマゴにも有効です」
―― 今回、スローシンキングタイプの45SSもラインナップされています。このタイプを同時に開発したのはなぜでしょう?
「エデンのシンキングタイプではカバーできていなかった、低水位の状況で使いやすいスローシンキングタイプの必要性を感じたからです。ちなみに、当初は50mm同様の45mmヘビーモデルの開発も考えていたんですが、そちらについてはあえてボリュームを、つまりアピール力を落としてディープの魚を釣るイメージが湧かず、結局かたちにできないままとなっています。もう少し使い込んでモノにしたいところです」
―― シンキングの45S に比べて、45SSでより小さなリップを採用している理由を教えて下さい。
「サイズごとのボディー形状は一緒ですが、各モデルごとにウエイトと重心が違います。そのためリップサイズや位置、角度を共通にするとルアーの性能面であきらめる部分が多くなるんです。そういうルアーはつくりたくなかったので、各サイズとモデルごとにオリジナルリップの金型を準備しました。そのため、ただ重さが違うだけのミノーとは異なり、それぞれが独立した個性のあるミノーとしてできあがっています」
同じ45mmでもそれぞれにオリジナルの個性があり、リップのデザインも当然違う。左が45SSのスモールリップで、右が45Sのコンパクトリップ。
――45SS のおすすめの使い時、そして石塚さんなりの使い方は?
「45SSの最大の魅力は『流れの中での浮遊感』です。エサを待っている鱒にミノーをナチュラルに流れに同調させ、じっくり見せてバイトに持ち込む釣りに特化したバランスになっていて、なかでも盛期の源流域や巻き返しに付いた鱒が釣りやすいと感じています。
それと、浮力を活かしたバランスの45SSはその運動神経のよさも特徴です。クイックにレスポンスしてくれるので、『静と動』を意識したサイトフィッシングが面白いですね。速い釣りでなかなか食わせ切れなかった鱒を45SSでフォローして釣る、いわゆる最後の一手の『食わせミノー』としても重宝しています」
後編「サイズアップで難所難敵を攻略する60Sと60H」に続く……。
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