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神保町ブルース

神保町ブルース

つり人編集部=写真と文

世間はお盆休みに突入。
編集部は何ら変わりなく出社。
世間が浮き足立つお盆休みに働くことに
すっかり慣れてしまった。
むしろ、都内は空いていて快適だ。
しかし、宿酔なのか、胃がムカムカする。

昨夜は久しぶりに飲みに行った。
昔は週に2、3回と神保町で飲んだもんだが、
今では月に1回行くかどうか。
「どこの店に行く?」
いちおう、口には出してみるが、
我々の予算で入れる店は数軒しかない。
昨夜も、神保町で最も安いSへ行った。

とにかく安い。
魚肉ソーセージ50円、
塩辛100円
ぶりかま塩焼き380円……

数年前までは、この安さがウケて毎晩満員御礼だったが、
昨夜は空いていた。
やはり、景気は着実に上向いているのか。
なんだか取り残されたような気がして軽くブルー。

そういえば、数年前に
隣席のお客が残していった肴を失敬しようとしたら
「アンタ、なにやってる! ダメよ、アンタ、それ」
とウエイトレスのお姉さんにこっぴどく叱られたんだっけ。

遠く離れた席から学生たちの嬌声が聞こえてくる。
僕たちのテーブルは最初の1杯目から空気が淀んでいた。
「でも、安いっていうのはうれしいねえ」
相槌を打ちながらも、皆、箸を休めることはない。
50円の魚肉ソーセージが、こんなに旨いなんて。
子どものころ、よくこれでウグイを釣ったよな。
食べ物をエサにするなんて、随分と贅沢な暮らしをしていたもんだ。
などと感慨にふけっていると、
「あれっ? この枝豆、なんかヘンだぞ」
「やっぱり、カビだよな。オレもさっきから思ってたんだ」
「まあゴルゴンゾーラだってカビ食ってるようなもんだし、大丈夫だろ」
「ワッハッハッハ」
みんなが笑った。
僕も笑った。
笑いながら、なぜだか涙が込み上げてきそうになった。
僕はこれ以上ないくらいフニャフニャしたイカの塩辛を口に入れ、
熱く込み上げてくるものを塩辛とともに飲み干した。
 

2006/8/12

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